クレジットカード利用伝票の解説 - ④応用編
はじめに
クレジットカード利用伝票(以下レシート)を徹底解説するシリーズ第4弾です。
このシリーズを初めて読まれる方は、①問題提起、②レシートのレイアウト、③基本編の順で内容キャッチアップいただけると幸いです。以下リンクよりアクセス可能なので、お時間ある方は是非!
本記事では、レシート上に表記されている印字項目をさらに深掘っていこうと思います。後半に進むにつれて、かなりマニアックな内容になっているのでご容赦ください (´・‿・`)
クレジットカード利用伝票の印字項目 - 応用編
今回取り上げるのは以下8項目です。「据置型」の決済端末によっては、そもそも印字されない項目があります。皆さんも是非お持ちのレシートと照らし合わせてみてください。
9. カード番号*(Card Interface)
レシートにはカード番号とセットで、カードの支払媒体も表記されています。
以前紹介したキャッシュレス決済サービスの全体図でも支払媒体について触れました。以下をご参考ください。
対面取引の場合、カードの支払媒体は「MS」「IC」「CL」のいずれかになります。
>MS(Magnetic Stripe):磁気(スライド式)
端末本体にカードをスライドして決済したことを表します。
割賦販売法という法律が「決済端末のIC化100%」および「発行カードのIC化100%」を義務化したこともあり、磁気カードはかなり珍しくなりました。
ICチップがないカードの場合は、端末が磁気ストライプを読み込むことで決済が完了します。
>IC(Integrated Circuit):接触IC(読み込み式)
端末本体にカードを差し込んで決済したことを表します。支払媒体の代表格と言えるでしょう。
仮にICチップ付きのカードを磁気で決済しようとしたらどうなるかご存知でしょうか。
セキュリティの観点から、カードを受け付けた端末は取引を中断し、接触ICでの決済を誘導する仕様になっています。
>CL(Contactless):非接触IC(タッチ式)
端末本体にカードをかざして決済したことを表します。
「Visaのタッチ決済」のCMをテレビやYouTubeで見たことがある方は多いのではないでしょうか。
タッチ決済対応を示すEMVマークが付いているカードが対象であり、コロナ禍を機に普及が期待されています。
その一方で、個人的に危惧している阻害要因が大きく2つあるので簡単に紹介したいと思います。詳細については別機会にて取り上げる予定です!
①支払媒体名称の乱立
「非接触IC」「タッチ決済」「コンタクトレス決済」「EMVCL」「NFC」「NFC Pay」「NFCペイメント」
これらは全て同じ支払媒体を指しています。なんてこった (´・‿・`)
米国では「Contactless Payment」として名称が統一されているのに対し、日本では名称の乱立化が目立ち始めているように感じます。
②消費者のマネーリテラシーが追いつかない
端末本体のカード読取部分にEMVマークがあれば、非接触ICによる決済ができると思われがちですが、取り扱いできないケースも当然ございます。
お店の入口付近の扉やレジ周辺に貼ってあるステッカーを確認した上で、店員に申し出るマネーリテラシーが我々消費者に求められているのが今の現状です、、
10. 伝票番号(Slip Number)
端末で処理した伝票の通番です。
我々消費者がカードの利用明細とレシートを照合する際は、伝票番号を意識する必要はありません。ですが、1度購入した商品を取消/返品する際は、伝票番号は欠かせません。
通常お店のレジ担当は、我々が提示するレシートに表記された伝票番号とクレジットカード情報をもとに、取消/返品処理を行っているからです。
余談ですが、取消/返品時のレシートには「取消伝票番号」あるいは「元伝票番号」という印字項目が追加で表記されます。これは、取消/返品対象となる元レシートの伝票番号と同じ番号です。
11. 承認番号(Approval Code)
カード発行会社が通知する承認の通番です。
少し言い換えると、カード取引が承認されたことを示すために、カード発行会社が発行する番号です。承認番号が発行されるまでの一般的な流れは以下の通りです。
本人認証には「オンライン承認」と「オフライン承認」の2種類あるのはご存知でしたでしょうか。
>オンライン承認:端末本体→カード発行会社に取引の信用照会をして本人認証する仕組み
>オフライン承認:決済端末がICチップから読み取れる情報だけで本人認証する仕組み
暗証番号4桁の入力による接触IC取引や、非接触IC取引が「オフライン承認」の代表例です。
「オフライン承認」では承認番号は発行されず、レシート上には「000000」あるいは表記自体が省略されます。
一方の「オンライン承認」では承認番号が発行され、レシート上に表示されます。
12. 支払区分(Payment Type)
カードの支払方法です。前回記事用に作成した図解を再掲します。
カードの支払方法により「一括」「ボーナス」「分割」「リボ」がレシートには表記されます。
13. 取扱区分(Payment Condition)
取引内容と支払区分をコード化したものです。例えば「一括払いの売上」だった場合、レシート上には「110」と表記されます。
14. 商品区分(Commercial Code)
購入した商品・サービス区分をコード化したものです。
加盟店契約会社はこのコードを使い、我々消費者がどの加盟店で何を購入しているかを特定しています。カードの不正利用防止およびカード会員の信用リスクを管理するために活用されています。
商品区分コードの一覧は以下リンクより確認可能です。
15. AID(Application Identifier)
カードに埋め込まれたICチップの識別子です。
ICチップの識別子なので、磁気取引では当然レシートには表記されません。AIDは国際ブランドによって異なり、レシートの最下部にあります。
オーストラリアに本社を置く外資系ペイメント企業のEFTLabがAIDの一覧を公開しています。
16. APL(Application Label)
国際ブランドや支払方式を示すラベルです。
国際ブランドのVisaが発行するカードを例にした場合、「VISACREDIT」「VISADEBIT」「Visa Prepaid」のいずれかがレシートに表記されます。
MastercardとAmerican Expressが発行するカードでは、支払方式のみ表記が省略されます。
最後に
以上、レシート上に表記されている印字項目の応用情報を解説してみました。
基本情報と合わせると、計16もの取引情報をレシートより確認することができます!
次回公開予定のシリーズ第5弾では、レシートの近未来の姿を予想してみたいと思います。