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豊岡演劇祭2023 安住の地『かいころく』/市原佐都子×岡田利規×相馬千秋×平田オリザ『国境を超えた創造性』

《Documenting》20230918
豊岡演劇祭2023
安住の地『かいころく』
於:日本基督教団 但馬日高伝道所
(2023年9月18日11時30分の回)
市原佐都子×岡田利規×相馬千秋×平田オリザ
『国境を超えた創造性』
於:豊岡市民プラザ 交流サロン
(2023年9月18日13時30分〜)

 私の豊岡最終日は安住の地『かいころく』。関西で活動する劇団/アーティストグループの安住の地は、なかなか東京で観ることができないが、今年5月に東京のせんがわ劇場で『生きてるみ』を観て衝撃を受けた。
 今回の『かいころく』という題はおそらく「回顧録」と「蚕録」のダブルミーニングで、戦前〜戦中にかけて家業の養蚕――蚕飼い(こがい)を手伝っていた青年の物語をひとり芝居で表現している。30分の短い作品だが、小さな教会の中で四方を観客に囲まれながら、激しく体を動かし白熱のひとり語りを見せた森脇康貴がとにかく素晴らしかった。
 戦地で倒れた青年の回想というフレームの中で、少年期から彼が携わってきた蚕飼いの仕事や家族の様子が語られていく。そして終盤は、生まれ出ることがないはずの養蚕用の蚕が、繭を破って羽を広げる姿を再現し、幕を閉じる。
 この戯曲を書いた私道かぴは、『生きてるみ』では交通事故に遭って不具になった人間を描いた。今回の蚕と同様、作者の実体験から遠く離れた者の内面の声を戯曲にしている。今作は長野の元養蚕地と関わりを持ったことから選んだテーマだというが、あえて作者の経験では書けない題材を選び、リサーチしてフィクションを作るということに強いこだわりを持っていることが伺える。
 またしても灼熱の中を移動してトークイベント『国境を超えた創造性』へ。昨年の世界演劇祭ディレクターを務めた相馬千秋、その世界演劇祭で『弱法師』を上演した市原佐都子、ドイツの公立劇場でドイツのスタッフとともに何作も作品を作っている岡田利規、フランスとの関わりが深い平田オリザの4名の座談会。あまり詳しく言うのもはばかられるが、相馬が「検閲」と表現するドイツ演劇における激しい内容チェックなど、生々しい話がいくつも出てきた。その中でも、「検閲とドラマターグは明確にわかれていない」と冷静に語りながら、「海外でやるときもその土地のコンテクストは考えない」「日本の俳優と海外の俳優の違いはありすぎるが、そもそも自分が両者を比べて考えていない」という岡田の強靭な知性が光っていた。
 夕方の電車に乗り、また6時間かけて帰京。どっぷりと疲れたが、今回得た教訓としては、次も行く気があれば数ヶ月前から宿だけは押さえておかねば、ということだろう。

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