管理している湿地ビオトープで「親子で生き物観察会2024年秋」を開催しました
2年前から始めた湿地ビオトープで初の観察会
愛媛県で保全管理している湿地ビオトープで、10/14に観察会を実施しました。
これまで保全の一環の調査や、個別で問い合わせがあった方をお招きしたことはありましたが、一般参加の観察会は初めてです。この日は、4家族14名が、湿地に直接入ってもらい、思い思いにガサガサして生き物を捕まえて、それらを講師の方に観察してもらいました。
講師には、武智さん(動物とくにトンボや水生昆虫)、福岡さん(植物とくに水草)のお二人を迎えて、見つけたビオトープの生き物を詳しく解説してもらいました。お二人にこの観察会の企画を話をしてから約2年が過ぎていました。当日は、友人のHitomiさんと次男が諸々準備を手伝ってくれて大変助かりました。
山深いから外来種が少ない
この場所は、2022年から湿地ビオトープ化をはじめて今年で3年目になります。(ナミ)ゲンゴロウ、タガメなどの国内特定希少生物にあたるような希少種はいませんが(そもそも愛媛県ではみかけない)、それでも環境省準絶滅、絶滅危惧Ⅱ類の動植物が生息しています。
標高が300m以上の低山地に位置するため、アメリカザリガニ、ウシガエル、ホテイアオイ、オオカナダモのような厄介な外来種は今のところ存在しません。沢から水を直接引いているため、新しく外来種が侵入してくる心配もほぼありません。
現地の集落までの道のりが、山に入ると道が細く曲がりくねってわかりずらく、なれないと松山市内から移動するのが一苦労です。でも、一度来てもらえたら、その景色の素晴らしさは気に入ってもらえると思います。
子どもたちに豊かな湿地を体験してもらいたい
松山市内の平野部の水田は、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)のピンクの卵があちこちに目立ちます。除草剤を使っているため水田雑草もなく、稲しか生えない水田で、カブトエビ、ヌマガエル、ハイイロゲンゴロウなどが中心的な存在です。普段からそのような水田環境しか目にしない子どもたちに「生物が豊かな湿地とはどんなものなのか?」を体験してもらいたいと考えていました。
私自身も、県外・県内の湿地や水田環境を探索に出かけることがあります。事前に地図上でめぼしいところを当たりをつけていても、水生昆虫、両生類や、水草などの生き物たちのどれもが豊かで恵まれた場所が多いかというと、そんなことはありません。だからこそ見つけた時の喜びは大きいですし、そこにいる生き物を見つけた時は感動します。
しかし、たとえ豊かな場所があったとしても、それらの水田や湿地が、その先も豊かな環境を残して存在できるかの保証はありません。自分たちで湿地環境を保全管理するということは、継続的に豊かな環境をあり続けるようにできる、ひとつの解決策なのです。
今のビオトープが理想の豊かな環境であるかというと、まだまだですが、数年経って徐々にその方向に向かっているとは感じています。
子どもも大人もガサガサしよう!
最初は地区の自治会館で事前の説明を行い、そこから歩いて現地に移動しました。小さなお子さんには話だけの時間は退屈なのはわかりきっていたのですが、特に親御さん向けに、なぜこのビオトープを保全するに至ったかのお話をさせてもらいたく時間をとりました。なぜ本業がIT関係な私が、このような活動を始めるに至ったのかの経緯を簡単にでも是非知ってもらいたかったからです。(この点については、いずれこちらで記事にする予定です)子どもたちにはつまらなかったと思うけど、許してね!
