運動を行うことによる健康効果
皆様、明けましておめでとうございます。
昨年からnoteを始め、自分なりに看護学に関する研究や、研究業界についての情報発信をさせていただいてきました。
今年も引き続き、1つでも読んでいただいた方のお役に立つ機会がうまれるように記事を書いていきたいと思います。
さて、年末年始が終わり、本日から仕事始めの方も多いのではないでしょうか。筆者自身もそうなのですが、年末年始はどうしても生活習慣が乱れてしまった人も多いと思います。特に運動については一時中断してしまい、いつから再開しようか…と悩まれる方もいるのではないでしょうか?(筆者もその1人です)
そこで(?)今日は運動を行うことによる健康効果について、ご紹介していきたいと思います。
何となく「運動が健康に良い」ということは御存知かと思いますが、少し掘り下げてその効果を知ることのお役に立てば幸いです。
運動は健康に良いのか?
まず運動を行うことが健康に良いのか?という点についてですが、ここについては疑う余地はないと考えています。これは後ほど紹介していく、運動による健康効果を検証した研究だけでなく、「動かずに座っている時間が長いと死亡リスクが増加する」1)という研究データからも逆説的に証明できる部分かと思います。
もちろん、過度な運動は慢性疲労や精神的な負荷にもつながりますので2)、適度な負荷での運動が大切であることも注意が必要です。
以下より、運動の持つ健康効果を身体面、精神面に分けてご紹介していきます。
ただ、注意が必要な点として、「どんな運動が良いのか」「どれくらいの運動量が必要なのか」という点については研究ごとに検証対象が異なりますので、詳細な部分については各論文をご参照ください。
身体への健康効果
運動の持つ身体への健康効果は様々ありますので、いくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います。
疾病予防
運動を行うことは、心血管疾患の罹患リスクや、全死因死亡率、がん死亡率といった様々なリスクの低下につながることが明らかになっています3,4)。その効果も大きく、心血管疾患の罹患リスクを0.76倍へ低下させ3)、全死因死亡率を0.79倍に低下させる4)ほどの効果を持っています。これらの研究結果は、運動が健康長寿へつながることの根拠となると考えます。
肥満予防
肥満は様々な疾患の発症リスクを高める因子です。ですので、肥満の予防や減量は健康において重要です。
有酸素運動はこれらの効果を持っており、肥満状態の方において、週30分以上の有酸素運動によって体重減少や体脂肪量の減少効果が認められています5)。ただ、臨床的に意義のある効果を目指すとなると、週150分以上の有酸素運動の実施が必要なようです。
週150分…これはかなりのハードルの高さですね….。体重減少や体脂肪量の減少を目指すのは、運動だけでなく食事なども組み合わせて生活習慣を見直すことが現実的かと思います。
精神への健康効果
運動は身体面だけでなく、精神面に対しても良い影響を与えます。その影響について、いくつかピックアップしてご紹介していきます。
うつ症状や不安症状の軽減
うつ病を診断された人たちにおいて、運動を行うことによるうつ症状の軽減効果が認められています6)。効果が認められている運動の種類も幅広く、ウォーキングやジョギング、筋力トレーニングといった一般的な運動の他、ヨガや太極拳といった運動でもうつ症状の軽減効果が認められています。
また、不安障害患者においてもその症状の軽減効果が認められており7)、精神の不調をきたしている方において、運動療法の効果が期待できることがわかります。
ストレスの軽減
ストレス障害の診断を受けた人達において、その症状の軽減効果も認められています7)。また、何らかの診断を受けていない人たちにおいてもスポーツへの参加がストレス軽減につながることも明らかになっています8)。ただ、8の論文については「スポーツへの参加」であり、運動の実施とは少しニュアンスが異なることには留意が必要です。特にチームスポーツへの参加ではメンバーやコーチとの関係もあり、社会的な要因がかなり影響すると考えられるからです。
実際、ストレスレベルが低い人たちにおいては運動の実施がストレス軽減効果を示さなかった研究もあり9)、引き続き研究が必要なテーマであると思います。
まとめ
ここまで運動による身体面・精神面における健康効果をご紹介してきました。今回紹介するにあたって使用した論文はほとんどシステマティックレビューによって効果を示している論文であり、運動のもつ健康効果についてはやはり強く信頼できるものではないかと思います。
しかしながらもちろんまだまだ未解明な部分も多く、例えば成人と高齢者では運動量に差があるでしょうし、同じ運動内容でも人によって感じる負荷は異なります。
5kmのランニングという運動「量」が重要なのか、息が弾む程度の運動のような本人の感じる「負荷」が重要なのかといった点もまだまだ明らかになっていません。
今後の研究展開によっては、その人に合った健康のための必要運動がオーダーメイドされるような時代が来るのかもしれません。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
1.Koyama, T., et al. (2021). Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All-Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J-MICC Study. Journal of the American Heart Association, 10(13), e018293.
2. 白山. (1996). オーバートレーニング症候群. 体力科学, 45, 395-398.
3. Li, J., & Siegrist, J. (2012). Physical activity and risk of cardiovascular disease--a meta-analysis of prospective cohort studies. International journal of environmental research and public health, 9(2), 391–407.
4. Oja, P., et al. (2024). Health Benefits of Different Sports: a Systematic Review and Meta-Analysis of Longitudinal and Intervention Studies Including 2.6 Million Adult Participants. Sports medicine - open, 10(1), 46.
5. Jayedi, A., et al. (2024). Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA network open, 7(12), e2452185.
6. Noetel, M., et al. (2024). Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ (Clinical research ed.), 384, e075847.
7. Stubbs, B., et al. (2017). An examination of the anxiolytic effects of exercise for people with anxiety and stress-related disorders: A meta-analysis. Psychiatry research, 249, 102–108.
8. Eather, N., et al. (2023). The impact of sports participation on mental health and social outcomes in adults: a systematic review and the 'Mental Health through Sport' conceptual model. Systematic reviews, 12(1), 102.
9. Ryosuke, O. (2024). The impact of exercise on stress: a preliminary study: 2025, V.11, No. 4. Health, Sport, Rehabilitation.