冬があるから1年間頑張れる農家
1月に移住をしてきて働き出した冬は、農家にとっては閑散期。オフィスワークから農家に転身して刺激を受けながら楽しく過ごしつつも、仕事自体は落ち着いています。やる気満々で農家生活をスタートして何だか拍子抜けな感じでしたが、季節の移ろいと共に働く農家からすればそういう時期。ずっと忙しく働き続けていたサラリーマン時代とは異なります。
とはいえ、閑散期でもやることはあります。丹後は日本海側に位置しているので、冬になると必ず雪が降って積雪もある地域。僕が移住した年は「10年振りの大雪だ!」と言われ、確かに家の前で60センチも積もりました。さすがにビビりましたが、逆に雪耐性がついたのは良き経験です。
そんな雪の中でもビニールハウス内で栽培されている野菜を収獲したり、貯蔵していたサツマイモなどの野菜を出荷したり、普段よりは少量になりますが冬野菜を求めている方々への出荷は続きます。根菜類は雪の下でも掘り起こせば出荷できるので、雪をかき分けながら収獲することも。真っ白な雪に覆われた畑は雪の消音効果もあって、とても神秘的な雰囲気。
大雪の時に大変なのはビニールハウスの雪下ろし。ハウス内が外気より温かいので、積もった雪は自然と溶けて落ちていくのですが、大雪となると落ちた雪が積み重なって落ちる場所が無くなりハウスの上に延々と溜まっていきます。それが続くと重さに耐えられずハウスが潰れてしまうので、積み重なった雪を掻き出したり、ハウスに溜まった雪をどかす作業を行います。
寒い中ひたすら雪かきをし続ける作業で心身は堪えますし、かいてもかいても積もり続ける雪を目の前に絶望的な気持ちにもなりますが、スタッフ皆で何とか作業を終わらせて作業場に戻り、温かいお茶を飲む瞬間はやり切った感と安心感とか入り混じる時間です。
冬場は日も短いので夏場に比べて仕事が終わるのも早く、時間的な余裕も生まれる時期。普段は現場作業で聞けない野菜のことや食に関する知識などの話を聞いたり勉強会に参加しに行けるのも閑散期の特徴です。晴耕雨読とまでは言わないが(雨でも普通に作業はする農場だったので)、冬だしゆっくり出来ることやろう、という雰囲気が職場にはありました。
四季に応じて忙しい時は気張って働くけど休む時は休む。都会のサラリーマンに比べて余裕があるように見えた理由は、そんな生活サイクルがあるのかなと気付いた時間でした。