【連載】第1回 改めての自己紹介と喜代多旅館再びの休館のお知らせ
連載を本格的に進める前に、この文章は誰によって書かれているかを記しておきたいと思います。少しだけ自己紹介にお付き合いください。
自己紹介
この連載は2019年10月のリニューアルオープン時のオープニングスタッフとして入社し、以来喜代多旅館で働いている人間が担当しています。喜代多旅館にくる前は、東京で宿泊や接客とは異なる仕事して生きてきました。
ちなみに、求人はこのサイトで知りました。
『その人生経験、かいます 生まれ変わる旅館とわたしの時間』(日本仕事百貨)
いわゆる求人情報サイトですが、見せ方が素敵だなと思ってよく見ていました。今こうして読み返すとまた違った角度で読むことができています。
喜代多旅館に惹かれたわけ
ほぼゼロからの組織づくりに関わることができる。そう感じたのが大きな理由だったように思います。
喜代多旅館は2019年のリニューアルオープン前のおよそ3年間を休業していました。建物の老朽化に伴う改修工事のためにです。
上の写真は私がはじめて旅館を訪れた時のものです。まだ工事が終わっていませんでした。迷路のようで全体がつかめない、建物の中を見せてもらった時そんな印象をうけました。富山市の街もほどよく人が少なくて気に入りました。まだ残暑の残る2019年9月のことです。
同年秋にその工事が終わり、10月にリニューアルオープン。このタイミングでスタッフも新たに集めて再スタートを切る、そんな求人に私は応募をして採用されたわけです。
3年の改修工事で本当に多くの人が関わってできたのが、今の喜代多旅館であることは理解した上でこれは書いているのですが、私が来た時点でここにあるのは建物(場)だけでした。ここをどんな場にするか、良くも悪くも可能性があると感じました。
そんな喜代多旅館の再スタートには私を含め県外から越してきた社員2名、そして富山県内から3名のスタッフが集まりました。(併設レストラン、ビストロカドゥーのスタッフは今回数に入れていません)
※なお喜代多旅館の創業から今までの歴史は、以下のリンクで知ることができると思います。詳しく知りたいという方は次の公式サイトをご覧下さい。
『喜代多旅館 公式サイト』
https://kiyotaryokan.jp/history/
オープン前の嵐
喜代多旅館がリニューアルオープンしたのは2019年10月26日。私が働き始めたのはオープンの13日前です。まだガランとした雰囲気が漂うオープン前の宿泊施設で働く経験はなかなか出来るものでなないので、私にとってこれは楽しい経験でした。
とはいえここにお客様を迎え入れるためにソフト面でもハード面でもやることは山積み。人手は女将と社員2人時のほかにパートタイムスタッフ3名。振り返るとなかなかのスピード感で乗り切ったなあという感想です。(なおパートタイムスタッフは喜代多旅館以外でも仕事をしているダブルワーカー。後述しますが喜代多旅館はダブルワークを推奨するような雇用形態をとっています。)
ハード面は改修を手掛けたデザイナーさんによって最低限の備品は選定済みでしたが、買い足すべき備品は次々と出てきました。
私「女将、あれも必要じゃありませんか?」
女将「買ってください」
私「女将、あれも・・・?」
女将「買ってください!」
こんなやりとりをすごい回数重ねた覚えがあります。お客様用靴ベラ、各トイレ用ゴミ箱とペーパータオル用のボックス(そしてそれ用のゴミ袋とペーパータオル自体も)、お風呂のかき混ぜ棒、「スタッフオンリー」「ここからスリッパに履き替えてください」の看板、掃除用のカート、フロントデスク内の備品(当時は電話とコピー機しかありませんでした)、ルームキー用の収納(これが一番悩みました)挙げるときりがありませんが、なんとかオープン前に一通り揃えることができました。
ソフトの面では宿泊施設である喜代多旅館がオープン前にどんなサービス・接客における準備をしたかという点に触れるのが模範解答な気がしますが、今回はオープン時から使っているシステム周りの話をしたいと思います。
地方都市の小さな旅館のIT周りのこと
前述の通りオープン前、喜代多旅館は女将を入れてもスタッフ総数6人という小規模な組織でした。(2021年1月時点でフロントスタッフは10名に増えました)
そんな小さなチームである我々が、立ち上げ当初から使用するシステムの話をこのブロックでは書きたいと思います。
