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リース会計基準の改正の影響が大きいのはサブリース業者

「リースに関する会計基準」が2027年4月1日以降開始する事業年度(2028年3月期)から適用されることが決定しました。
今回の改正のメインはオペレーティング・リースの借手の会計処理が売買処理に変更される点です。
※オペレーティング・リースの貸手の会計処理は賃貸借処理のままです。

現行のリース会計基準と新リース会計基準を比較したのが図表1です。

【図表1:リースの借手の会計処理の比較】

リース会計基準の改正で最も影響を受けるのはサブリース業者でしょう。
サブリース業者とは、たとえば、オーナーからマンションを借りて、それを入居者に貸し出す会社です。転貸ビジネスといえばいいかもしれません。
イメージは図表2のようなものです。

【図表2:サブリースのしくみ】

不動産賃貸借契約はオペレーティング・リースです。そして、現行のリース会計基準では、オペレーティング・リースの借手の会計処理は賃貸借処理です。
マンションを借りるとき、サブリース業者の会計処理はオンバランスせずに、支払賃料を費用として損益計算書に計上します。入居者からの受取賃料は収益として損益計算書に計上します。
つまり、サブリース業者の貸借対照表には何も計上されず(未収賃料・未払賃料を除く)、サブリース取引は損益計算書のみで完結します。

リース会計基準が改正されると、不動産賃貸借契約(オペレーティング・リース)の借手の会計処理は売買処理に変わります。
オーナーからのマンションを借りると、サブリース業者は未経過リース料の現在価値をリース負債として計上し、見合いとして使用権資産を計上します。

このイメージを示したのが図表3です。

【図表3:サブリース業者の貸借対照表の比較】

現行のリース会計基準では簿外(貸借対照表に計上されない=オフバランス)であったリース負債と使用権資産が、リース会計基準が改正されてオンバランスされると資産・負債が大幅に増加します。
特に不動産賃貸借契約の転貸するサブリース業者は影響が大きいでしょう。
図表3の場合、リース会計基準の改正によって資産・負債が3倍になります。

実際の数値を使った方が分かりやすいので、サブリース業者の東建コーポレーションをもとに解説しましょう。
図表4は東建コーポレーションの2024年4月期の有価証券報告書における総資産、オペレーティング・リースに係る未経過リース料、純資産、当期利益を使用して、リース会計基準の改正による影響を示したものです。

【図表4:東建コーポレーションのリース会計基準改正による影響】

東建コーポレーションの総資産2,100億円に対して、未経過リース料は2.8兆円です。
リース会計基準が改正されると貸借対照表に未経過リース料の現在価値が使用権資産・リース負債として計上されます。
つまり、新リース会計基準の適用によって総資産が2,100億円から約3兆円に増加します。

東建コーポレーションの純資産は1,200億円です。
現行のリース会計基準における純資産比率(自己資本比率=純資産÷総資産)は57.9%。とても財務状況が健全な会社に見えます。
しかし、リース会計基準が改正されると純資産比率は4%に低下します。
吹けば飛ぶような純資産しかないので、かなり脆弱な財務状況と言えるでしょう。

同様に、ROA(当期純利益÷総資産)は4.3%から0.3%に低下します。利益率の極めて低い会社といえるでしょう。

このように、現行のリース会計基準においては優良企業とされていた会社であっても、リース会計基準が改正されると過小資本の利益率の低い会社になるのです。
この傾向は、サブリース業者に顕著に現れます。

今回は、リース会計基準の改正の影響を解説しました。参考になれば幸いです。


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なお、新リース会計基準について詳しく知りたい人はこちらを参考にしてください。


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