ブックレビュー「教養としてのコンピューターサイエンス」
最初の仕事はコンピューター関連だった
今は私の知り合いの間ではHR部門のプロということになっているが、実は最初の仕事は当時勤めていた会社の主力工場にあるコンピューター室という部門のシステムエンジニアだった。
入社後1年間の経理実習を経て本配属される前に人事担当との面談があって、特に何がしたいというものも無かった私は、正直にそう答えた。今考えると、本人がそういう場合、人事は喜んで同期が希望しなかったであろう情報システム部門に配属したのだと思う。
しかも、どうやら偶然入社前に受けたIBMのコンピューター適性試験の結果が良かったようで、それを当時の情報システム部門長が気に入ったのだとも後から聞かされた。
大学時代は情報科学に関する教養科目を一単位だけ修得した程度の知識で、ほとんどゼロからのスタートだったし、何よりも当時は実家のある神戸から主力工場のある日本海沿いの小さな町に転居するのは正直ショックだった。
それでも1985年当時、就職する際に日本IBMに入社した同期生が結構いたので、しばらく経つと、まあ情報部門も悪くないかな、と思ったし、会社自体情報システム部門への投資が歴史的にも積極的だったし、当時は同部門に優秀な人が結構いた。
また会社業績も良かった時代だったのか色々な研修を受講する機会も与えられた。当時は事務部門ではCOBOLという言語が主流でそれを学ぶと共に、メインフレームコンピュータやデータベース、ネットワークの基礎知識なども学んだ記憶がある。
その後のキャリアのプラスになった情報システム経験
それでも結局、自動車ガラス用の生産管理システムの構築などを手掛けた後、1年10ケ月ほどで情報システム部門を離れて人事部門に異動が決まることになる。
当時工場で初めてTOEIC試験をホワイトカラー全員が受けることになって、事務系で最高点だったことがキッカケで工場の人事課長が人事部への異動を画策したらしい。
短い経験だったが、何となく情報システム部門で長続きするような気もしなかったし、今考えるとこの異動は自分のキャリアに結果的には吉と出たような気がする。
何よりもプラスとなったのは、その後のコンピューターのパーソナル化とインターネットの登場に際して、明らかに当時学んだ知識が役に立ったことだった。
人事部門で賃金担当になってマイクロソフトのオフィスの登場時にデータベースアプリケーションのAccessをすぐに使いこなせたのもメインフレームコンピューターでデータベースを構築した知識があったからだ。
またインターネット技術が身近になると、HTMLでイントラネットサイトを使って人事FAQを構築、そのFAQは今でも多くが使われている。
30代半ばで中小企業診断士資格を取得した際に選んだコースは情報システム部門の鉱工業というものだった。この資格取得をキッカケに幅広い経営知識を学び、後に米国のホールディング会社でその知識が活きることになった。
技術は変化している...
総務省が発表している年代階級別インターネット利用率を見ると、60歳を境に少し落ち込み、70歳を超えると急激に落ち込んでいるのがわかる。
感覚的には自分の前後の世代の人たちを見ていても、自分の世代はデジタル化に適応できた初めての世代のように思う。流石にガラケーしか持っていないと言う人はあまり聞かないが、電子メールの反応速度やSNSへの投稿具合、ビデオ会議の活用頻度を見ていると60歳を分水嶺としてリテラシー格差が見える。
私は今年個人事業を始めた際に、デスクトップPCを自作で初めて構築した。PC登場以降色々パーツ交換を経験したこともあるが、正直拍子抜けするほど簡単だった。
そしてその自作PCを使ってホームページやnote(この個人のものでは無くてHIRAKUコンサルタンシーサービシズ名義のもの)、さらにはロゴ作成も自分で製作した。過去にイントラネットサイトを構築したり、ブログを熱心にやっていたことがこいうったハードルを低くしているのだと思う。
以前次男が学ぶプログラミング言語の授業を聴講した際に、基本的には当時学んだプログラミングの基礎と大きな差が無いように感じた。
もちろん技術は変化している。
1985年当時はネットワークと言っても専用回線だったし、インターネットの登場は90年代前半だ。この本で言うと第3部の「コミュニケーション」のほとんどが1985年以降の新しい技術にあたる。
私もホームページのSEO対策を学習しようとしたが、無料構築ツールを使ったこともあって、何冊か本を読んで結局よく理解できなかったし、AIを使ったツール構築となると未経験だ。
この本を手に取ることにした最大の理由は
さてこの本は「今こそ知っておくべきデジタル世界の基礎知識」というサブタイトルに惹かれて手に取ってみたものだ。インターネットの登場以降の基礎知識を確認したかったこともあるが、おそらく最大の理由はデジタルリスクを不安に感じているからだと思う。
自分の父親は今90歳だが、心身とも元気で、60代半ばで仕事を辞めた辺りからワープロを学び、その後70歳前後でインターネットが身近になるとPCを購入、MAC→NEC(ME)→SONY(98)→DELL(XP)→EPSON(7)→DELL(10)と、おそらく今のPCは6台目だと思う。
7年前にはiPadをプレゼントし、IOSに慣れた後、3年前には両親にガラケーを辞めてiPadを使うように指導したこともあり、お陰でコロナ禍でもFacetimeでほぼ毎日顔を見て話が出来ている。
それでも父は電子メールは仕事で使っていなかったためか今一つ不案内だし(昨日も添付資料にShort-cutファイルを添付してきた)、クラウドの利用や無線ネットワークの構築、IOTデバイスの利用となるとほぼお手上げだ。
そういった父が頻度は少ないながらも金融機関のサイトやインターネットショッピングをしている様子を見ていると、不正利用やデータ漏洩は果たして大丈夫かと心配になる。
そして自分自身も歳をとっていく
いや、高齢化は他人事では無い。
私自身も数年前からクラウドを利用した家計簿アプリを利用したり、スキーに行くと滑走ルートが記録されるアプリを利用し、最近購入したiPad Air第四世代をデスクトップPCのマルチディスプレイ化するなど、年々新しい技術を積極的に利用しているが、これらの便宜が増えれば増えるほど個人データ漏洩や不正リスクは増しているのは間違い無い。
果たして個人としてこういったリスクをしっかり守り切れるのか。
そして技術はますます進歩し複雑化している。今後両親の今の年齢に近づいていく中自分自身をリスクから守り切れるのだろうか。
今できるのは、今後も技術の進歩に着いていくべく学び続けるしかないのだろう。
そしてもう一つは子供にリバースメンタリングしてもらうことぐらいか。そうだ、次男へのIT投資は惜しまないようにしようっと。
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