見出し画像

言葉の呪縛から解き放たれ、自分を生かし、なりたいものになる

先日、以前書いたマルチ・ポテンシャライトの記事に突然アクセスが集中して驚きました。その日はnote.comやtwitterの通知が丸一日止まりませんでした。

調べてみると、Twitterで3万以上リツイートされた器用貧乏を嘆く方のマンガのリプライに私の記事が紹介されたようでした。

記事の紹介のツイートも1400以上のリツイートがされていました。その後、記事を紹介するツイートがどんどん増えていきました。

皆さんのツイートに「ああ、これは自分のことだ」というコメントがあったのがとても印象的でした。

アクセスが増えたことは正直嬉しかったのですが、それ以上にこんなにも器用貧乏、中途半端などで悩んでいる人が多いのかということに大変驚きました。

そして私の記事へのコメントで、17歳で将来を悩んでいたという記述を見てより一層衝撃を受けました。

私の子どもの世代の方が私(48歳)と同じ悩みを抱えているなんて!!

一つのことをやり続ける人も悩んでいる

ここでマルチポテンシャライトと反対の「一つのことをやり抜く人」も悩んでいるという話を紹介しておきます。

私の知人でとある有名なプログラマーの方がいます。その方は若くしてオープンソースで優れたプロダクトを公開していたほどの実力の持ち主です。

その方と数年前に久しぶりにお会いしたときに、確かポツリとこんなことをもらしていました。

「kakedaさん(私です)はいろいろできていいですね。自分はプログラミングしかできないので色々悩んでいます。」

私はこの発言にとても驚きました。

えっ、こんなスーパープログラマな人がこんな悩みを持っているの?

私の周囲のソフトウェアエンジニア界隈の友人でも、私と同じように色々なことに首をつっこんだり試したりするマルチポテンシャライトな人もいる一方で、ひとつのことをコツコツとずっとやり続ける方もいます。

そういった方々は、むしろ「他のことに飛び移って素早く吸収することができない、興味を広げられない/広げない」がゆえに、今の自分が取り組んでいることにコツコツと取り組んでいる、ということなのではないかと感じました。

「興味が移る・移らない」も生まれながらの気質

私は専門家ではありませんがパーソナリティ心理学という分野を調べる機会があり、そこで「クロニンジャー気質と性格の7次元モデル」というものを知りました。

簡単な説明はこちら。

もう少し詳しい説明はこちら。

平たくいうと、このモデルは気質(遺伝・先天的)と性格(自己洞察・後天的)によって、個人のパーソナリティ(個性)を表現されるということです。

気質は「新奇性追求」「報酬依存」「損害回避」「固執(持続)」の4つの因子から構成され、性格は「自己志向」「協調」「自己超越」の3つ因子から構成され、その組合せでパーソナリティができている、という理論です。

私が思うに、マルチポテンシャライトに当てはまる人たちは(科学的なエビデンスはありませんが)以下の気質に大きな影響を受けているのではないかと考えています。

・新規性追求が高い(=様々なことに興味を持つ)
・損害回避が低い(=すぐ試してみる)
・固執が低い(=飽きて次にいこうとする)

気質は遺伝性とありますが、より詳細に見ていくと神経伝達物質の分泌と代謝に依存していると考えられています。そして遺伝的な部分は基本的に変えることはできないとされています。

遺伝的な気質によってパーソナリティがある程度決定されているとするならば「変えよう」などと考えるのはそもそも間違いで、むしろ自分のパーソナリティを認めてうまく使いこなすしかありません。

気質は変わらないが、性格は変えられる

一方、性格は自己について洞察し経験や学習することによって変えることができるとされています。性格が変わることによって自分の気質を調節することもできるとされています。[1] 

つまり、変えられない気質に悩む時間は捨ててしまって、積極的に自分の気質をうまく乗りこなすように性格を変えていくほうがよいということです。

そしてクロニンジャー理論で言うところの性格の中でも特に「自己志向」が重要だと考えます。

自己志向は「意志力」のことで以下の5つを指します。(括弧内は反対の項目を指します。自己志向が高まれば右から左に移行すると言う事です)[2]

ちなみに、上記に紹介した2つのブログにおいては「自己志向=自尊心、自分への信頼感」という説明がありましたが、本来のクロニンンジャー理論を調べたところそのような説明が見つかりませんでしたのここでは自尊心という呼びかたはしません。

自己責任(<=>他者非難)
目的指向(<=>無目的)
臨機応変(<=>惰性)
自己の受容(<=>自己に抗う)
・(人生の目的に合致した)第二の天性(<=>(人生の目的と)不一致の習慣)

自己の運命を受け入れて、自身の向かうべき道を見つけ、臨機応変に対応しながら向かう事で、人生の目的と一致した第二の天性が見つかると言う事です。

このクロニンジャー理論を知ってからは、マルチ・ポテンシャライト的な自分の変えられない気質を受け入れて、性格を通じて気質をうまく扱うことができれば自分のパーソナリティを生かしたよりよい方向(=第二の天性)に持っていけるのだと更に理解することができました。

自分自身を認めて愛してあげる

他人の評価判断は他人次第で、人の評価それ自体はあなたにはどうすることもできません。

しかし自分自身を見る時には、せめて評価判断せずにありのままを見てあげてください。

「器用貧乏」「中途半端」という言葉はある価値観で評価判断したレッテルなので、まずこれを捨てましょう

「色々な事に興味を持ちどんどん試していく」という気質を評価判断せずに見つめ、そんな自分自身を愛し、受け入れてあげてください。

先ほど紹介したクロニンジャー理論の「自己志向」のサブ項目にも自己受容という項目があります。

別の人にならなくていい、今のあなたのままでいいのです。

そこからすべては始まります。

なりたいようになる

先日、マルチ・ポテンシャライトを紹介してくれた宮城さんと話す機会がありました。

宮城さんに『マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』の原著のタイトルが『How To Be Everything: A Guide for Those Who (Still) Don't Know What They Want to Be When Then Grow Up 』というタイトルだということを教えてもらいました。

原著のタイトルを邦訳すると以下のようになります。

「すべてになれる方法 〜将来何になりたいか(まだ)わからない人のためのガイド」

そう、この本は邦題「一生食っていくための方法」というよりも「あなたのなりたい何かになる」本だったのです。

まとめ

マルチ・ポテンシャライトに共感した多くの方々への驚きと、一つのことをやり続ける人も悩んでいるというエピソードを紹介しました。

そして、人のパーソナリティが気質と性格によって成り立っているというクロニンジャー理論を紹介しました。

我々は、一人一人持って生まれたものが違い、周囲や自分自身の評価判断やレッテルによって落ち込むことも多いです。

マルチ・ポテンシャライトという言葉を通じて、自分自身へのネガティブなレッテルを引き剥がし、ありのままの自分を受け入れて、前に進む勇気を得る事ができるかもしれません。

少なくとも、私はその一人として前に進んでいます。共に進みましょう。

参考文献

[1]: “Cloningerの気質と性格の7次元モデルおよび日本語版 Temperament and Character Inventory (TCI)”, (1996), 木島ら, https://www.institute-of-mental-health.jp/thesis/pdf/thesis-06/thesis-06-04.pdf

[2]: “Self-directedness”, https://en.wikipedia.org/wiki/Self-directedness

皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。