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負けた数だけ

日経からわけのわからないメールが特報きた。

どれどれ、特報というくらいだからと中身を読んでみた。

今日の本題じゃないので詳細は省くし、この施策への考えも割愛しますが、これ、簡単に言うと、「ていの良いクビキリ」だよ。

中高年会社員の皆さん、「キャリアアップ」「DX人材」なんていう飛び道具に惑わされないでね。45歳以上の社員に気持ちよく辞めていただくための理由付けに過ぎない。

「辞めたいと言ったのは、あなたですから」

DX(マツコ・デラックス)というのはOE(Operational Excellence;業務改善)のための手段であり、目的ではない。

ややもすると自己目的化しやすい手段なのだが、大事なのは「それがどう顧客の喜びにつながるか」というSS(Strategic Story ; 戦略ストーリー)だ。この戦略ストーリーが先にあって、それを形にするためにはこことここをデジタル化してもっと便利にするといいよね、という順番。

そう、利益を高めるためには、WTP(Willingness to pay ; なんぼやったら出してもええで)への納得感・満足感があるSS(戦略ストーリー)が必要で、むしろこれからのビジネスには、そういう「おもろいこと」を考える力が必須。

ところが大企業社員、とくに中高年のおっさんの話は見事に面白くない。そりゃそうだ。読む本といえばビジネス書、新聞は日経、映画は観ない。美術館? 中学の時行った。休日はゴルフ。飲む仲間は同じ会社や取引先の同じようなおっさんとばかり。

これでは面白くないのは当たり前なんだけど、それ以上に大事なのは;

負ける

こと。

会社に入ってから、意識・無意識に競争している。組織内のメンバーと。同期と。

勝つ

ことが至上命題になってる。

でもね。

負けてるはずなんだよ。何かで。どこかで。しょっちゅう。

「負けは良くない、早く忘れましょう」

そう思ってるから、「無かったこと」になってしまう。

それ、お金を捨ててるのと同じです。

2011年3月24日、東日本大震災直後、かねてから予定していたので、ニューヨークへ飛んだ。成田空港内トイレに座ってたらでかい余震があって、ビビりながら出発。

前年秋にリリースした新作『共感企業』(日本経済新聞出版社刊)プロモーションで、「10万人の共感ツアー」やってた。

ハワイ・ホノルルでスタート、帯広、東京、横浜、仙台、大阪、福岡・・・と、日本をあらかた回り、千穐楽(せんしゅうらく)、〆は創業の地ニューヨークでやろう。

当時コラム連載させていただいていた『ニューヨーク・ジャピオン』編集部の主催、でっかい会場に人が集まってくださった。

皆さん、お元気ですかー?
ビジネスサーフィン!

会場から活発に質問いただき、満足いくライブだった。

満足の後ろ姿

さて翌日。

紀伊國屋書店ニューヨーク支店でトークライブが予定されていた。

なんでこの企画が決まったのか、覚えてない。

ニューヨーク在住時代、日本語の本を買えるので、大変お世話になった書店だ。

ちょっと早めに行った。

おおおおお!! 店にポスター貼ってくれてるやん!

ありがたや。ありがたや。

店内にも特設コーナーが!! ありがたや。ありがたや。由歌利の本まで用意してくれてるやん。
これ、全部売り切って、紀伊國屋書店さんに恩返しせな、あかん。

さて、そろそろ定刻なので、会場になってる2Fへ行った。隣がカフェになってる。

阪本作イラスト

長机が用意されており、その上に著書がずらり。販売用だ。サインもするよ!
マイクがある。
ずらりと客席。

・・・・

・・・・・

・・・・・・・

誰も来ない。

手持ち無沙汰なので、ぼくは座ってる。

隣のカフェのお客さんの声が聞こえる。

「だれ?」
「さあ・・・」

恥ずかしい。

「**と違う?」
「えーーー!? (否定の声)」

え? 誰と思ったん? 気になるやん。

と、アメリカ人男性がツカツカとやってきた。
ぼくにサインでももらいたいのか、と立って笑顔ふりまいた。

あっさりぼくを通過し、後ろにあるアニメグッズの棚へ。

違った。

ふと気づくと、客席後部にぽつんと一人、アメリカ人らしきブロンド美人が座ってる。

「そんなところに座ってないで、もっと前に来てくださいよ」と笑顔&英語で呼びかけた。
彼女、ここを休憩所と思っていたらしくあわてて立ち上がり、去ってしまった。

編集部、気を利かせて、早く来てくれよ。これじゃ間がもたん!!

なんとか、一人、ふたりとやって来てくれて、始めることができた。

これ、はっきり言って、

負け

だと思った。

いくら前日、観客が多数会場に押し寄せてきてくれたとしても、紀伊國屋書店でこの知名度の無さ。この段階で、ぼくは出版キャリア10年は超えてる。

知られてない。

これは、ぼくのような商売では、致命傷だ。

この負け以来、強くなった。

セミナーを主催して、参加者募集しても、集まらないことがある。

平気。

何がいけなかったのか、冷静に分析できる。

そして何より、
自分の「おもろさ」が増分した。

負けた数だけ、人はおもろくなる。

だから、DXだのキャリアアップだのと飛び道具につかまってないで、負けてください(笑)負けを認めてください。

よほど、「おもろい人」になれます。

*今日のカバー写真は、「負けた」後、紀伊國屋書店NY前で撮影したものです。悲しい思いで、撮りました。

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