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新たな社会保障サービスになり得るか?保険DAOも構想するOpolis
フリーランスや個人事業主が増える過程で、そうした人達が、会社員なら享受できるような社会保障から外れてしまうことが問題視されてきました。最近は、DAOに参加して暗号資産で労働の対価を得るという人達も現れていて、働き方の多様化に伴い保障のあり方も色々議論されています。
そんな中、新たな保障サービスとして始まったのがOpolisです。
Opolisは、自分達のことを「デジタル労働者協同組合」と呼んでいます。つまりフリーランスや個人事業主向けのオンラインの協同組合のようなもので、参加者は、共済のように健康保険や失業保険などの保障や、給与管理サービスを利用できます。
そしてユーザーへの収益還元を標榜する多くのWeb3サービスと同様、参加者はOpolisの発行するトークン「Work Rewards」を得る機会もあります。
Opolisの参加者(1):参加の主要2形態
Opolisには主に2種類の参加形態があります。(日本語訳は正式なものではありません)
従業員メンバー(Employee Member):これがOpolisの成長には最重要だと思われるので、追って少し詳しく書きます。
共同メンバー(Coalition Member):新しいメンバーを紹介したり、Opolisに有益なテクノロジーやサービスを提供したりするメンバーで、後者の場合は企業も想定されています。
これは、サービスを成長させていくために優れた技術を活用するための施策の一つとのことですが、基本的にはインハウスで開発しているそうです(創業者のインタビュー動画参照)。
Opolisの参加者(2):Web2もWeb3もカバー
従業員メンバー(Employee Member)というと会社員に聞こえるかもですが、これにはOpolisへの参加条件として、フリーランスでも法人格が必要、ということが関係しているようです。つまり、仮に自分一人の法人でも、自分はその法人の従業員、という位置付けです(日本だと一人社長は従業員と異なるみたいですが、アメリカだと法人格によってはEmployeeとみなされるようです)。
Opolisの従業員メンバーには、Web3領域で暗号資産で収入を得ているような人も、従来からの仕事をしている人も、フリーランス/個人事業主/ギグワーカーの働き方をしている人達が幅広く含まれるそうです。FAQによると、不動産エージェントや、ソフトウェアエンジニア、デザイナー、コンサルタント等が既にいます。
参加者へのメリット(1):暗号資産にも対応した柔軟な賃金管理と税務管理
そして、法人の銀行口座や暗号資産のウォレットの残高から、Opolisにより賃金が支払われます(この連携の仕組みまでは未確認)。その際に、Opolisが必要な税金の管理なども代行してくれるとのことで、個人事業主(一人社長)にとっては、後述のサービス費(Community Fee)次第では有難いかもしれません。特に暗号資産が絡む場合の税金対応は複雑そうですので。
さらに、賃金支払いの際は、通貨も柔軟に調整できるそうです。法律上、最低賃金分はUSドルにする必要があるのですが、それ以外の部分は自分の都合で変えられます。例えば自分が元々クライアントから受け取った報酬がUSDCだとして、「最低賃金を除いた賃金はビットコインで受け取りたい」といったことが可能になります。その際、Opolisは交換手数料は取らないとのことです。
参加者へのメリット(2):より低コストに保障を受けられる可能性と、サービスのオーナーとして利益還元への期待
参加者、特に従業員メンバーへのメリットとしては、このようなことが言われています。ただし客観的な検証はできていません。
一番は、より低コストに保障が受けられる可能性です。前述のCommunity Feeの1%の規模感と、保障内容とのバランス次第ですが。
創業者は、従来の株式会社だと株主の利益を追求することが結局最優先で、ユーザーのコスト軽減と利益獲得を追求することは難しいとしています。Uberを引き合いに出して、「Uberは結局株主の利益を追求する動機が働くので、平均的なドライバーは最低賃金すら稼げていない」という趣旨のことを指摘し、Opolisは分散型で、参加者=オーナーなので、コストの軽減と、サービスの充実を追求できると言っています(動画)。
次に、これはこのサービスの参加者=トークン保有者=オーナーだからですが、配当とトークンの値上がり益というかたちで、サービスの利益が還元されることへの期待もあります。ただしトークン価格の不確実性はあるので、値下がる可能性もあります。個人的にはこれはこのサービスの本質的な価値ではないと思いますが、ここに価値を感じる人はシビアに検証した方が良いと思います。
Opolisの事業ポテンシャル(1):収益源
現状、最も重要なのはCommunity Feeと呼ばれるもので、従業員メンバーが利用したサービスの額(賃金支払と保険等)の1%です。
保険を使わなければ少ないと思いますが、使う場合は金額によって負担が妥当な場合も厳しい場合もあり得るかもしれません。ここは検証していないのでなんとも言えませんが…
また、これは一度きり且つ少額ですが、従業員メンバーは参加時に20ドル出資することが求められます。
Opolisの事業ポテンシャル(2):Web3はリファラルで成長し得るのか
Opolisが主張していることの一つに、Web3だからこその低コストなサービス拡張の可能性があります。
つまり、従来の企業だと、サービス拡張には多大なマーケコストと、営業人員のコストが必要になりがちです。
Web3の場合、ユーザー=ビジネスオーナーになるので、ユーザー自身にリファラル/営業のインセンティブが働くとのことです。
Opolisの場合は、参加形態によっては、リファラルの最低回数をメンバー条件にしていたりもします。
これが本当に機能するのかも、個人的にとても興味深い点です。
Opolisの事業ポテンシャル(3):デジタル労働者協同組合から、保険DAOへの発展構想
創業者のインタビュー動画の最後に、参加者が増えたら保険DAOをつくる構想もあると話されています。
働き方の多様化に伴い、社会保障自体へのニーズは高そうなので、それにWeb3がどんな価値を付与できるのか…
さらに、これが機能するなら、Opolisが描くように、保険事業もより低コストに充実した保障内容を提供する可能性も生まれるかもしれません。
そうなればより多くの人達の生活に関わることになる話ですし、当然Oolisだけの話でもなくなりますので、一個人としてもWeb3サービスを検討する一事業者としても、今後の展開を興味深く感じています。
この記事は特定のサービスの利用や暗号資産の保有を勧めるものではありません。
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