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2025シーズン ホークスDH戦線と若手野手

1月4日、西スポWEB内にて小久保監督は来季の補強方針として、DH専任となるような外国人野手の補強を否定し、今季同様、柳田らベテラン野手の休養ポジションとすることを示唆した。
このDHをベテラン野手の休養ポジションとし、DH専任となるような野手補強を避ける動きはMLBではここ数年のトレンドである。
大谷翔平のMLB移籍に伴う、エンゼルスの編成がその最たる例だろう。DH専任となることから、それまでDHのレギュラーだったベテランのプホルスの一塁守備機会が増えたり、勤続疲労の懸念もあった野球星人トラウトに休養の機会を与えることができなくなるなど、チーム編成に多大な影響を与えたことは記憶に新しい。

NPBでは以前よりDHは外国人野手のポジション、衰えてきたベテラン野手のポジションの意味合いが強く、ホークスもその例に漏れず、長らく助っ人野手のレギュラーポジションとして活用してきた。

在籍期間の多くをDHで出場したデスパイネ

昨季もオフシーズンにDHレギュラーとしてウォーカーをトレードで獲得し、開幕スタメンとして起用したが結果を残せず、その後は山川、柳田、近藤の休養ポジション、吉田、石塚ら若手の起用ポジションとして活用した。
結果的に失敗とはなったが、ウォーカーを獲得する方針自体は間違っていなかったと筆者は考えており、ここ数年怪我などで活躍できていなかったリリーフ2枚(高橋礼・泉圭輔)で獲得できる選手としては一番手ではなかったであろうか。

2024シーズンDH起用数

ただこの失敗が、結果としてベテラン野手の休養ポジションとして機能するという棚ボタ的効果をもたらした。
特に筋肉系のトラブルを抱えている柳田や、昨季終盤に足の故障を抱えた近藤を安全かつ、打撃に専念させることができたのは大きかった。

またホークスの両コーナーと両翼は主力である中堅〜ベテランが鎮座しておきながら、球界屈指のファームシステムによって有望株が渋滞しており、出場機会を与えないと持ち前の育成システムの運用に支障を来たしてしまう、他球団への流出リスクが上がるというジレンマを抱えていた。
過度な期待は危険だが、NPBへの適応が未知数な助っ人外国人にレギュラーポジションを与えるのではなく、自前で見てきた有望株たちの方が計算が立ちやすいのは事実であろう。

同ポジション被りの煽りを受ける形で移籍してしまった吉田

過去のDH起用状況

実際に過去のパリーグのチームではDHをどのように活用してきたのか、
過去20年の各球団の先発DH最多出場者と、そのシーズンにおける出場試合数におけるDH先発出場割合をまとめました。(データはプロ野球 ヌルデータ置き場様より引用)

過去20年のDH起用数
※複数シーズンでトップ起用だった選手、100試合出場、出場機会の70%以上がDH先発だったものを太字

ホークスでは2017シーズンから2022シーズンまでデスパイネを多く起用しており、それ以前も李大浩、ペーニャらスラッガータイプの助っ人に機会を与えていた。
また来季のような、ベテラン野手のポジションとしては、足の故障を抱えていた長谷川や、2000年代後半の松中が当てはまる。
ここ2シーズンはDHレギュラーとして期待されていた外国人野手の 不振によって柳田、山川、近藤に多く機会が与えられており、DHのあり方、助っ人野手の獲得方針に対する転換点となる可能性がある。
事実昨季もウォーカーが不振だったものの、夏場に補強したのは二遊間を守ることができ、年暦的にも若いジーター・ダウンズであり、それまでのホークスの獲得方針とは異なる選手だった。
このスタンスが上手く機能すれば、従来の1塁しか守れない野手ではなく、外国人特有の身体能力を活かした"守備でも貢献できる外国人助っ人"というジャンルの開拓にも貢献するのではないだろうか。


守備でも安定していたダウンズ

誰がスタメンの座を射止めるのか

そして問題となるのはDHではなく、DHに回った柳田、近藤、山川の代わりに誰が起用されるのか?という点である。
誌面では柳町、正木、笹川らの名前が上がっていた。
ここでは彼らに加え、石塚、廣瀬、井上、リチャード、川村を加え、それぞれのストロングを見ていこうと思う。

