ネコゴコロとヒトゴコロ その18

借りてきた猫

  初めて会う人や慣れない環境の中にいると、普段とは違って口数も減って存在感が希薄になってしまう人のことを「まるで借りてきた猫のよう」と言ったりしますが、その由来をご存じでしょうか。
  昔々、日本人が猫を飼い始めた頃のこと。猫を飼う目的の一つは穀物を荒らすネズミ駆除のためでした。でも、そのためだけに猫を飼うのは不経済。 
 なので、猫を飼えない人がネズミを駆除したい場合は、猫を飼っているご近所さんに「お宅の猫を貸して欲しい」と頼むことに。   
 けれど、猫って自分のテリトリー以外では、警戒心ばかりが強くなって普段のように行動できなくなるという習性があります。そのため、せっかく借りてきても、逃げ出すかうずくまっているばかりで、役立たずで終わってしまうことがほとんどでした。
 そこで生まれた言葉が『借りてきた猫』。そして、気の合う人とは普通におしゃべりできる人が、いつもと環境が違う場所にいると打って変わってとても静かでよそよそしい人になってしまうことを『借りてきた猫のよう』と形容するようになりました。

 実際、「借りてきた猫のようになってしまう人」って多いものです。そういう人は、だいたい内弁慶であったり、人見知りであったりします。
 初対面の相手などと相対する場合に、必要以上に緊張してしまい、居心地の悪い思いをしたことがあるとしたら、それはあなたが“借りてきた猫”タイプである証拠。

 そんな“借りてきた猫”状態から抜け出したいのなら、次のふたつのことを心がけましょう。
 ひとつ目は、「知らない人の前で緊張するのは当たり前」と開き直ること。人は何らかの葛藤や痛みを予感したり危機に直面すると、自分を守ろうとする防衛本能が働きます。それを心理学用語で『防衛機制』といいます。
 借りてきた猫状態になるのは、防衛機制のひとつである『逃避』の心理が働くせいですから、「なあんだ、居心地が悪いのは自分の防衛本能が正常に働いているからなんだね」と認めてあげるのです。それだけで、かなり気が楽になります。

 そしてふたつ目。それは、無理にしゃべろうと思わないこと。そして、“聞き上手”を目指すことです。人見知りの人の多くは、「うまく話さなくては」と思うばかりに、焦って頭が真っ白になってしまい、結果として黙りこくってしまいがち。
 おしゃべりは、それが得意な人に任せればいいのです。
 それに聞き上手な人は概して人に好かれます。人は自分の発言を熱心に聞いてくれる人に好感を持つからです。「この人と話すのが楽しい」「もっと話をしたい」と思われるようになるので、異性にも好かれやすくなります。
 そのためには“仏頂面”は厳禁。上手な相づちの打てる笑顔の“借りてきた猫“さんを目指しましょう。



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