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涙とぬくもりと笑顔の3ヶ月ありがとう~クリスマスの日 退院する赤ちゃんへ感謝をこめて~

Aちゃんと初めて会ったのは外は暑さが厳しく
秋はくるのか心配だった頃。
Aちゃんは2,000gくらいで産まれた赤ちゃん。
病棟では200g位で産まれた赤ちゃんの入院や
1,000gくらいの多胎(双子ちゃん以上)で
産まれる赤ちゃんは多く、
2,000gくらいのAちゃんは、
病棟では小さすぎな印象ではありません。

でも、Aちゃんを初めて見た私の印象は、
"ちいさい″ でした。
Aちゃんは出産後、直ぐ入院に。
Aちゃんは内臓やその他に問題が生じ入院。
様々な検査が必要な上、
内臓の手術を何度か繰返す必要があるという。
Aちゃんは入院すると
顔も身体も骨ばっていて、
ずっと涙を流しちぃさな声で泣いていました
Aちゃんの泣く理由が 初見の私に分かる訳なく
入院し間もなく手術が決定しており、
絶食続きのAちゃんは、
多分お腹が空いて泣いていると予測はできます
看護士さんの許可のもと、
保育士、看護士が24時間殆ど交代で抱っこ。
Aちゃんはベットでは数分ウトウトするものの
目がパチッとあいて覚醒。
覚醒と同時に
「うわぁーん!うわー、あー!!」
と顔を真っ赤にして泣く。
Aちゃんは抱っこが大好き。
抱っこすると、パタッと泣き止む。
そして、ウトウトと眠っていくのでした。

ある日、私が病棟に行くと
昨日までいたAちゃんがいません。
病棟の看護士さんに聞くと
「Aちゃんは来週手術予定なのに
 体調が思わしくなくて〇〇病棟に
 移床したんです。
 (いしょう:お部屋を移ること)
 元気になってから手術し、
 こちらの病棟に戻って来ます」
とのこと。
まだ、会ったばかりの頃でAちゃんの
私の記憶はその位しかありませんでした。

それから約2ヶ月。
Aちゃんは移床してきました。
大きな声で泣く赤ちゃんがいる中で
ちぃさな声で顔を真っ赤にし泣くAちゃん
「あ、Aちゃん!」
と思わず声が出てしまった私。
その日から1週間ほど、
Aちゃんは術後経過を含め検査をしつつ
担当の看護士のみ触れる許可が。
保育士である私は当然Aちゃんには
触れられない。
Aちゃんの声は聴こえるけれど
どんな顔をしているのか見に行けない。
それでも、コット(ベッド)の中で
ちぃさな身体をバタバタさせているのは
十分に分かり、
何も出来ない歯がゆさがありました。

1週間後、Aちゃんを保育士も触れることが
出来ることに。
Aちゃんは産後2ヶ月経つのに体重が減って
痩せているのがひと目で分かりました。
新生児の赤ちゃんの体重増加は、
1日当たり30g、1ヶ月当たり約 1,000g増加
とされています。
Aちゃんは、何らかの理由で
体重が増えにくいのです。
でも、身体は痩せているけれど、
Aちゃんは明らかに成長していました。
それは、表情が豊かになっていて
追視(目で追う)が出来たり
むやみに泣くばかりでなく
コットでぐっすり眠れる日もあり
心の成長はしっかりと出来ていたのです。

Aちゃんは眠りから覚めると、
直ぐに身体全体をバタバタと動かして
「うわぁ~!うわぁ」
と真っ赤な顔をして涙がこぼれます
そして、抱っこすると
ジッと私をみつめます。
Aちゃんには
お気に入りの歌があって、
私がAちゃんのお気に入りとは
別の歌を歌うと
身体をのけぞって全く違う場所をみつめ
″お気に入りのうたと違う!″
と言わんばかり。
「Aちゃん、この歌は好きじゃないの?
 じゃ、いつもの歌をうたおうかな」
お気に入りの歌を私が歌いだすと
のけぞっていた身体を戻し
まん丸の目で私をジ~ッとみつめ
歌を聴きながらウトウト・・・
そして抱っこしている私に
Aちゃんは自分の顔をスリスリ・・・
時々ニコ~ッとしながら眠りに。
Aちゃんの身体はあたたかく、
ビニールガウン越しにも私に伝わります。
毎日同じやりとりをAちゃんと繰返し
1ヶ月が経ちました。

そんな日が昨日まで続いていました。
一昨日の夜の最後のミルクは
担当の看護士と交代で私が飲ませることに。
Aちゃんはいつもと変わらず
ゴクゴクとミルクを飲みました。
体重が出産時より増えて
表情が更に豊かになってきました。
私はAちゃんが可愛くて仕方ありません。

昨日の日中Aちゃんのご両親と
お話する機会がありました。
ご両親は20代前半。
Aちゃんとの暮らしを心からお待ちでした
お二人共に、
「Aちゃんが産まれて直ぐに入院、手術となり
 退院できる日がくるか心配でした。
 本当に嬉しいです!!!」
と仰っていました。
ご両親は愛情深く、
ぐっすり眠るAちゃんをみつめていました。
ご両親の愛情をたっぷり受けられるAちゃん。
Aちゃんは幸せだな、と感じました。

昨日は私は午後からの出勤で
午前に退院するAちゃんに会うことは
出来ませんでした。
Aちゃんの後には、
直ぐに多胎児の双子ちゃんが入院しています。

クリスマスイヴもクリスマスも仕事だった私。
でも、イヴの夜
Aちゃんにミルクを飲ませて
たっぷりうたを歌いながら抱っこできたこと、
私をずっとまん丸の目で見つめて
あたたかいぬくもりと笑顔を見せてくれたのは
私へのとびっきりのプレゼントでした。

Aちゃん、
涙とぬくもりと笑顔の3ヶ月ありがとう
お家に帰って、優しいパパとママに
たくさん甘えて抱っこしてもらってね。



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