失くすこと

意味のないことほど意味があるように

彼の右手がポケットから出てくることを

人々が願う平和の一部として溶かしておいた

時と共に亡くしたことにしていたものが重なり合っていって

全てを吸収しきれずに いいところだけを吸い込んで

それを過去と呼んでみたり 恋と呼んでみたり

待つことを知らぬ春の訪れとも呼んでみたりした

生命の息吹は行く末を知らず

わたしは溶け合う熱を

誰にも触れさせまいと

飲み込むための膨大なわたしを創り始めたりとかして。

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