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幕見で歌舞伎

意外にも「幕見」のほうがハードルが高かった歌舞伎。システムが解っていなかったというのもあるが、いつでも行けるだろうと楽観してたら結局いつまでも行けないという典型。実際は、こんなに親切な説明が日本語と英語で掲げられているし、スタッフの対応もお見事。外国人も多い…確かに一日拘束は長いが、一幕観劇できるってのは観光客にも有り難いな。

お目当ては二幕目の「勧進帳」。販売開始の一時間半前を目指して来たが、一幕目の販売時刻よりも前で、すでに長蛇の列。そこで初めて、人数によっては二幕目以降だと座れないこともあること、幕見を「通しで観る」ということも可能であることなどを知る。

改めて本日のラインナップ。「勧進帳」は外せないが、姉は「め組の喧嘩」も観たいという。席を確保するためには一幕目から入ったほうが良いので(どうせ待つわけだし)、結局通しで三幕観ることに。4000円也、自由席と同じ料金になるという、良く出来たシステムだなー。

幕見席。それほど遠いとは思わなかった。花道だけが半分以上見切れるくらいか(それでも、見せ場はちゃんと手前で演じてくれる)。席の空間は確かに狭いが、ちゃんとした椅子だし十分だと思う。実際には立ち見もあるわけで。

予備知識なく観た一幕目「寿曽我対面」、華やかで鮮やかで若々しく、なかなか楽しめた。そして「勧進帳」。博多座で観た團十郎さん弁慶・海老蔵冨樫の舞台の衝撃と感動は今でもはっきりと憶えている。今回は海老蔵弁慶(始終見せ場)、松緑冨樫(弁慶と互角の凄みと気迫)、菊之助義経(ほとんど動かず顔も見えないのにオーラ十分)という20年ぶりのドリームキャスト。役の解釈などあれこれあるのだろうが、三者それぞれ自ら新境地を切り拓いている印象。テンポの良さもあり完全に引き込まれて、息をするのも忘れるほど。終演で「はー、凄かった!」と思わず声が出ると、お隣の方(幕見常連っぽい男性)が「良かったですよね。お父さんも凄かったですが、”海老蔵の”弁慶でしたね。」と仰り、颯爽と去っていかれた(次はこんな風にカッコ良く一幕観劇したいものです)。一人の役者が模索しながら進化していく過程を観た気がする。

ちなみに、我が家では母を筆頭にみんな海老蔵が好きだ(姉は「私は違う!」と言いそうだけど)。とにかく華があり、舞台での存在感が凄まじい、貴重な役者である。素行がどうの…とか、野暮なことが言えるのは本当に、舞台を観たことない輩なんだろうということをつくづく思う。

「め組の喧嘩」なんだなんだこのスペクタクルな江戸っ子祭り感は…喧嘩なのに。菊五郎さんの粋なパワーにひたすら圧倒される。声も良いですな…。なんだかスカッとして最後に完璧に着地した感じ。しかし、さすがに通しで観るとぐったり。

幕間のコマーシャルが緞帳のスライドショーと音声アナウンス。「提供は、株式会社永谷園…」このアナログ感最高。

幕見、癖になりそうだ。

團菊祭五月大歌舞伎  2019年5月3日(金・祝)~27日(月)歌舞伎座

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