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うつし世

ぼくはこの世をうつし世と思ってる。
何かの「うつし」、つまりコピーであり、まったく同じ世界がツインで、存在する。

世の中は夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ
古今和歌集

プールに入る。

「浮かぶ」とき、「ああ。やはりこの世はうつし世、どこかの本体のコピーなんだ」と実感した。というのも、ぷかり、と浮かぶとき、重力から解放されるから。

浮かぶ、というのは、ふつうに生活していたら、体験できない。
でも、たとえ水の中であれ「ある」ということはコピーのツインワールドでは「ある」ということなんだろう。
どんなときかというと、きっと魂だけになって、ふわふわ浮かんで遊んでるときに違いない。

上を向いて、プールの天井に差し込む光を眺めながら、ぼくはうつし世で魂となり浮かんでいる姿を思い浮かべる。時間の経過は、天井が動くことでしか、わからない。

どん、と壁にぶつかった。

還魂し、ぼくは現世に戻る。

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