吉田との競争に勝利した石塚

石塚綜一郎(23) C, 1B, LF 
Ave.194 1HR RBI2 OPS.624 wRC+114

昨季念願の支配下登録を勝ち取った石塚。ファームでは圧倒的な成績を残しており、支配下候補に上がっていたが今夏に満を辞して登録。楽天戦ではプロ初アーチを放つなど従来の長打力を発揮する一方で、コンタクトには苦しみ打率は.194に終わった。しかし特出すべきはその出塁能力で打率1割台に対し、出塁率は.333を記録。(これは異常な当たり体質が関係しているのだが…)
ただ打球指標に優れていることから球団からの期待も大きく、石塚の目処が立ったことが吉田の放出に繋がったのではないかと考える。
問題は石塚がどこを守るのか。登録上は捕手だが、2020シーズン以降捕手としての出場はなく、ファームではレフトが中心。ただ守備はお世辞にも上手とは言えず、平均以下のUZRを記録している。
石塚には圧倒的打撃成績を残すか、守備で平均レベルまで向上させることが望まれる。

プロ発HRを放った石塚

産みの苦しみを味わった廣瀬

廣瀬隆太(22) 1B, 2B, 3B 
Ave.233 2HR RBI9 OPS.609 wRC+84

慶應のメジャーリーガーと呼ばれ、大学有数のスラッガーとして入団した廣瀬。5月28日に昇格して17打数連続ノーヒットと苦しむも、6月4日に初ヒットを記録。最終的な打率は.233だったものの、初ヒット以降は.279と確かな成長を見せた。また廣瀬の非凡なところは打撃だけではなく、UT性の高さだ。1軍では2Bと1Bを守り、平均程度の守備力を見せていたが、ファームではさらに3B守備にも挑戦。いずれもUZRで+を稼いでおり、まさにレギュラーの負担を減らすには打ってつけである。(そもそも三森が放出されたので、2Bレギュラーを狙って欲しいが)
この3Bを守れるというオプションは大きく、筆者は常々、栗原もDH起用して欲しいと考えている。栗原は昨季守備でも大きく貢献し、攻守ともに代えの効かない選手ではあるが、2021シーズンに膝前十字靭帯断裂という大怪我をしており、来季は29歳のシーズンとケアも必要な年齢になってくる。
そこで3Bを平均以上に守れ、かつ打撃でも貢献できる可能性の高い廣瀬には期待している。

初ヒット以降は攻守に存在感を示した廣瀬

覚醒待たれる井上

井上朋也(21)1 B, 3B 
Ave.000 0HR RBI0 OPS.000 wRC+ -0.2

2023シーズンに大器の片鱗を見せた井上だったが昨季は苦しんだ。OP戦で積極的に起用されるも結果を残すことができず、唯一昇格を果たした5試合では10打席で5三振、空振り率も5割を超えるなどコンタクト面に課題を残した。ただしファームでは打率.288をマーク、打球関連の指標も成長の一途を辿っている。また3B守備でも平均以上の守備を記録しており、残りは1軍で結果を残すのみとなってる。
3B栗原の壁は高いが、上述の廣瀬とともにハイレベルな争いを繰り広げてほしい。

ドラ1の真価が問われる井上

背水の陣で望むリチャード

砂川リチャード(24)3B, 1B 
Ave.226 0HR RBI1 OPS.595 wRC+73

2軍の帝王と化しつつあるリチャード。ファームでは圧巻の5年連続ホームラン王のタイトルを獲得するなど例年期待値は高いものの、いまいち殻を破り切ることができないでいる。原因は明確で三振の多さ。ファームでさえ2021シーズンから29.9%と高く、以降も30%を超える三振率を記録し、まさに三振かホームランの分かりやすい打撃スタイル。またファームではストレートをカモにしているが、一軍ではマイナスを記録するなど、一定基準を超えたストレートを仕留めきれないでいる。一方で3B守備はUZR9.4と高い水準で守れており、実はこちらの評価が高いまであり、コンタクトさえ開眼すればとんでもない3Bが誕生する可能性がある。
ロマンも課題も大きい博打型の選手だが、ただ他球団からの評価は高く、本人も出場機会を求めて他球団への移籍を希望している。いつまで球団と本人が我慢することができるのか。

実は守備型…?

