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なぜホテルの価値は変動しやすいのか(その1)

これはホテルの宿泊費の話ではありません。ホテル(土地・建物)の物件価格の話です。


2024年上半期(2024年1月~6月)の国際収支統計(速報値)では第一次所得収支の黒字が19兆1,969億円と過去最大値を更新しました。

貿易収支とサービス収支は赤字です。これは、製造業の海外移転も進んでいるため日本で製造するよりも投資活動で稼ぐ仕組みが構築されているためです。
貿易赤字・サービス収支の赤字幅はインバウンド需要による旅行収支の黒字が縮小したような形になっています。
日本は円安で旅行需要は旺盛です。観光業は絶好調ですね。

一方、米国では旅行需要の減速が目立ってきています。
ヒルトンなどの米系ホテル大手の決算では2024年通期業績予想を引下げており、旅行需要の減速が目立ち始めました。
米国ではパンデミック後の旅行需要は好調でした。しかし、パンデミックにおいて貯蓄したお金が急激に消費・旅行に回り、そろそろ貯蓄を使い果たした感があります。
これが、旅行需要の減速予想に繋がっているようです。
米国は決して不況ではありません。ただ、過剰な消費を控えるようになったため、旅行需要が減っています。

日本では高級ホテルの建設が進んでいます。今回はホテル投資について解説します。

1.ホテルのキャップレートはなぜ高いのか?


ホテルは不動産投資における代表的な資産です。ただ、ホテルのキャップレート(物件利回り)は伝統的な不動産(オフィスビル、レジデンス)と比べて高いのが特徴です。

今は円安によりインバウンドが好調です。しかし、新型コロナウィルスによる渡航制限、外出制限によって、世界経済は大きな影響を受けました。大手のヒルトンは米国の景気停滞懸念から既に収益が落ちているそうです。

2024年8月、株価指数も大きく下落しました。J-REITの価格も下落したものの、為替変動の影響はなく、金利の上げ幅も限定的なので下落率は他の銘柄に比べると小さいです。
不動産価格は株式市場ほど変動しないことが特徴と言えるでしょう。

景気変動に少し遅れて現物の不動産価格に反映されます。賃料の下落や不動産利回りが上昇すれば価格が下落していく可能性があります。
ただ、全ての不動産が同じように下がるかというと、不動産のタイプ(オフィスビル、レジデンス、商業施設、ホテルなど)によって、差があります。
コロナ禍を例にすると、J-REITの投資口価格のうちホテルや商業施設の値下がりが大きく、レジデンスや物流施設の値下がりは比較的緩やかでした。

ホテルや商業施設は他の不動産タイプよりも価格変動しやすく、これがキャップレートに反映されます。

ハイリスク=キャップレートが高い

つまり、ホテルは価格変動リスクが高いのでキャップレートは他の不動産タイプよりも高いのです。


次回はホテルの特徴について解説します。

<その2に続く>


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【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


【図解 不動産ファイナンスのしくみ】

 

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