ゲーテって詩人だけじゃなかったの?
こんばんは、きぜつです。
先週、東京大学駒場キャンパス内で開催中の「変わる高さ、動く大地 -測量に魅せられた人々の物語-」展に足を運んでみました。
テーマもさながら解説が専門的で難しい内容でしたが、測量について深く学びたい人にとっては最高の展示と言えるでしょう。特徴的だったのは、多くの関連書籍が紹介されていることでした。絵本から洋書の専門書まで幅広く、選書に関してかなり練られたんだなと思いました。
そこで最初に手に取ったのが、展示の冒頭にあった、石原あえか著『近代測量史への旅』。同展の解説を書いている方(のうちの一人)でもあります。
このなかで、ゲーテについて触れられていました。
ゲーテと聞くと、文学のイメージを持っている方も多いと思います。『若きウェルテルの悩み』などが代表作でしょうか。
しかし、実は詩人や小説家だけでなく、政治家、弁護士などの肩書も持ちつつ、地質、気象、動植物、色彩なども究めた科学者でもあったようです。
同書によるとゲーテは、地形や雲の分類などの自然景観の絵図に関して、書籍の付録の図版を毎日眺めたり、発注を行うほど、自身の研究のために熱望していたということでした。
ちなみに、書籍と同時の納品が間に合わなかった絵図を、待ち遠しさのあまり、著者ではないゲーテ自身が(勝手に)作ったこともあったそう※。
その結果、ゲーテの絵を原本に出版され、世間でも評判となったようです。
この絵図は学術的な厳密さを重視するよりは、直感的に視覚に訴える絵画的なものであり、この縮尺で見えるはずのない登山者やワニがいたり、空には鳥や気球が飛んでいたりしています。楽しい感じになっていますね。
(ただ、そういうものだったので、再販時には著者によって多くの間違いが修正され、その過程で右下にいた巨大なワニさんも消されたそう🐊)
また、このほかにも同展でゲーテについて触れられていたのが、意外にも『色彩論』についてでした。
なぜここでゲーテの色彩論!と思いましたが、当時、地質図を描く際、地質の特徴を分類をするときの色合いのデザインについて提案をしたそうです。なるほど、ここで測量(同展のテーマ)につながってくるんですね。
この配色案は現代の地質図にも影響を及ぼしているとのことでした。
ネットで調べていると、ゲーテの色彩に関する研究のエピソードが易しく書かれているページがありました。
このなかで、
とありました。
自然景観の絵図の話からも、何となく頷ける気がします…
一方で、こんなことも述べられていました。
今回の展示を見て、測量の内容(難しかった...)というよりは、ゲーテのマルチな研究対象や興味関心に驚きを覚えました。
(そして今でいう「地理オタク」でもあったのかな、なんて。)
まあこれはこれで気づきということで、良しとしよう。
ゲーテの、人間と自然との調和を突き詰めた結果のアウトプットが、文学作品であり自然科学の研究なのでしょうが、いくつかのエピソードから、直感・心象で物ごとをとらえるタイプなのかもしれないと感じました。
(鉱物や植物、自然景観などに興味を持ち、これらをモチーフにした作品を多く残した宮沢賢治を思い出しました。時代と国は違いますが、似たような感性だったのでは、と勝手に想像しています)
私は宮沢賢治が好きなので、これを機にゲーテの作品も読んでみようかな、と思いました。
参考文献
・石原あえか(2015)『近代測量史への旅: ゲーテ時代の自然景観図から明治日本の三角測量まで』法政大学出版局
・東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館「2024年度秋季特別展「変わる高さ、動く大地 -測量に魅せられた人々の物語-」展」
https://museum.c.u-tokyo.ac.jp/2024.html#20240928 (閲覧日:2024年11月17日)
・キヤノンサイエンスラボ・キッズ「有名な文学者ゲーテは色の研究もする科学者だったって、ほんと?」 https://global.canon/ja/technology/kids/mystery/m_04_10.html (閲覧日:2024年11月17日)