【完結】東女美女烈伝.33 角田奈穂

終わりなき旅路をいくザ・レスラー

角田奈穂は美しいんだ。


かつてアントニオ猪木は伝説の田園コロシアム興行を大成功に導いた大塚直樹に対し、
「難しいことを簡単にやるってのがプロ。」
という言葉を送り労をねぎらった。
角田奈穂はまさにそう言いたくなる才女だ。ついでに美女。奇跡の45歳を目指す奇跡の37歳。
プロレスラーと役者。二足の草鞋。プロレスと芝居。語弊を恐れずに言えばきわめて親和性が高いように思われるが、同じ舞台芸術といえどもプロレスは死の危険性が伴う。己が命を託し懸け合うという想像を絶する緊張感たるや。
彼女の試合構成は、「優しい世界」と称される東女にあってまったく優しくない女子プロ温故知新。ケンカキックや張り手を軸に展開するハードヒットでありハイスパート。上福ゆきと気持ちをぶつけ合うハードヒット数え歌はあまりにも尊い。
私は東女を見始めてまだ1年。角田奈穂を推し始めてまだ1年。女子プロレスを見たのは25年ぶり。舞台を見たのは15年ぶり。
角田奈穂というどうしようもない私に舞い降りてきた天使に導かれ、私は25年ぶりに思春期を"やり直す"羽目になった。

国内興行→舞台稽古→海外遠征→舞台本番という常人には理解し難い超人的ライフサイクルはいまや彼女のルーティン。それをいとも簡単にとは言わないが、我々ファンにはさも簡単にスキップで草原を駆けているように見せるのだからたくましい。ザ・レスラー。大谷翔平なんぞ一捻りの二刀流。
こんなプロレスラーは前例がない。
そう、彼女にロールモデルなどいない。
彼女自身が後輩達から見た尊きロールモデル。
なんてステキで凄まじい先輩なのだろう。
後輩達よ。角田奈穂を崇めよ。ついていくのだ。こんなステキなロールモデルは他にいないぞ。

引退を表明した時に彼女を慕う選手達の多さに目を引かれた。
明治維新の立役者であり、かの松下村塾を主宰した吉田松陰の言葉を借りれば、

「真心をもって事にあたれば、おのずから志を継ぐ者が現れ道は開ける」

彼女の人柄、生き方は人々を惹きつけるチカラがある。この言葉のように、彼女がプロレス界からいなくなっても彼女の志、ロールモデルを継ぐ者はいるはずだ。彼女の唯一無二の生き方と思想は未来に向けて紡がれていく。HIMAWARIよ、湯本亜美よ、頼んだぞ!

かつて上福ゆきのIP王座に挑戦した際のトラッシュトークで「角田奈穂は普通。」と言われた彼女はもうすぐ「普通の女」に戻っていく。
寂しくなるが、思春期のやり直しを終えた私もまた「普通のオヂサン」に戻っていく。

彼女がこれからどんな夢や目標を持って歩みを進めていくのかはわからない(わかっていても口に出してしまうのは粋じゃあない)。

だけどファンとして、去り行く推しにこれだけは言わせてほしい。

角田奈穂は。
強い。負けない。
強いんだ。負けちゃいけないんだ。
だってプロレスラーとして生きた時間があるんだもん。
あなたがプロレスラーとして命を削って歩んだ日々は、誰かの人生に情熱を灯した日々でもある。
あなたが知らなかった世界は、きっとこれからあなたの人生を豊かにするものになる。

道はどんなに険しくとも、笑いながら歩こうぜ。

ありがとうございました。
またいつかどこかで。



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