ゲロを処理してゲロをした日。
明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします。本日から毎週土曜更新になりますので是非寝る前などに見ていただけたらと思っております!
地方歓楽街、駅から徒歩3分のラブホテルで清掃アルバイトをしている。新年に相応しく無い汚いタイトルで申し訳ない。
昨日はとんでもない日だった。
それは明け方、2度目の休憩を終えた頃だった。
朝の6:00、我々は外の掃き掃除に行く。暗くて暑苦しい館内から唯一出られる外掃除は休憩よりもリフレッシュ出来る貴重な時間なのである。
この日の出勤は70代パートの永井さん(仮名)と私だけ。2人で外に出て寒いねーなどと言いながらゴミが無いかを見回る。
嗚呼…このヒンヤリとした肌触りと排気ガスの香り。私は学生時代を思い出す様なこの朝の匂いが大好きだ、と、詩的な自分に酔いしれながら見回っていると足元に慣れない感触が伝った。
柔らかい。
コンクリートの床では無い、液状の感触だ。嫌な予感がしつつ足元に目をやり私は大声で叫んだ。
まるでゲロという名前の人の自己紹介のようになってしまったが私が踏んだのは吐きたてのゲロ山盛りだったのだ…。
「これじゃ水で流せないわね。タオルですくってとっちゃいましょ。」
そう言うと永井さんは大量のタオルを持ってきた。
「わあ、すごい量ね!」
今まで70歳がこんなに目を見開いているのを私は見たことがない、それくらい大量だったのだ…。
「ねぇこれ、もんじゃみたいじゃない?」
「…。」
永井さんの要らぬ一言で完全に戦意喪失した私は触らない様にタオルでゲロを包んでゴミ袋に押し込んだ。
「うぅっおえゔっ」
「あー、これやばいな、ゲロ増やしちゃう」
「ねぇ、これ焼きそば食べたんじゃない?」
2人は寒空の下、ただひたすらゲロをゴミ袋に移す作業を行ったのであった。
やっとの思いで綺麗にし我々が中に戻ると宿泊の部屋がたんまりとチェックアウトしていた為永井さんと二手に分かれ火消し点検に向かった。
私が点検に入った部屋は酒の匂いがキツく充満していた。
「ねぇこれ、もんじゃみたいじゃない?」
「ねぇ、これ焼きそば食べたんじゃない?」
…。
「げええええぇっ。」
永井さんの言葉を思い出し耐えきれず放出された私のゲロは従業員トイレに虚しく流れて行った。そして私は大粒の涙を流しながら初めて思った、
「辞めたい」と。
今回は外に吐かれていたから良かったものの飲み会シーズンになれば部屋の中でも構わず吐かれるようになる。
こんなことなら昨日パンを2つも食わなきゃ良かった。残り3時間、掃除に明け暮れる我々なのであった。