橘しのぶ

第四詩集『水栽培の猫』思潮社。第32回萩原朔太郎賞最終候補。第三詩集『道草』第19回日…

橘しのぶ

第四詩集『水栽培の猫』思潮社。第32回萩原朔太郎賞最終候補。第三詩集『道草』第19回日本詩歌句随筆大賞奨励賞受賞。2024年『詩と思想』現代詩の新鋭。第3回サンリオ「いちごえほん」童話部門グランプリ受賞、2004年度「詩学」新人。第8回、9回、15回アンデルセンメルヘン大賞入賞。

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第四詩集『水栽培の猫』

私の新しい詩集です, 思潮社HP、Amazon、楽天など各種オンラインショップや大手書店で販売中。お取り寄せの場合は「橘しのぶ詩集 水栽培の猫 思潮社」とご指定ください。よろしくお願いします。 巻頭詩を紹介させていただきます。 水栽培の猫        橘しのぶ ベランダに 猫が一匹まよいこんだ どこにでもいそうな やせっぽちの猫だ アパートはペット厳禁だけど 水栽培ならばれないかなと 窓辺のガラス容器に 水を張ってのせておいた 三日も経つと 水を吸った猫は ふっくらと

    • 詩壇

      広島市内に、唯一生き残っていると思われる同人誌に参加している。月に1回、合評会をする。自作の詩を持ち寄って、言いたいことを言う。ほとんどの人が主婦で、年齢的には私が中間(詩人高齢化)。詩歴はおそらく、大方の同人より長いけれど、私が1番新入りなので、妹分としてご意見を頂戴している。それが実に楽しい。言いたいことが言えるということは、信頼関係がある証拠。ご高齢で代表を退かれたM先生のお人柄の反映である。 インターネットで詩を披露して、批評し合う関係性も素晴らしいのだけれど、私はや

      • カスタードふリン  

        久しぶりの更新です。 よろしくお願いいたします。 言葉そのものの力を試したいのです。 そして、悲しいことこそ明るく書きたい。 だって、悲しいことがあった日の方が、空の明るさが身に染みるから。 そんな感じで書いています。 カスタードふリン              橘しのぶ ただいまぁ 扉をひらいたら扉があった また扉をひらいたらまた扉があった 家は入れ子式らしい 人形サイズに脱皮したわたしが リカちゃんハウスの扉をひらきつづける 薔薇色の額縁の中から わたるくんがほほえみ

        • ぐりとぐら

          あかのままぐりぐらぐりぐらくるりくら 秋の虹おててつないでゆきしかな 初夢や象の玉子の玉子焼き 2024年10月14日、天国に旅立たれた中川李枝子さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

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          言葉の力

          師匠から、「橘さんは〈言葉〉でものを考える人」と言われた。その通りだ。 和歌の歴史を眺めてみる。万葉の時代には自然に身を委ね大らかに表現されていたものが、古今、新古今と時代が下る従って技巧的になる。古今集は貴族の時代に編まれた歌集であるが、後鳥羽院の命で編まれた新古今集は、鎌倉時代で、主権は貴族から武士に移っていた。今、この時の栄華を詠むのではなく、失われた栄光を、ゆめ、まぼろしとして歌にするほかなかったのである。  私も同じなのかもしれない。私は裕福で複雑な家庭の末子として

          あきうらら

          詩の勉強会に行きます。書き下ろしの詩を持参。 私の出版記念会もしていただきます。 仲間に感謝。 あきうらら                    橘しのぶ 手も足も出ない日 ゆきあたりばったりの男に出会った 一億の他人が死ぬよりも 一人の身内が死ぬ方が悲しいじゃないか と嘯きながら男が 貧乏ゆすりをやめないから 漆喰が剥がれ落ち 時間軸が歪む いつだったか 買ってくれたよね ゴジラのぬいぐるみ 手垢にまみれたから洗濯機で回したら コシラになって使い物になンない その他プ

          あきうらら

          詩の顔

          詩には顔があります。字面と呼ばれるものです。文字の配置や、その文字を平仮名にするカタカナにするか、漢字にするか、ローマ字にするかで、全く顔が変わります。人の顔がメイクによって変わって見えるのと似ています。俳人であり歌人であり詩人であり劇作家であった寺山修司さん(1935~1983年)は、昭和の文学青年たちの憧れだった方です。彼の詩を紹介します。   ハート型の思い出     みずえ 一本の楡の木 恋の本恋の本恋の本 モーツァルトを聴いた夏 愛さないの愛せないの愛さな     