オープン当初から我々が使っている主要なツールは次の2つです。
それぞれを簡単に説明をすると、ラインワークスはメッセージアプリであるラインのビジネス版です。喜代多旅館では主に業務に伴う連絡ツールとして使用しています。
グループで「既読」がついても誰によってそのメッセージが既読されたかまでは通常のラインではわかりませんが、ラインワークスだとそのグループの誰が「既読」したかまで把握できます。データのやりとりなども、ライン同様ラインワークスで可能です。
Stockは私の感覚だとクラウドでデータの保管と共有ができるツールです。
(Dropboxと同じ感じというと分かる方も多いのではないでしょうか)
当初喜代多旅館ではデータの保管・共有のほかに業務連絡もこのstock上で行っていましたが、使っていくうちに連絡漏れを防ぐために業務連絡をする場所は統一した方が良いという事になりStockはデータを保管・共有する場所として使われています。
ちなみに喜代多旅館は2020年4月、5月と休館しリモートワークを実施していました。その際ネット環境があればアクセスすることができるStockは非常に便利でした。社内イントラネットのような社内のネット環境のみでしかアクセスできない場所にデータを保管していた場合、リモートワーク時の切り替え作業で一苦労あったと想像します。
あとはグーグルドキュメントやスプレッドシートは随時更新されたデータが共有できるため、会社で無料のグーグルアカウントを作って使用しています。ほかにも請求書の作成・管理ツールやシフト作成ツール(各スタッフのシフト提出もアプリ上で行ってもらっています)、レジシステム、宿泊施設の運営に特化したシステムなど、多くをネット環境があればアクセスできるクラウド化しています。
クラウドを多用することで起こりうる弊害もあり、何か起きた場合の備えをしておくことは組織としての課題ではあるのですが、立ち上げ当初からシステムのクラウド化を意識的に取り組んでいたことはとても有意義だったと、今振り返ると感じます。
ちなみにこれらの情報は会社のトップである女将に了解を得た上で公開しています。喜代多旅館はこの辺の内情はとてもオープン。良いもの・やり方は共有する、逆に他の組織のやり方も吸収したいというスタンスです。
依頼があれば同業他社さんにも視察をしていただいています。先日は県内でゲストハウスを開業予定という20代の方が数日間視察にいらっしゃいました。
単に当館のノウハウを公開するだけではなく、その方がどんな経緯や思いがあって今にいたるのかという事を伺う機会になるので、私としても非常に良い機会でした。私自身も他の施設さんのやり方を学ぶため、お話を聞かせていただくこともありました。
そして目下の課題は仕事の見える化です。チーム内でどんなプロジェクトが動いているのか、そして各スタッフがそのうちのどんな作業を担っているのかということが全体で共有できた方が良いということになり試験的にTrelloというツールを導入しています。ただまだチームにあった形で使いこなせていません。うちではこんなやり方をしているよ、などあればぜひ教えてください。
そして再びの休館
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、喜代多旅館は再び休館することとなりました。
今回は2021年2月末までのおよそ1ヶ月半の期間です。旅館は閉じていますがスタッフはテレワークなどで動いていますので、クラウドを便利に使いこなし新しいことに挑戦してこうと思います。この連載もそのうちの1つです。
ちなみに前回のリモート期間中には、こんな挑戦をしました。
YOUTUBE『喜代多旅館×柴犬』
https://youtu.be/TVuNyBnDjwA
YOUTUBE『喜代多旅館のキッチンから』
https://youtu.be/f6xTgsbpKW4
反省点は売り上げに直結しなかったという点ですが、クオリティーや実行した意義はあったと感じています。今回の休館期間では反省点を生かした挑戦をできたら良いなと考えています。
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今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました。