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エクセス コンプライアンス リザルト 3-2章

 休憩時間中、私は今までの噺を整理していた。内容は、そこまで深く考えずとも問題ないような、当たり前と言えば当たり前の内容だった。過去は時間を遡れないと変える事が出来ず、仮に遡れたとて、当人は時間軸に沿った周知の事実を知ることになるので2つ以上の時間軸が無いと矛盾する。
 逆に未来は時間軸に乗っていないため、1つの事実に絞り出すことは不可能・・・だからこそ予想や予定が生まれーーー

「失礼します」 

 思索にふけっていると、突然か細い声が聞こえてきた。少女?と言えるくらい幼い女性だ。

「お疲れではないでしょうか?博士はいつも噺が止まらなくなるから・・・」

「ああ、いえ、大丈夫ですよ。大丈夫っていうか非常に興味深い内容です。」

「不破さんも、こういう噺好きなんですね?」

「ん~・・・自覚した事はないですが、そうなのかもしれませんね。…ちなみに恐縮ですが、貴方は?」

「あ、申し遅れましたが、私も研究員の1人ですよ。初対面の人には博士の孫って勘違いされるけど、もう煙草も吸える年齢ですし。」

 私の電子煙草を指さして、笑みを浮かべながら楽しそうに話している。無論、私は驚いた。

成人とはとても思えないくらい幼いのだ。

「・・・勘違いされてもしょうがないのかもしれませんね、その御容姿ですと。」

「んー・・あんまり嬉しくはないんですよね~。若く見られる分には良いですけど、想像される年齢が若すぎるというか。」

「羨ましいですよ、私はどちらかというと老けて言われるのでーーー」

――何でもない、楽しい雑談の時間だった。幾分気持ちもリフレッシュ出来たようだ。

「あ、そろそろ時間なので・・・」

「あ、そうですね。それではいってらっしゃい!もうすぐモニター実務だと思いますよ。」

そう言ってお互い部屋を後にした。…言われて思い出したが、そういえば『モニター』とは何の事なんだろうか。今までの講義は概ね理解できたとしても、モニターというワードがどうやってもリンクしなかった。

「戻りました。」

「リフレッシュ出来ましたかな。」

「ええ、別部屋で研究員の方とお話しておりました。」

「ほう、誰ですかな?」
「…そういえば名前を聞いてませんでした。少女みたいに幼い容姿の方でしたが。」

「少女…?ふーむ?」

「よく、貴方の孫と間違えられると言ってましたが・・・」

「…成程。 そうか…もうそこまで影響がでとるか…」

「…?」

老人がやたら真剣な顔つきで考え込んでいる。その少女風の研究員に身に覚えがないのか、そうでないのかすらもよくわからない反応だった。

「ん、ああ、いやどうもすみません。ええと、多分余り顔を合わせない同僚なのでしょう。記憶があいまいで。」

 私は、これはすぐにウソだと気づいた。先ず、この施設に顔を忘れてしまう程の研究員数は居ないハズ…居てもせいぜい30数人くらいだろう。5階建てのビルと言ってもそこまで大きくないビルだ。
 もう1つは、あそこまで特徴がはっきりしている研究員の記憶があいまいという点もおかしい。さらに言えば、その少女風研究員は『博士の孫と勘違いされる』と言っていたわけだから、今目の前にいる老人と知り合いのはずである。
 …仕事以外でいろいろと事情があるかもしれない、わたしは適当な予想を立てておき、余計な詮索はしなかった。

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ミクモン
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