小久保チルドレンの筆頭格正木

正木智也(24)RF, LF, 1B 
Ave.270 7HR RBI29 OPS.739 wRC+129

2023シーズンは1軍打率.038と大きく苦しむも、今季は対左にとどまらず、シーズン通して活躍。RF守備も安定しており、小久保チルドレンの筆頭格となった。また1Bのオプションも披露することでただの両翼選手に収まらない点も良かった。
課題は明確で打球関連の指標を向上させることと、選球眼。特に昨季は打席に占める四球の割合が3.9%と低く、ボール球スイング率も35%程度と苦しみ、特に落ちる球への対応に苦労した。
幸いなことにレギュラー外野手は左打ち、ライバルとなる柳町、川村も左のため、右打者という点も大きなストロングになるだろう。

飛躍のシーズンとなった正木

ファームでも腐らず結果を残し続けた柳町

柳町達(26)RF, LF, CF 
Ave.269 4HR RBI40 OPS.735 wRC+120

2022シーズンから多くの出番を得ていた柳町だが、周囲からの評価は決して高くはなかった。両翼向きの外野手にも関わらず、アヘ単要素が強く、俊足タイプでもない、かつチーム内に渋滞しがちな左打者ということで一時はトレード要員に名が上がるなどその立場は安定していなかった。
2024シーズンも開幕2軍で迎えると、一時打率4割を超えるハイアベレージをマーク。格の違いを見せつけるものの、一軍事情から呼ばれることはなく、ここでも他球団の方が結果を残せる、柳町のためにもトレードするべきとの話が再燃。しかし交流戦前に初昇格を果たすと、交流戦でも打率.359を記録し、課題であった長打力でもキャリアハイの4HRを放ち、1軍の立場を確固たるものとした。
成績向上の原因は2つ。
1つはストレート対応の改善。過去2年間のストレートPitch Valueがマイナスだったが、今季は12.7と大幅なプラスに。
もう一つは積極的にフライを上げたこと。打球性質の推移を確認すると、フライの割合が26.3%(2022)→30.0%(2023)→43.4%(2024)と推移しており、フライを上げる取り組みが長打力向上に繋がった可能性がある。
一方で過去10〜15%で推移していた四球率が5.9%に低下したことで出塁率が大きく低下。似たタイプのライバルが多いため、いかに長打と出塁の両立を果たすかがキーになるだろう。

打撃スタイルの変更に成功した柳町

プロスペクトに成長した笹川吉康

笹川吉康(21)RF, LF, CF 
Ave.286 1HR RBI2 OPS.714 wRC+147

身体能力重視だったことが有望株としての評価を難しくしていた笹川だったが、2024シーズンはその疑念を払拭させた。ファームでは三振率を大きく改善させつつ、長打率も向上。最多打点のタイトルも獲得した。1軍ではビーズリーからプロ初HRを放ち、荒削り感は否めないが、一気にレギュラー候補に名乗りを上げた。
課題は守備と選球眼。特に外野守備は3ポジション全てでマイナスを記録。最も起用されたのはCFだったが、-7.0と大幅なマイナスをマークしており、柳田の後釜を担うためには守備力の改善は必須だろう。

ポテンシャルの高さは随一

代走守備固め要員では終われない川村

川村友斗(24)CF, RF, LF 
Ave.268 1HR RBI14 OPS.726 wRC+125

センセーショナルなOP戦を見せた2023シーズンは支配下登録されなかったが、2024シーズンは開幕前に緒方、仲田とともに支配下枠を勝ち取った。BABIPの神に愛され、脅威の4割。流石に出来過ぎ感は拭えないが、周東離脱時はリードオフマンとして活躍、その後はまた控えに回るなど、打順がポジションで固定されている弊害を最も受けた選手。
ストレート系に決して負けておらず、むしろチェンジアップなどオフスピードの対応に苦しんでおり、追い込まれるまでのアプローチが課題となる。
また川村の特出すべき点はCFを安定して守れる点であり、これは前述の笹川、正木、柳町には無い武器になる。走塁でもプラスを稼いでおり、実は総合力が最も高い。川村に関しては安定して出番を得ることができるのか、これは首脳陣の考え方次第だが…

もっと出番が欲しい

まとめのようなもの

直近のDH事情、ホークスの抱える若手野手の顔ぶれを鑑みるとDHを休養ポジションとする方向は理にかなっていると言え、筆者も概ね賛同している。来季は柳田がDHの1番手となるだろうが、その柳田も37歳のシーズンを迎える。ホークス若手野手陣には代替要員にとどまらず、レギュラーの奪取、新たなホークス陣容の展開に期待したい。

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