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為替介入の成否を分けるのはコスパである(その2)

真偽のほどは分かりませんが、先週、日銀が2日連続で5〜6兆円規模の為替介入を実施したようです。
7月11日の夜に実施した為替介入の規模は3兆円を超えたとされており、12日は2兆円を超える規模と推測されています。

昨日のトランプ氏の発言で155円台に突入しましたね。このまま9月まで逃げ切れるか……まさに今が正念場です。

前回に続き為替介入について書いてみます。

(2)為替介入の規模と効果


さて、前回説明したように、為替介入は米国の政策金利引き下げまでの時間稼ぎです。

まず、為替介入の方法について説明しましょう。
日銀が行う為替介入は2種類です。

一つは円高が進行している際に、円売り・米ドル買いをして為替レートを円安に誘導するものです(為替レートを上げる)。これは、近年実施されていません。1990年代、リーマンショック後に実施されました。

もう一つは、円安が進行している際に、米ドル売り・円買いをして為替レートを円高に誘導するものです(為替レートを下げる)。こちらが、今回対象の為替介入です。

日銀がどのように実施しているかを把握するために、過去の為替介入について見てみましょう。

図表2は、過去2年間の為替介入の実施時期・規模と為替レートを示したものです。

【図表2:為替介入の実施時期・規模と為替レート】

※上図は日中高値を表示しています

2024年3月はマイナス金利解除に伴う円高進行なので、他とは少し事情が異なります。また、米国の雇用統計、FRBの発言などで為替レートが変動している箇所があります。これは日銀の為替介入とは関係がないため、今回は対象外とします。

まず、2022年9月~10月に9兆円規模の米ドル売り・円買いの為替介入が実施されました。これは為替レート150円/米ドル以下に下げることを狙った為替介入でした。
日銀の為替介入の実施後、米国の金利引き下げ予想などにより円高が進行しました。そして、再び為替レートが150円/米ドルを超えたのが2023年10月です。
為替介入だけが円安を抑制したわけではないものの、結果的に、為替介入の効果は約1年間継続しました。

次の為替介入は日銀がゴールデンウイークに4月29日、5月1日の2度にわたって実施したものです。為替介入の規模は約9.8兆円でした。
これは、為替レートが160円/米ドル以下に下げることを狙った為替介入でした。次に為替レートが160円/米ドルを超えたのは2024年6月下旬です。
為替介入の効果は約2カ月でした。

つまり、2022年9月の為替介入は1年間有効だったのに、2024年5月の為替介入は2カ月しか有効ではありません(図表3)。

【図表3:為替介入の有効期間】

※上図は日中高値を表示しています

別の言い方をすれば、2022年9月~10月の為替介入は月7,500億円で1年間円安を食い止めることができました。2024年4月~5月の為替介入は月4.5兆円で2カ月間円安を食い止めました。
2022年9月~10月の為替介入の方が、コスパがいいですね。

為替介入の効果は有効な時期に実施するかどうかによって、持続期間が違います。
日銀の保有する外貨建て資産には限りがありますから、為替介入はコスパを重視して実施する必要があるのです。

さて、2024年7月に実施した為替介入は今のところ2回です。1回目は3兆円規模、2回目は2兆円規模と予想されています。
ただ、為替レートの下がり方は小さく、円高誘導は前2回よりも小さいので効果が十分かは分かりません。

今回の為替介入の効果がいつまで持続するか?

FRBの利下げ予想の9月まで為替介入の効果が持続すれば、日銀の目的は達成されたといえるでしょう。

本記事はここまでです。
どうなるか、注目ですね。

<その1はこちら>

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為替取引についてもっと知りたい人は以下を参考にしてください。


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