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重たく楽しかった高校生活の幸せを思う 500 字日記

今までの人生で一番幸せだと思える瞬間は人生にどれだけあるのだろう。

ありきたりな歌詞のようだ。青臭いポエムだ。でもこういうポエムを、中学生とか高校生とか、それがふさわしいようなかわいらしい時期に書けなかった。中学は地獄だった。高校は地獄から抜け出すための期間だった。学生時代で一番楽しかったのは、と聞かれれば高校を選ぶけれど、深く深く刻んだ劣等感との苛烈な勝負の記憶が強くて、幸福を感じる隙はあんまりなかったように思う。突き抜ける楽しさと、指一本動かせないほどの重たいやるせなさが全部。

高校時代、ほとんど学校に行っていない時期が数ヶ月ほどあった。いじめられていたわけではなく、それなりに友達もいて、そのくせ何か日々が虚しく、学校に向かう道を外れ吉祥寺のカラオケボックスに 1 人で入っていた。寝転がって、背中に伝わる安い合皮の硬さと冷たさに、何をしているんだろうと、自問していた。

担任との面談、最近学校来てないよなと「学校めんどいか」と問われ、そうですねと力なく答えるぼくに「まあそういうこともあるよな」と呟いた先生は元気だろうか。淡々と受け入れてくれた言葉、あの瞬間、ぼくは幸せだったのかもしれない。

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