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教習所の帰り、あまりにも暑くてこれはアイスを食べる他ないと思った。

最近話題になっているハーゲンダッツのミルフィーユ味?を買って、こないだ茅ヶ崎で買ってきた紅茶味のワッフルと合わせて特別なおやつにしてやろうかしら。そんなことを企みながらいそいそとローソンに入った。
しかし件のダッツはなかった。代わりに「ヘブンリーキャラメル」だの「蜜芋タルト」だのこれまた魅力的な新フレーバーが見えており、しかも今朝焼き芋を冷凍してきたので、早速ではあるがそれを焼き直してこのセクシーなアイスたちをお芋の上で乱れさせるのもありをりはべりいまそかりなのでは。
それでいこう。ワッフルでなく芋の方向で。

と芋にシフトしたはいいが、ここで私の非常に悪い癖が出て、急に「行き当たりばったり的にハーゲンを買いたくないな、300円はでかいな」と冷静になってしまった。
ハーゲンは「ハーゲンを食うぞ」と意気込んで店に入るところから心して向き合いたい食べ物だ。というか焼き芋に載せてしまうのはちょっともったいない気がしたというか、今日はとにかくこの蜜芋ハーゲン様たちを活かしきる自信がなんかなかった。

そこでハーゲンから一旦離れ、「芋に合うアイス」という方向で品定めを始めた。目に付いたのは「ただのマスカルポーネアイス」150~160円。「かじるバターアイス」の赤城乳業というのもあり信頼性がある。これにしようかと手に取りかけたところで、近くにあった「生クリーム専門店milk監修 ミルクアイスバー」を発見。ホワイトチョコでコーティングされたミルクアイスの中に練乳が入っているという。185円。パッケージが水色と白のストライプでかわいい。かねてより気になっていた専門店監修というのも、「ミルクアイス」という響きも相まって1番心を引かれた。おまけに「ウチカフェ」の表記がある。ということはLINEクーポンで20円引きくらいになるのではないか。
これにしよう。

いざレジへ出して意気揚々と「クーポンお願いします」とLINEのバーコードを差し出すと、読み取れなかった。どうやらウチカフェ表記はあるがクーポン対象ではなかったようだ。まぎらわしいな。しかしアイスのスペックだけで充分魅力的な商品なので、私はご機嫌を損ねることなく真夏日の空の下帰宅した。


家に着いて台所に入るや否やグリルを予熱し、今朝冷凍庫に入れて寝かせたばかりの焼き芋を「起きろォ」と引っ張り出してアルミに包んで灼熱の中へぶち込んだ。
その間暴れ狂っている腹の虫を、甘いものの投入に備えて昨日の夕飯の残りおかずで宥める。ハンバーグ、冷めててもうまい。本当はちゃんとあっためるべきだが今はそれどころではない。

まだかなまだかなとグリルを確認するが、焼き芋の中の方がなかなかあたたまらない。寝たばかりのところを叩き起されて訳が分からないと言った感じだ。しかしミルクアイス様はもう待ちくたびれておられる。このままでは完全に溶けてしまわれる。
ミルクアイス様のご機嫌を損ねないよう、一旦冷凍庫で待機していただくことにした。何をやってるんだよ、1度溶けかけたアイス様を再冷凍するなんてマナー違反だぞ。急げ。

叱咤激励しながら待つこと3~4分、やっと芋の中心部のひんやり感がなくなった。待ちわびた私はそいつらをすぐに皿にあげ、お待ちいただいていたミルクアイス様をお招きした。一刻も早くそのマリアージュに立ち会いたくて、半溶け状態のアイスを余すことなくあつあつの芋に乗せる。この時私はもはや野生に返っていた。着々と溶けていくミルクアイスでヒタヒタになった焼き芋をガツガツとほおばり、あっというまに完食してしまった。


うまかった。
うまかったのだが。
アイスの味が全然わからなかった。完全に「芋のためのバニラアイス」として胃に収めてしまった。なんてことだ。せっかく生クリーム専門店milkが監修して構造を考えて作られた練乳入りのスペシャルなミルクアイスを、その意匠を企業努力を噛み締めることなく夢中で平らげてしまった。なんてことだ。

おまけに、愕然としながらせめて可愛いパッケージデザインは目に焼き付けておこうと裏面まで眺めていたら、そのエネルギーは259kcal、脂質は18.5gもあった。恐れ入った。アイス1本でそんなに…。
ちなみにこれと天秤にかけていた赤城乳業の「ただのマスカルポーネアイス」は確か171kcal、脂質は6.5gだった。しまった、栄養成分も併せてトータルで考えたらあっちにしておくべきだったか…。
ミルクアイスに関してはデザインの可愛さ等他の情報に気を取られて栄養成分まで確認していなかった。今は別にダイエットをしてる訳では無いが、それでも不必要に脂肪分をとりたくないという気持ちはある。どうしても食べたいものなら何キロカロリーあろうと構わないが、事故的に摂取してしまうのはちょっといただけない。

とどめがパッケージ下に書いてある「大変溶けやすくなっております」の注意書きだ。ここまで見ていれば帰宅時間や「温かいものに乗せる」というシチュエーションに対する合理性(熱いものに乗せるのを前提にするなら常温だと溶けるのに時間がかかりそうなアイスにしたほうが合理的だ)を鑑みて、もう少し吟味できたはずだ。

全面的にもったいないことをしてしまった。やはり「あったかいものにアイスをのせる」というお祭りを前にして、人は冷静さをかいてしまうのだ。


せめて礼を欠いてしまったミルクアイスへの仁義を通すために、今度もう一本買おうかな。


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