うつし世
ぼくはこの世をうつし世と思ってる。
何かの「うつし」、つまりコピーであり、まったく同じ世界がツインで、存在する。
プールに入る。
「浮かぶ」とき、「ああ。やはりこの世はうつし世、どこかの本体のコピーなんだ」と実感した。というのも、ぷかり、と浮かぶとき、重力から解放されるから。
浮かぶ、というのは、ふつうに生活していたら、体験できない。
でも、たとえ水の中であれ「ある」ということはコピーのツインワールドでは「ある」ということなんだろう。
どんなときかというと、きっと魂だけになって、ふわふわ浮かんで遊んでるときに違いない。
上を向いて、プールの天井に差し込む光を眺めながら、ぼくはうつし世で魂となり浮かんでいる姿を思い浮かべる。時間の経過は、天井が動くことでしか、わからない。
どん、と壁にぶつかった。
還魂し、ぼくは現世に戻る。
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