見出し画像

なぜホテルの物件価値は変動しやすいのか(その2)

これはホテルの宿泊費の話ではありません。ホテル(土地・建物)の物件価格の話です。


2.ホテル投資の特徴


ホテルは事業用資産(オペレーショナル・アセット)と言われます。事業用に使われる資産なので、運営管理にあたり特別な専門性が求められます。
運営者の能力次第で収益が大きく変動する資産なので、素人には運営が難しい不動産と言えるでしょう。
 
ホテルに投資する場合、①自社で運営するか、②他社に運営を委託するか、③運営会社に賃貸するかの3種類です。
 
まず、①は投資家自身がホテルの運営会社の場合です。アパホテルや東横インがホテルを保有する場合を想像してください。自社で運営できますね。
投資家、投資ファンドはホテル運営が主業務ではないため、このケースはありません。
自社で運営する場合、ホテルの売上はお客さんの宿泊によって発生します。時期によって変動が大きいのが特徴です。収益は安定せず、所有者は事業リスクがあります。
 
次に、②はマネジメントコントラクト(MC方式)ともいいます。ホテルの運営会社に運営を委託し、所有者は売上を受取ります。物件所有者の収益(売上)は賃料ではなく、ホテルの宿泊費です。
所有者が受取るのは賃料ではないため、宿泊客への売上によって収益は変動します。ホテルを賃貸しているわけではないため、①と同様に所有者は事業リスクを有します。
 
最後の③賃貸借方式は、所有者にとって一番楽な方法です。
運営会社が賃料を支払ってくれるため、収益は①、②よりも安定します。
ただ、ホテル運営会社としては②マネジメントコントラクト(MC方式)の方が事業リスクを負わなくていいので、なかなか賃貸借方式で受けてくれません。
不動産ファンドが事業用物件(ホテル)に投資する場合、一般的には運営会社(オペレータ)に賃貸します。テナント(借り手)数は1社です。
受取賃料の安定性はオペレータの信用力に依存します。また、変動賃料を併用することが多いため、賃料がホテルの売上に影響を受けます。賃貸借方式であっても、事業リスクが全くないわけではありません。
 
ホテルは立地によって集客が大きく異なります。ビジネスホテルの場合は地方都市の駅前立地です。小規模オフィスビルがあるエリアに似ています。
ホテル投資のメリット・デメリットは以下のようになります。
 

ホテル投資のメリット

 
・オフィスビルやレジデンスよりも物件利回りが高い
・景気・季節によって賃料が増える場合がある(変動賃料の場合)
・候補となる地域が広い
 

ホテル投資のデメリット


・事業リスクを抱える(自社運営、MC方式の場合)
・売上の季節変動が大きい(自社運営、MC方式の場合)
・賃貸借方式でも賃料が下がる場合がある(変動賃料の場合)

次回は、賃貸借方式でホテルを賃貸している場合について説明します。

<その3に続く>

<その1はこちら>


***

不動産ファイナンスについて詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にしてください。

【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


【図解 不動産ファイナンスのしくみ】

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?