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誰かが見ていてくれる
僕は、あの時考えていた。
人の気持ちとは?
人との関係とは?
前回の話の農家の主の思いを聞き、人との関わり方とは…
人の気持ちを汲み取って、はじめて自分に何ができるのか?
考え、答えが出る。
人との関係とは、こうしたお互いの気持ちを確かめ合い、意識の共有をし、お互いの気持ちをちゃんとすり合わせることが、大切なんだ。
そして、今、あらためて、当時の農家の主の思いを思い出しながら、この記事を書いている。
この出来事は、今から7年前の出来事。
あれから、世の中はさらに変わった。
ネット社会、すぐに繋がれる。
便利で、スピードも速く、時間もかからないで人と繋がれる。
たしかに素晴らしいこと。
でも、本当にそれで、人間は満たされているのか?
人との関係をあらためて考える。
(誰かが見ていてくれる)
この農家の主に会ったあと、横浜に帰り、農地の契約を解消し、何も揉めることもなく終わった。
しかし、このあと、僕は、もう一つだけやることがあった。
それは、もう一人の役員のTさんへの連絡だ。
Tさんも山梨県の方で、Hさんの知り合いだ。
役員になってもらったが、何も会社が動かなくて、山梨ということもあって、事情が余り伝えられていなかった。
そして、これからのことも説明しなくてはいけなかった。
僕「Kと申しますが、Tさんおられますか?」
Tさんの奥さんが出た。
奥さん「あー、ちょっとまってね」
奥さん「あなたも大変だったわね」
なんで僕のことを知っているのか?
僕は、Tさんの奥さんと初めて電話で話す。
不思議に思った。
Tさんが出た。
僕「Tさん、連絡遅くなりました」
「会社のことは、この前お会いした時に話したとおりなんですが、
まだ会社自体は、存在していて、役員として在籍はしていることにな
っています」
「こんな形になってしまい、ご迷惑をおかけして、すみません…」
Tさん「いえ、役員でいても、何も私に問題が起きなければ大丈夫です」
僕「はい。Tさんには、何も影響は及びませんので」
Tさん「はい。それなら安心しました」
「それはそうと、Kさん、Fさんに会いに行ったんだって」
「聞いたよ」
「Fさんも、知っているから]
「この辺は狭いから、情報がすぐにはいってくるんだよ」
田舎だから、情報がすぐに回るらしい。
Tさん「Hさんは、どうしてる?」
「あんたばかり、いろいろやっているようだけど]
「本当は、Hさんが始めたことだろ?」
「Hさんなんにもしないで、なにやってんだって。皆、言ってるよ」
僕 「そうなんですか。でも、僕が社長になったので…」
Tさん「うち(奥さん)のも、言っているよ。ひどいって」
それでか。
僕はTさの奥さんに会ったこともなく、話したこともない。
しかし、いろんなところから情報が入り、僕のことを知ったんだ。
僕はこの時、僕の知らないところで、誰かが見ていていてくれていることを知った。
この出来事で、僕がやってきたことは、間違いなかった。
そう思えた。
この出来事での唯一嬉しい、安堵な気持ちになった瞬間だった。
つづく…