光の虚人 2/2 (短編小説)
休日。よく晴れた日で、気温も穏やかな日。
こんな日はピクニックに行こうと、子供を連れてちょっと遠い所の公園までやってきた。
11時~12時ころまでは息子と軽くキャッチボール。妻は敷いたシートの上で気持ちよさそうに寝ていた。
2人の息子は一言でいうとワンパクそのもの。いつも元気いっぱいの彼らは私を疲れさせることもあるが、周りに活力を与えてくれる自慢の息子だ。大分速いボールを投げられるようになってきた。
私自身も疲れて小休憩。妻が用意した昼食を食べる事にした。
サンドイッチ、唐揚げ、卵焼き・・・ありきたりなものだが、こんな日に外で食べるランチは格別なものだった。デザートにはドーナツがある・・・私は甘い物は苦手であるので、妻と息子に譲った。
下の子がそのドーナツの食事中、茂みに何かあると急に立ち上がり、奥へと入ってしまった。「食事を終えてからにしなさい」という、妻の注意も聞かず、上の子もつられてしまったようで走って茂みに入った。
やれやれと私は立ち上がる。妻も一緒に様子を見に行くと立ち上がる。
・・・随分と奥に行ってしまったようで見つからない。20分は探しただろうか。子供達の方が私たちを見つけ、結局何も無かったと報告。妻の説教が始まったので、私は黙って見ていた。
暫くしてランチをしていたシートに戻ってみると、何やらシートから黒い点線が見える・・・妻がきゃあと軽く絶叫。
アリだ。そういえば食べかけのドーナツがあったので、それを嗅ぎつけたのだろう。
上の子はドーナツが大好きなのもあり、この野郎と茂みまで伸びている黒点線を踏みつけた・・・が、一回踏んだところで「やめなさい」と私が叱責した。
何故かと上の子が尋ねると私は答えた。
そのアリの立場で考えて見なさい、アリはその場にあった食べ物を運ぼうとしてるだけ。そこで急に踏みつけたりしたらアリにとっては理不尽だろう、と。
上の子は勝手に人のドーナツを取ろうとするのが悪いだの、下の子が急に離れてしまっただのグズりだしてしまったので、わかったわかった、ドーナツはまた買ってやるから、アリを踏みつけるような非道はもうしないと約束しなさい、と話をつけた。
・・・今日やったピクニックのハイライトはこんなものである。何も変哲のない、穏やかな日だった。
アリにとっては、急に起きた悪夢だったろうが・・・
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