
海外越境通販で国が滅ぶ
海外からの個人通販が簡単にできるようになりました。これは消費者には喜ばしいでしょう。ですが、それは実は税収という面では大きな問題があります。この記事では触れられていませんが、更に申せば安全面でも問題があります。
まず一定以下であれば関税も消費税もかかりません。つまり合法的な脱税ともいえます。同じものを国内で買った場合は逆に不利を被ります。日本の場合、食品や雑貨、あらゆる消費財を輸入しているから、競合する日本製品も不利になります。
そして一番被害を被るのが輸入商社や小売店です。
当然ならそれらの会社は関税や消費税を負担しています。対して越境ECではその負担がありませんから、輸送費を入れても有利です。
特に並行輸入品は脅威です。輸入業者は製品の普及のための営業費用をかけています。宣伝のために広告やサイト、カタログなどを日本語で作ります。また在庫を切らさないようにある在庫も抱えます。またメーカーの数ある製品のラインナップを揃える必要があります。これらのコストを負担しているわけです。
対してECサイトあるいはECサイトから仕入れる並行輸入業者は売れ筋だけ仕入れればいいわけです。
これらの違いが販売価格に大きく影響してきます。
ところが米国などで多いのですが、どこの国の製品でも輸入業者が一括して購入してAmazonに売ってしまうのです。その場合、多少マージンが低くても、売上が大きいし、一回の取引で絶対的な利益の金額も大きいわけです。で、アメリカのAmazonはその商品を世界中に配送します。
対してAmazonに自社で出店するのであれば、在庫を抱いて通販の個別の手配も必要です。
コストは圧倒的にかかります。ですが、Amazonに丸投げする場合、ブランド力の維持などでは不利です。Amazonの判断でどんどん値段を下げたり、投げ売りされる場合もあります。
例えばフランスのメーカーの代理店がそれをやると、フランス国内で買うよりも安い価格でその製品が買える場合も出てきます。となれば、国内や他の国の流通業者や小売店の売上は減ります。そうであれば業者は扱いをやめてしまいます。そうなれば実際に手にとって買える機会が減るので実はメーカーにとっても中長期的には大きな損失です。それはブランド力があるところほど、そうなります。
現在ではブランドイメージと販売価格の維持のために、Amazonへの丸投げや米国以外の商圏に売らないような契約をする会社も増えています。
このような税負担の不公平が続けば、国内の輸入業者や流通業者、小売店の利益は減って、当然ながらそれは法人税や消費税の減少となります。更に申せば雇用や賃上げも難しくなります。これは特に財政赤字がGDPの2.6倍を越して、少子高齢化の我が国では深刻な問題です。ところがその対応が全くできてない。こういうことをやらずに、安易に社会保障負担を増やしたり、取りやすいところから増税しています。
もう一つの問題は安全です。
例えば口に入れるものその関連の、食品や薬品、健康食品、浄水器、食器や食品容器、更に肌につける化粧品など、更には電気製品なども企業が輸入する際には大変厳しい検査があります。得てして米国のFDAやECよりも厳しいし、これら国で検査を受けたものでも国内検査が免除されません。しかも非常に高い検査費用が必要です。
ところが越境ECではそれらが、個人で使用するものだからと必要ないことになっています。また日本に未輸入の商品でも同じです。まったく無検査で怪しげな食品や薬品がはいってきています。これで伝染病や健康被害でも起こったらどうするのでしょう。
ですが、厚労省も経産省もこの問題を放置しています。
別な視点からいえば、ではなんで、国内の業者が高いコストと時間をかけて、検査をしないといけないのか。これでは穴の空いたバケツで水を汲んでいるのと同じです。これは国家のセキュリティの問題でもあります。
当然ながら関税、消費税、更に検査コストまでかけずに輸入できるならば、国内業者は価格の面では太刀打ちできなくなります。そうなると撤退してく業者が増えていきます。
実際にぼくの知っている会社も輸入をやめて商売変えしたり、並行輸入に切り替えている会社もあります。
これは中長期的にみて消費者にも不利益です。まず安全が担保されていない。そのメーカーの製品の売れ筋しか手に入らなくなる。更に申せば国内企業の仕事が減るので、税収や雇用が減る。そうなれば増税が繰り返され、国民一人当たりの負担も増えていきます。
官庁や政治家は早急に手を打つ必要があると思います。それも個々の官庁の縦割りでは対応できず、内閣府あるは官邸が主導して行うべきです。
EC輸入急増、揺れる競争
小口宅配、3年で2.4倍 欧州は免税枠廃止
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74131630T00C23A9MM8000/
>日本の輸入許可件数が急増している。2019年に5千万件たらずだったのが、22年は1億件を超えた。大半を占めるのは宅配の小口貨物だ。個人の越境ECで消費税や関税のかからない少額の買い物が広がっているとみられる。免税取引が増えすぎれば国内企業との競争環境がゆがむ懸念がある。欧州などでは免税枠の廃止も相次ぐ。
>モノの輸入は税関で申告して許可を得る。個人がインターネット通販を利用する場合などは、販売事業者らが手続きを担っている。財務省のデータによると、22年に許可した輸入は総計1億1289万件で前年から18%増えた。全体の9割近くは航空貨物で、大半を小口の宅配が占める。
>経済産業省の市場調査で、越境ECの購入額は22年に米国と中国からだけで3954億円と前年比6%増えた。米決済大手ペイパルによると、日本のユーザーの主な購入品はスポーツウエアやドレスといった衣料品、口紅などの美容品だ。越境EC支援サービスのジグザグ(東京・渋谷)の仲里一義代表取締役は「一般の消費者が海外の商品を目にする機会が増えた。今後は安いものが伸びる」とみる。
>情報を入手する経路もSNS(交流サイト)の普及などで多様化している。低価格の日用品や衣類を扱う中国発祥のTemu(ティームー)やSHEIN(シーイン)といった事業者も相次ぎ日本に上陸し、選択肢が広がっている。
>個人が輸入する商品は革製品やニットなど一部を除き、価格1万6666円以下なら消費税や関税がかからない。送料などを考慮しても割安な選択肢となることがある。
>こうした免税の仕組みは日本に限らず多くの国・地域が採用してきた。税関の手続きを簡素にして物流を活発にするためだ。
>問題は例外であるはずの免税取引の急拡大が経済をゆがめかねないことだ。日本なら原則として10%の消費税がかかる国内産品が価格競争上、どうしても不利になる懸念がある。
>既に税制を見直した国・地域もある。欧州連合(EU)は21年から、日本の消費税にあたる付加価値税を少額の輸入でも課す仕組みにした。シンガポールは23年から免税枠を廃止した。中国などの商品が不公平に安価なまま大量に流れ込んでくることへの警戒感が背景にある。
>日本はどうか。EY税理士法人の岡田力パートナーは「ゆがみの排除には時間がかかる」とみる。
>まず税制が柔軟ではない。企業は2年前の売り上げ規模によって消費税の納税義務の有無が決まる。販売歴が浅い海外事業者には網をかけにくい。海外事業者に一律に課税するのも公平性を逆に損なう懸念がある。
>そもそも現状がどうなっているのかがあいまいだ。これまで少額の輸入は基本的に品目情報などを省略し、財務省の貿易統計にも反映してこなかった。国境を越えて宅配する小口貨物に関するデータは全体の許可件数しかない。何をどれだけ輸入しているか、通関や税務の当局さえ詳細が分からない。
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