          オノマトペ

          擬音語と擬態語を総称してオノマトペといいます。擬音語は、人、動物、物が発する音を表現するもので、例えば、「烏がカーカー鳴く」「犬がワンワン吠える」というように、耳で捉えた音を文字で表現したものです。一方、擬態語は、実際には音はしないのですが、物事の状態を音声に喩えて表現したもので、「ご飯をパクパク食べる」「星がキラキラ光る」などが例として挙げられます。ただ、ありきたりなオノマトペを使って詩を書くと、作品が低俗化する場合が多いです。絵を描くときも、チューブから出した色をそのまま

          オノマトペ

          比喩

          詩的レトリックのひとつとして、比喩というものがあります。「夕焼けに染まった美しい空」を「たった今、赤い薔薇が、ふっくらと花開いたような空」と書く技法を、比喩と言います。日没の頃、西の空が次第に赤く染まってゆく夕焼けの現象を、赤い薔薇の開花するありさまに喩えているわけですが、「ような」を用いて喩えの箇所を明示するやり方を「直喩」と言います。「ような」の代わりに「みたいな」「ごとし」「似ている」なども用いられます。 「赤い薔薇が、ふっくらと花開いたような空」を「赤い薔薇が、ふっく

          色彩と言葉

          私の敬愛する童話作家に、安房直子さんがおられます。『きつねの窓』という童話が小学校六年生の教科書に採用されていたので、読まれたことがおありかもしれません。安房さんの作品には「色」が、よく出てくるのですが、とりわけお好きなのは青です。安房さんの『惹かれる色』というエッセイを一部抜粋します。 どうして、そんなに青い色が好きなのかと人に聞かれますと、青は、海と空の色だから、一番深くて幻想的な色だからと答えていましたが、あとから考えてつけた理由で、色のこのみというのは、食べ物のそれ

          色彩と言葉

          師匠のお言葉

           私の詩(エマール)について、師である松尾静明先生から頂いた最新のコメントが大変うれしかったので、ここに記します。「エマール」に限らず、私の作品、すべてに通じると思います。  例えば「風船玉がね、飛んでるハトを食べちゃったんだよ」と言う子どもの言葉は、大人にとっては意味や状況特定できない難解さを持っているが、子どもにとっては、この言葉こそが意味や状況に最も近いものだろう。  そのような「子ども性」が、橘しのぶにはあるのではなかろうか、という風に読めば、この詩の手法の現代詩壇

          師匠のお言葉

          今日読んだ本買った本

          今日は「源氏物語」の講座があった。 最近、忙しくて時間のやりくりが大変だ。 往復1時間、バスに乗るので、長谷川忍詩集「上野、不忍通り」(土曜美術社)をお供に。この選択は素晴らしかった。今日は突然気温が下がって、秋を肌身に感じたのだが、その爽やかな哀愁はこちらの詩集に相応しい。長谷川さんは私と同じ1960年生まれ。同年代だからか共感する部分が多い。言葉たちが冷たい水のように、少し疲れた渇いた私の裡にしみこんでくれた。ありがとうございました! 帰りに株主優待でもらったクオカードで

          今日読んだ本買った本

          秘密

          中学生の時に書いた詩です。 秘密              橘しのぶ 人はわたしを チビだなんて呼ぶけれど わたしの秘密  だれも知らない タンポポの綿雲に乗れること ミツバチとないしょ話できること カタツムリの殻に入れること  ガラスの靴がはけること        *   な、な、なんて乙女チック‥

          稚すぎたけれど‥

          稚すぎたけれど‥              橘しのぶ こすもすの花のように  ゆれていたわたしを あなたは愛で抱きとめてくれた 「お兄様でいてね」とささやくわたしに 「妹にはできない」とつぶやいたあなた   つぎのことば待つのがこわくて 無邪気に笑って駆けて行ったわたし とおせんぼしないで まだ子供すぎるの   おしゃべりやめないで 風の音におびえた こすもすの花のように ゆれて‥ゆれて‥ いたずらに流れたときの中 かくれんぼやめて‥  もう何も言わないで‥  

          稚すぎたけれど‥

          十月の句(1996年「春燈」10月号より)

          天使魚の眠れば星も眠りけり 天使魚の夢にたゆたふ翼かな 夏の月人魚は恋に溺れけり つまべにや夢描くとき左利き 夜の秋星の瓔珞ふるへけり        橘しのぶ

          十月の句(1996年「春燈」10月号より)

          九月の句(1996年「春燈」9月号より)

          結び葉のさやぐや恋の練習曲 夜顔のシフォンの聞き耳たつるかな 夕顔の明日なき約に瀆なし 俤や走馬灯から出奔す 蛇の衣虚空に過去をそよがせし              橘しのぶ

          九月の句(1996年「春燈」9月号より)