説明の後、現地に移動して、講師のお二人が観察の前の注意点をお話ししてくれました。その後で、子供も大人もぬかるみの中で、大物狙いで頑張ってガサガサしていました。
最初は、足場の上から採集をはじめていた子どもたちも、徐々に湿地の中に入っていきました。両手に網を持つ猛者もいましたし、途中から長靴に水が入るのも忘れて楽しんでくれてたお子さんもいました。
湿地に大勢の人が入ることは環境を荒らすことと不可分ですが、人為的撹乱ということで許容しています。イノシシが入ってきて自然撹乱しているのと同じ扱いです。
実際に農作物が植えてある水田では、気兼ねなく入るというわけにはいきませんし、畔を壊さないように気を使います。ため池は水難事故の危険がありますし、水深が浅く見える湿地でも実際にどれくらいの深さがあるかは行ってみないとわかりません。水深が浅く(最大でも20−30cm程度)事故の危険がない湿地は、(汚れさえ気にならなければ)子どもたちにとっても安全です。
集めた生き物をふりかえる
1時間ほどガサガサやったあとに、どんな生き物がとれたかを分類し、講師のお二人が説明してくれました。
今回、動物については新しい種は発見できませんでしたが、自分たちで捕まえたアカハライモリ、ガムシ、クロゲンゴロウ、ミズカマキリ、ニホンアカガエル、クロスジギンヤンマのヤゴなどの大型のもの、ウスイロシマゲンゴロウ、コシマゲンゴロウなどの中型のもの、そして米粒より小さいマルケシゲンゴロウの一種、マルミズムシなどの生き物の大きさの違いに参加者の皆は驚いていました。
講師の武智さんは、子どもたちにわかるように、わかりやすく、かつ丁寧に生き物の解説をされていたのがとても印象的でした。観察会を多数こなしているプロの技です。
水草については、講師の福岡さんが、今回ビオトープで見つかった10種類ほどの湿生・水生植物について説明してくれました。私は植物の同定は慣れておらず、きちんとできていなかったのですが、あっという間に多くの植物を見つけてくる福岡さんの同定力に驚かされました。
今回は、3種類ほどビオトープで初発見の湿生・水生植物もありました。これまでシャジクモと混同していたフラスコモの一種、マルバノサワトウガラシ、ホシクサの一種であるヒロハイヌノヒゲなどです。これらの珍しい植物が生息していることがわかったので、来年はより注意して観察してみたくなりました。
植物は動かないため、ガサガサ中は子どもたちの興味はひきませんが、食性や産卵などの生活誌の中で水生昆虫と不可分です。今年増えたシャジクモ類は、コガシラミズムシ類が好んで食べます。コナギが繁茂する環境は、それを食べる大食漢のガムシや、茎に産卵するクロゲンゴロウの生活と切っても切り離せません。そんな動物と植物のつながりのお話も講師のお二人がしてくれました。
そうやって、すべての生き物は分かちがたく結びついていること、豊かさとはつながりの中で生まれるてくること、その関係が壊れるとゆっくりと全体が壊れていくこと、部分でなく全体を維持・保全するのが大切であること、そんなことを、湿地の生き物たちの関係から子どもたちに気づいてもらえるといいな、と思います。
季節ごとの違いも見てほしい
今回は、動物は新成虫・成体が中心で、植物はやや枯れかかった状態でした。ビオトープは季節によってその様相を大きく変えます。季節ごとの違いも是非参加者の皆さんに体験してもらいたいところです。
景色だけでなく、カエルの鳴き声、鳥の声、虫の声、風の音、陽の光など1年で多くの変化があります。この場所は定点観測だからこそ、気づく変化が多くあります。
次は来年の5〜6月あたり、トンボやヤゴ、様々なオタマジャクシ、水生昆虫の幼虫が見られる時期に観察会を開催できるといいな、と考えています。
講師のお二人、当日観察会を手伝ってくれたお二人以外にも、当日は来れなかったですが、何度も力仕事となる整備を一緒にやってくれたFさん、余ったタモ網を提供してくれたデューさんたち、日々ビオトープの管理でお世話になっているWさん、これまで整備でお手伝いしてくれたKさん、Sさん、Tさんたちの力があってこそ実現できました。そしてこの休耕田をビオトープとして快く使わせて頂いているオーナーさん、駐車場や自治会館の利用を許可してくれた集落の方々のご理解があってこそです。本当にありがとうございました。
皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。