わたしはここにいる

音のない世界を見た

匂いのない世界を歩いた

色というものがなんなのか思い出せない世界に飲まれた

わたしの中に入って行った人たちは

みんな静かに散っていった

眠れない夜に流れ星を落とす生き物もいなくなった

失った命と夜空の星の数は釣り合っていないことを知った

人間が失った輝きの数ほど夜空の星は輝きを増していった

太陽よりも暗い夜を照らす月の方が好きになった

消えない傷があるのに痛みだけが消えていった

単純な細胞でできた身体の中で

繊細な心が分裂しはじめて

「今、わたしはここにいるの」と

わたしと交信しはじめた

…まだ星になるには未熟者だと知って。

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