日本の防衛産業の最大の問題点は政治も当局も防衛産業を「産業」であることを知らないこと。



防衛産業の「国有化」を可能に 異例の支援法案が衆院通過へ
https://digital.asahi.com/articles/ASR4X5W45R4XULFA00B.html?_requesturl=articles%2FASR4X5W45R4XULFA00B.html&pn=9

>岸田政権が掲げる防衛力の抜本的強化に向け、装備品の開発や生産基盤を強めるための法案が、5月9日にも衆院本会議で可決される見通しだ。法案にはさまざまな支援策が盛り込まれているが、なかでも目を引くのは、企業が経営に行き詰まった際の「国有化」だ。専門家からは「企業の救済が目的になりかねない」との懸念が出ている。

>法案をめぐる論戦の舞台は参院に移るが、議論は深まっていない。

>政府が異例とも言える支援に乗り出すのは、「防衛産業は防衛力そのもの」(浜田靖一防衛相)と考えているからだ。護衛艦や戦闘機などの装備品をつくる企業は、三菱重工業や川崎重工業、三菱電機などの下請けも含めると数千社あり、市場規模は約3兆円とされる。ただ、納入先が自衛隊に限られ、収益性の低さなどから撤退する企業が増えているという。

随分前から防衛産業振興の政策は行われてきました。それらが不発だったので、今回の話になったのでしょう。ですが、政治、行政、当事者の防衛産業ですら防衛産業を「産業」として認識してこなかった。

これが最大の問題点です。この認識がなければ単に弱体化した金食い虫の防衛産業に金をばら撒いて、終わりとなり、さらに防衛産業と国の衰退と促進するだけに終わります。
これは自殺行為です。

日本の防衛産業は防衛省しか顧客がいません。これは国営企業と同じですが、ソ連の国営企業は輸出をしていましたから、ソ連の国営企業以上に市場を知りません。
防衛大手ですら防衛部門は大抵数%です。経営者は撤退するといっても悶着が起こるので放置して問題先送りです。
そして部門の長は「産業」「商売」を知ることなく、ひたすら防衛省のいうなりにり、天下りを受けいれて事業を取ってくるだけ。子供がやってもできる話です。

「仕事」はしてきているが、「商売」をやったことがないわけです。しかも防衛省も自衛隊も商社がいるおかげで、直接外国と企業と付き合わないので、市場の厳しさや常識を知らない。頭がおかしいレベルの防衛省や自衛隊の言いたいことをなんとか翻訳して商売しているのが商社の仕事だと断言する商社マンは少なくありません。

つまり世間も商売も知らない連中が「産業」を立て直そうとしているわけです。

しかも防衛省は改革派を粛清してきました。その好例が現在防衛医大副校長の発地徹氏です。彼は本来防衛装備庁で辣腕を振るうはずが、某大物次官や主流派から疎まれて、南関東防衛局長、その次は函館税長、通常2年のポストがそれぞれ異例の3年でした。本来防衛省の税関長のポストは名古屋でしたが、彼が「悪さ」をしないように函館に島流ししたようです。そして現在の防衛医大副校長で定年となるでしょう。こういう改革派を潰しておいて、防衛産業の振興なんてできるわけがないでしょう。
現在の防衛装備庁の惨状がいかにひどいかがその証左です。


>自衛隊の任務に「不可欠な装備品」をつくる企業と認定されれば、AI(人工知能)など最新技術の導入による製造工程の効率化や、サイバーセキュリティー対策にかかる経費を国が負担する。2023年度当初予算に363億円を計上している。
>装備品の輸出を支援するために新たに基金をつくり、海外向けの仕様や性能に変更するための費用も助成する。こちらも23年度当初予算に400億円を計上済み。買い手が自衛隊だけという構造から脱却し、海外市場への進出を促す狙いだ。

こういうのも末子末梢のばらまきにすぎません。担当者が何かやらないわけにも行かないからやったふりをしているわけです。そもそも担当者にしても防衛産業が何かをしらない。象を見たこと無い人間に象を描けとか、ラーメン食ったことがない人間にラーメンつくってみろと言うようなものです。

>「国有化」は、こうした支援策を受けても経営難などで事業を続けられない企業への措置だ。国が土地や製造施設を買い取り、別の企業に運営を委託する。固定資産税や設備の維持費の負担を軽くして、装備品の生産を続けてもらう。
>ただ、支援の前提となる「任務に不可欠な装備品」の定義はあいまいだ。国が取得した施設はできるだけ早く他の企業に譲り渡すよう努めるとの規定もあるが、実効性は不透明だ。

そもそも前世紀からぼくが指摘してきたように小規模で不効率な防衛産業のメーカーの集約を行うべきでした。それが政治も行政も、当の防衛産業も無能だからできなかった。今の惨状はそういう無能の結果です。
例えば3社、5社あるメーカーを1社にすれば各社の仕事を維持するために細々と発注して調達期間を何倍にも引き伸ばして単価を高騰させる必要はない。ラインの維持費も人件費も合理化できる。子供にでも分かる道理です。

それを何十年も怠ってきた結果です。
事業規模が小さく、調達に何十年もかかれば利益の絶対額も少ないし、設備や従業員への投資もできない。最新の技術も得られない。

住友重機の性能も品質も低い機銃を何十年も市場価格の数倍から一桁多い金額で調達してきて、最後はバックレたわけですが、それはメーカーだけではなく、防衛省や経産省、行政も当事者意識と能力がなかったからです。

 法案に反対する共産の赤嶺政賢氏は27日の安保委で、「採算も効率も度外視して施設を買い取り、増強し、製造をさせる。究極の軍需産業支援にほかならない」と批判した。賛成に回った国民民主の斎藤アレックス氏も「経営が厳しくなればまずは補助し、それでもさらに厳しくなれば買い取ってあげるというのは、衰退の道のりだ」とクギを刺した。

野党の政治家は自民党の国防部会のセンセイ方よりなんぼかまともです。弱体化した産業に補助金つぎ込めば当事者意識と能力はますます希薄になります。農業がその好例でしょう。それを防衛産業でやろうとしている。興味がある政治家にはレクチャーしますから、ご一報ください。

>拓殖大の佐藤丙午(へいご)教授(安全保障論)は「『任務に不可欠だ』という説明の元に、不必要な設備や技術を残すことになりかねない。防衛産業の強化ではなく、救済が目的となる可能性がある」と指摘。「企業が撤退するにはそれなりの理由がある。撤退した企業の製造施設や技術を保護するためだけに税金が使われるなら問題だ」と話す。国有化した施設を運営する企業を支えるため、国による恣意(しい)的な発注が起きる懸念もあるとしている。(田嶋慶彦)

なんで日本の防衛産業が駄目か、その責任はどこにあるのか。まずそれを追求すべきです。金を掛けて今より更に不効率で無能になる防衛産業なるのであれば潰した方がいいです。世界の防衛産業は過当競争状態ですから、きちんとコンペをやれば適切な装備が適切な値段で調達できます。


■本日の市ヶ谷の噂
論文がゼロの防衛医大教授候補、木村幹彦一等空佐だが、防衛医科大は文科省の大学ではないため、教官陣は定期的(通常5年毎)の大学評価・学位授与機構による審査を受ける。この審査が令和5年5月末だが、この時期に教授を変えれば、審査対象から外れるので論文ゼロでもバレない。木村一佐は5年後に定年で次の候補者も同様にすれば大学評価機構に気付かれることなく、論文ゼロの教授が誕生するカラクリ、との噂。

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