エマール
詩を書きました。
エマール
橘しのぶ
くたびれたわたしを
エマールで手洗いした
(伸びヨレ戻して元通り!)
脱水はほどほど水の滴る程度に
ハンガーにかけて窓辺に吊るす
梅雨晴れの空は氷砂糖の味がする
風の指にくすぐられてわたしは
どうしようもなくひるがえり
うらもおもても
あられもない
水無月は風に句読点があるから
そのすきに逃げ出そう
わたしはわたしを
置き去りにして
ひとふでがきの雨に降られて
飛び込んだ雑居ビルのエレベーターの
吸殻みたいに踏みにじられたいときもある
Rのボタンを押します
うえへうえへ
らせんを描きながら
鼻先でゆれるハエトリリボンには
ちよろずの蝉のぬけがら
雨音と思ったのは蝉時雨だった
ほら、ちっとも、濡れてない
うえへうえへ
わたし、がんばれ!
かんはれ!かんはれ!
成層圏はいつだって晴天
˝ は風にさらわれた
空のRから
置き去りにしたものを眺める
(伸びヨレ戻して元通り!)
すっかりかわいて
風にそよいでいる
*「エマール」は、花王のおしゃれ着用洗剤名
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