展覧会 #15 空想旅行案内人ジャン=ミッシェル・フォロン@東京ステーションギャラリー
タイトルとチラシの色彩に惹かれて東京ステーションギャラリーの展覧会を訪れました。
チラシのデザインは3種類。作品の雰囲気を表現しているフォントデザインが秀逸です。
線と色彩
白黒で豊かな世界を生み出すことを目指してドローイングに打ち込んでいたという若い頃に培われたシンプルで無駄のない輪郭線。
カラーインクと水彩の柔らかい濃淡が幻想的な雰囲気を作り出しています。
色数が少ないのは白黒の世界を追求していたことに関係あるのでしょうか。
夜明け前の空を見ているような青から赤へ移りゆくグラデーションがとても綺麗です。
見立て
正面から見た家、室内のコンセントや洗面台の蛇口部分がどれも人間の顔に見える写真や、人物の頭部がハサミ、ネジ、ギター、植木鉢、スプーン、プレッツエルやリンゴになっている小さなブロンズ像など、身近なものを人物に見立てた作品が面白いです。
都市と記号
無機質なビルが立ち並ぶ都市の風景は記号的なもので溢れ、ビル街に林立する道路標識と信号、乱れ飛ぶ矢印に翻弄される人間が描かれています。
無数の矢印は人間を何処へ導いているのか、無数の選択肢に溢れる今の日常と重なるような気がしました。
戦争と環境問題
戦争をモチーフにした作品では海を泳ぐのは魚ではなく魚雷、珊瑚ではなくゴミの山が描かれています。
戦争や死を連想させるイメージが直接的に描かれた作品にはっとさせられました。
雑誌、広告、ポスター
フォロンは1950年代終わりからニューヨークの雑誌社にドローイングを送り、『ホライズン』『エスクィア』『ザ・ニューヨーカー』『ライフ』などの有力紙に注目されて1960年代初頭にはそれらの表紙を飾るようになりました。その後は各国で高い評価を受け、美術館で個展が開催されるなど活躍を遂げました。
雑誌の表紙原画や広告ポスターの作品も展示されていて、メディア関連の仕事を多く手掛けていたことが伺えます。
展覧会を見るまで非現実的な空想世界を描いている作家なのかなと思っていたのですが、いい意味で予想を裏切られました。
フォロンの描く空想世界は現実の社会問題・世界情勢・環境問題への関心がベースになっていて、ファンタジーに寄りすぎないところに魅力を感じます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会期:2024年7月13日(土)~9月23日(月・祝)
観覧料:一般 1500円、高校・大学生 1,300円、中学生以下 無料
東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
JR東京駅 丸の内北口 改札前
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