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星合い

「星合い」は、初秋の季題。陰暦の七月七日、牽牛と織姫の二つの星が、天の川を渡って逢うこと。
25年前に同人誌「まーじなる」vol2に載せた詩です。

星合い

信じるわと言ってみたところで約束はお天気次第
そんなことよりわたしは
あなたの紅茶の檸檬の防黴剤のことを気にしていた
発癌性物質を含有しているんです
いいえ、それなら、発恋性物質のまちがいでしょう
と、あなたは
暮れ惑う空にむかってハトを放った

川沿いの径を二人で歩く
偶然めかしてちょっとふれあい
バックの底の折りたたみ傘を手さぐりで確かめる
わたしの川は海に近い
汗の匂いの風になみだぐみそうになる
てのひらからてのひらへ
星の砂がこぼれ落ちるとき
大気が静かに光りはじめた

アイスルコトハアキラメルコト
砂時計のウエストのくびれに欲情する
ひとつのゆめとひきかえに
声をなくした人魚の唄を
くちずさむわたし
あなたはミントのガムを噛んでいる
あなたと何度か通った径
あの日、まっさらな自分に怖気ながら
ソメイヨシノに降られた径

メインの通りに出るとき
わたしはいつも一人なのだ
アノコガホシイアノコジャワカラン
愛を乞う人が明日
愛を殺すことだったありうる
デジタルの返信がとぎれて
とぎれたまま流星になる
とにかく生きてさえいればと
あの日のあなたの
檸檬のことばかり気にかけながら
わたしは声を呑みくだす


    『まーじなる』vol2. 1999年11月25日発行

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