スズメバチの天敵を考えてみる
スズメバチ、特に最も巨大で攻撃性が高いオオスズメバチは、天敵が少ない。同じ昆虫の仲間だと、オオスズメバチを捕食できるのは、オニヤンマか、シオヤアブか、カマキリかくらいしかいないだろう。しかもどれも正面からではスズメバチに勝ち目はなく、側面や背後から隙を見て捉えるしかない。固い装甲、強力な顎、そして最強の毒針を持つスズメバチは、防御力戦闘力共に最高レベルだ。
では、スズメバチの天敵がいないか、というとそういうわけでもない。
「スズメバチの天敵」で検索すると、いくつかのサイトがひっかかるが、内容な大体同じようだ。「野生の鶏」がスズメバチを食べるというが、これは実質ないに等しいだろう。
巣を襲って食べるツキノワグマ、ハチの巣を専門に狙うハチクマといった動物が、生態系の上で天敵に位置する。
しかし、両者ともに数を減らしている。ハチクマは準絶滅危惧種としてランクされているし、最近本州で増えているツキノワグマも、四国では絶滅危惧種であり、人間に危害を加える危険性が高いため駆除対象となりがちだ。
クマはハチに刺されて痛みに絶えながら食べるが、ハチクマはほとんどハチに刺される様子がない。これはハチクマがハチを不活性化する仕組みをもっているためのようだ。
もしかすると、昔もっとツキノワグマやハチクマが多かった頃は、スズメバチの巣を狙って食べたりすることで今よりも数が減り均衡を保っていたのかもしれない。
スズメバチの被害が多いということは、人とスズメバチとの接触機会が多いこともあるが、スズメバチの上位捕食者が少ないことをも意味すると考えることもできる。上位捕食者であったニホンオオカミがいなくなり、増えたイノシシやシカなどによる農作物の獣害が増えたのと同じ理屈だ。
生態系とは非常に絶妙なバランスで構成されており、ダイナミックに変化している。スズメバチの被害が多いのなら、短期的な駆除や防除だけでなく、長期的にスズメバチを捕食する天敵をどうやって増やすかを考えたほうが、生態系の均衡を考えるうえでより適切だろう。スズメバチの生態を知り、彼らの生活誌にどう関わっていくかを考える必要がある。
ニホンオオカミは残念ながら手遅れだが、ハチクマやツキノワグマはまだ絶滅はしていない。とはいえ、クマは近年増えている人への被害の問題もあり、そう簡単にもいかないのだが。
システムは常に変化していく。動的平衡を維持し続けるシステム全体をどう維持または復元していくかを考えたい。
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