日本海側の冬気候「うらにし」がメンタル的にやっかい
3月に入ってもなお寒さが続く僕の住む京都丹後半島。細長い京都府の最北端にある半島は、日本海に突き出ているので年によってはめっちゃ雪も降ります。そんな日本海側に暮らし始めて、この時期によく使う言葉が「うらにし」。天候を表す言葉で、冬のどんよりした天気であったり、吹雪いたと思ったら突然晴れるような、激しい天候の時に地元民はこの言葉を使っています。
「うらにし」のメカニズムを簡単に説明すると、日本海には暖流という暖かい対馬海流が本州全体を覆うように流れています。日本海は、北から冷たいリマン海流も流れ込んでいますが、丹後はモロに対馬海流の海域。
暖かい海流の上空を冬になると大陸から寒気が流れ込んできます。海は暖かく蒸気を出しているけど、空は冷たいとなると、水蒸気が結露して必然的に雲がモクモクと生成されて、どんより天気が多くなるのが「うらにし」のメカニズムです。めっちゃ簡単に言うと。
これが、風向きや寒気の強さと重なって毎年豪雪地帯が出て、色々な被害をもたらしたりします。近年の丹後は、雪が降ったり降らなかったりですが、12月に入った頃からどんより気候の「うらにし」が始まります。この頃になると「うらにし始まりそうだね」とか「うらにしになる前に外仕事終わらしておこう」みたいな会話が聞こえてくる。
天気が悪くなるので、イベント事も減っていきます。寒さもありますが、雷を伴う激しい天候になる事も多々あるので、イベント主催側も「うらにし」の時期を避けたがりますよね。田舎で屋内施設も潤沢には無い為、必然的に家に籠もる時間が増える。
「天候がどんよりしていて気持ちが滅入るわ~」という感情的な影響もありますが、陽の光を浴びる機会が減ることで脳内をリラックスさせる物質「セロトニン」の生成も抑制されてしまう点も恐ろしいところ。晴れ間を見つけて意識的に陽の光を浴びにいく、天候が多少悪くても外に出る、という習慣が無いと身体は勝手にストレスを溜めていきます。
イベント事も無ければ、雪で外出も抑制されてしまうと、アウトドアを好む人や人との交流が好きな人からすると、ストレスを発散する場がありません。そんな「うらにし」は毎年冬になるとやってきて、3~4ヶ月ほど、どんよりとした天気で暮らす人々に影響を与えてきます。
この「うらにし」をベースに、仕事や人間関係など他のストレスが乗ってくると病む傾向が高くなる。一時期、丹後でも冬の時期に自ら命を絶ってしまう人が多かったのも、織物産業の衰退と「うらにし」が重なっていた時期でした。
僕自身も移住してから元気に暮らしていますが、「うらにし」が始まると運動する機会も減りがちになるので、最近は意識的に運動時間を確保するようにしています。農業的にはこの寒さや厳しい気候が野菜を美味しくもするので、一概に悪いと言いにくいのですが、メンタル的にはやっかいです。
冬の気候に流されて元気が無くなるのは、別にあなたが弱い人間だからじゃない。人間にはコントロールができない自然環境が、その原因を作っているだけで、大切なのは冬の過ごし方や楽しみを作ることなんですよね。嫌になれば温暖で天気の良い地域に行けばいい。
知らず知らずのうちに身体を蝕む「うらにし」との付き合い方を考えるのが、楽しく日本海側で過ごすコツ。我が家では、たいがい冬野菜てんこ盛りの美味しい鍋をつついたり、搾りたての日本酒と鰤しゃぶで宴会して、冬を満喫しています。太るけど。笑