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第四詩集『水栽培の猫』

私の新しい詩集です,
思潮社HP、Amazon、楽天など各種オンラインショップや大手書店で販売中。お取り寄せの場合は「橘しのぶ詩集 水栽培の猫 思潮社」とご指定ください。よろしくお願いします。
巻頭詩を紹介させていただきます。

水栽培の猫
       橘しのぶ

ベランダに
猫が一匹まよいこんだ
どこにでもいそうな
やせっぽちの猫だ
アパートはペット厳禁だけど
水栽培ならばれないかなと
窓辺のガラス容器に
水を張ってのせておいた

三日も経つと
水を吸った猫は
ふっくらとうめいになった
すっかりなついて
朝のゴミすてにもついてくる
アパートの住人は
気がついていないふう
おきまりの笑顔で
おはようございます
今日もいい天気

血管もはらわたも
とうめいなのに
胸のあたりに耳をあてると
とくんとくんと鳴っている
抱いて寝るとほかほかだ
けれどいつかは
つめたくなるのかな
想像したら泣きそうになった

おとなりさんも
そのまたおとなりさんもこっそり
水栽培の猫を飼っているらしい

おはようございます
おはようございます
おはようございます

ベランダで
朝顔がつぎからつぎへと
すきとおった花を咲かせる

橘しのぶ 詩集『水栽培の猫』思潮社
四六判並製・104頁 2,420円(税込)
栞=野木京子

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