ダイヤモンド・オンラインの「事項要求」をよく知らない、「専門家」の記事。
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師、清水克彦氏の記事です。
事実誤認が多く、基本的な事実が抑えられていない、よくある記事です。
防衛費の来年度予算はなぜ「特別扱い」なのか?大幅増額が不可避な理由
https://diamond.jp/articles/-/308481
>2022年度の防衛費は当初予算で5兆4000億円。GDP比は1%弱である。これを2%まで引き上げるとすれば、さらに5兆円が必要になる。今後5年で段階的に引き上げるとしても、毎年度、1兆円の上積みが必要になる。
まず、本予算と補正予算の一体化について全く述べていません。22年度の防衛予算は5.4兆円ではなく、昨年度の補正予算を加えれば6.3兆円程度になっています。
これは防衛省のウエッブサイトでも掲載されています。岸田政権になって、それを堂々と謳うようになりました。そのこともご存知ないようです。
ある意味政府と記者クラブの合作の世論操作が効いているということでしょう。
https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2021/yosan_20211126.pdf
>現在、国民1人当たりの防衛費は約4万円だ。アメリカの国防費が国民1人当たり約21万円というのは別格としても、イギリス、フランス、ドイツなどの半分以下だ。
>防衛費増額を批判する野党議員や有識者の考え方もわからなくはないが、中国が国防予算に年間26兆円も充てていることなども考慮すれば、「巨大地震に備えるのと同様に、巨大な中国に備えるべき」と言わざるを得ない。
中国の軍事費は全部日本を向いていると思われているようです。中国は台湾、インド、周囲には多くの国々があり、陸続の国も多く、しかもあまり友好的ではない国が多い。しかもウイグルなど、国内では多くの問題も抱えております。そして我が国には日米同盟があるわけです。そして中国はGDPの増大にあわせて軍事費を拡大しています。対して我が国のGDPはほとんど増えておらず、国家の負債は先の戦争末期と同じくらい拡大しています。二国の軍事費だけを比較するのは幼稚です。
>NATOと日本とではGDP比の算出方法にも違いがある。NATOの場合、退役軍人年金や日本の海上保安庁に相当する沿岸警備隊の経費、PKO(国連平和維持活動)への拠出金なども含んでの数字だが、日本はこれらを除外して計算している。日本もNATO基準で計算すれば、防衛費はGDP比で1.2%を超える。
この話は防衛関係の人間ならば昔から知っていた話です。だからといって、外国の国防省の予算がこれらをすべて含んでいるわけではない。どちらの基準で測るのか、昨年の選挙の段階では自民党はGDP2%を公約にしていたにもかからず、どちら基準を採用するのは決めていませんでした。ですからぼくは岸全防衛大臣に質問したのですが、大臣は答えられませんでした。こういう事実のほうが問題でしょう。
>もう一つ注目すべき点は、防衛費に関する今年の概算要求が従来とは異なる点だ。
>ところが今年は、防衛費については要求基準の金額を示さず、防衛省が必要な予算項目を提出する「事項要求」が認められた。
これは完全に事実誤認。「事項要求」は第二次安倍政権から使われ出した、概算要求を過小にみせるための胡乱な手口です。今年「はじめて」ではありません。
防衛予算についてこれまでウオッチしていなかったことがよくわかります。
>「専守防衛」という縛りも効いている。極めて深刻な被害が生じてからいることが判明して初めて、自衛隊のサイバー防衛隊は反撃できる。これでは後手に回ってしまう。
これまた事実誤認サイバー部隊は反撃できません。そのような訓練すら行っていません。
こういう胡乱なこたつ記事を有名経済週刊誌の名前を関したニュースサイトで掲載するのはいかがなものかと思います。
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しております。
10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(上)
https://japan-indepth.jp/?p=63876
10式戦車は生き残れない(下)
https://japan-indepth.jp/?p=68931
■本日の市ヶ谷の噂■
岩田陸幕僚長時代、陸幕はカール・グスタフM4がすぐに生産が始まるのに、わざわざM3を採用したが、M3は現在オーダー残がある二カ国のユーザー調達が終われば生産が終了する。自衛隊の単年度契約ではラインの保持はされないので、入手不可能となり、またも無様を晒す可能性大、との噂。