美味しい
通勤途上に観光バスが止まってて、前で外国人たちが談笑してた。
男ばかりなので聞きやすい。
「どっから来たの?」と投げようとした矢先、めちぇくちゃ濃い匂いが攻めてきた。彼らがつけているボディミストだか何かだ。
これで声がけ、やめた。
瞬間、ブレーキかかった。ブレーキの理由、うまく説明できない。
中学のとき、おませな友人が同級生の女子誘って映画行った。
気になるから翌日「どうだった?」聞いたら「うーーーーん・・・・」
「映画面白くなかったの?」
「いや、面白かった・・・けど・・・」
「何?」
「うーん」
「◯◯ちゃんと、楽しかったでしょ」
「それが・・・」
「何かあった?」
「いや、なんもない。なんもないんやけど、映画のあと、すぐバイバイしてん」
「何か急な用事でも?」
「違うねん」
「じゃ、何?」
「においが・・・」
どうやら彼女のにおいが彼のブレーキになったらしい。どんなにおいだったのかわからないけど、でも、うまく説明できないようだったので、話はそこで終わった。不思議な話だなあと思ったので今まで覚えてる。
でも、わかった。
「味覚と嗅覚は言語中枢とはつながってない」
と昨日、学んだ。
医学者・解剖学者・養老孟司先生が教えてくださった(本で)。
言語中枢って何だ? とChatGPTに聞いてみた。
つまり、味とにおいは言語化不可能なのである。
中学時代の友人の映画デートがうまくいかず、でもちゃんと説明できなかったのはこれが原因だ。
ユン食堂という大好きなバラエティ番組がある。
いまやアカデミー女優のユン・ヨジュン、イ・ソジン、チョン・ユミ(『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『82年生まれ、キム・ヨジュン』)、そして『梨泰院クラス』パク・ソジュンがリゾート地 スペイン・テネリフェ島で開店する。
これが2号店。
1号店はインドネシアのどっかの島で、まあ、言ってみれば「海の家」的なお店だった。
海の家の時に一番売れたのが、ラーメン。インスタントの辛ラーメンを出すだけなのだが、これがヨーロッパ人初め、みんなに好評だった。
つまり、辛ラーメンはユニバーサル、万国共通に「美味しい」のだ。
しかし今回のスペインでは、店構えが違う。しっかりしたお店で、向かいは意識高い系のレストラン。ちゃんとした料理を出さなければ、出店した甲斐がない。ラーメンはNGとした。
辛ラーメンは文字通り辛い。韓国語で「맵다(メプタ)」と言う。これは、唐辛子などの辛味成分によって刺激された舌の感覚を表す言葉だ。
ただ、同じ「辛い」でも、しょっぱい辛さもある。
舞台のテネリフェ島では「塩辛い」がメインになる。人々が好む。
なぜ好むのかは説明できない。海の近くだから、とか、いくらでも説明できるが、それは後付けに過ぎない。つまり、味覚と言語中枢はつながってないから、説明のしようがないのだ。
「美味しさ」を試行錯誤しながら、やがてユン食堂は繁盛し始める。
これも、言語化できないゆえの、試行錯誤。
聴覚は言語化できる。だから音を楽譜に書くことができる。
作曲することを「曲を書く」と表現するように。GとかAとか和音をコードとして記録できる。
「美味しい」と敢えて言葉をあてはめているけど、それは人それぞれ違うんだろうなあ。
若い夫婦二人とトイプードル「ミーちゃん」の生活。
丁寧に、ていねいにごはんを作る。
美味しいね、と笑顔交わしながら、いただく。
ただ、それだけ。
ご主人が帰宅すると、トイプードルのミーちゃんがくるくる回って歓迎する。可愛くて仕方ない。
このチャンネル、まだ「企業案件」がないので、画面が爽やかだ。
面白いことに、「案件」が混ざり始めると、画面が濁る。
各家庭ごとに「美味しい」が生まれる。それが当然なんだろうね。
なぜなら、「美味しい」は、「作ってくれた人とその時間と空間を共有できる幸せ」をも表す言語表現なのだから。