ロスマック
AMVをポーランドがラインセンスしたロスマックの記事です。
2011年に取材したポーランドのMSPOの記事で、当時のままです。
ポーランド陸軍が採用したロスマックはパトリア社のAMV(Armored Modular Vehicle)を国営軍需コングロマリッドであるブーマー社がライセンス生産したものだ。ブーマー社はポーランド政府が策定した防衛産業再編プラン、「防衛産業構造改革2002-2005」に沿って2002年複数のメーカーを統合して設立された。事業は弾薬、小火器、・個人装備、エレクトロニクス、装甲車輛があり、18の子会社を有している。
ロスマック基本型の歩兵戦闘車には砲塔には30ミリ機関砲を搭載したイタリアのオトーメララ社のヒットファスト-30Pが採用されている。アフガニスタンに派遣されている部隊用には近代化が施されており、ロスマックM1Mと称されている。通常のロスマックのモジュラー装甲は薄い一種の空間装甲が採用されており、本装甲との間にはスポンジが挿入されている。対してロスマックM1Mは複合装甲が装備されているようで、14.5ミリロシアン弾に耐えられる。更に対RPGやミサイル用としてキネテック社が開発したネットアーマーが装着されている。スラット・アーマーより軽量である。
これはスラットアーマーの代わりにネットを張り巡らせたもので、結合部分には金属のキューブが装着されている。この装甲は昨年のユーロサトリで公開されたが、フランス軍のVBCIも採用しているものだ。また通常のロスマックが車内の内張に合板を使用しているのに対して、M1Mは内張厚さ1センチの鋼製の装甲と更に内側には、これまた厚さ1センチのスポールライナーが貼られている。
また状況把握システムも追加されている。これら生存性向上のための改良で重量が増加したので水陸両用機能が失われ、水上航行用の推進用プロペラは取り外されている。
今回装甲車輛関連のWZM社はロスマックの派生型として、105ミリ砲を搭載した火力支援型。ロスマックKTO MASを提案している。砲塔はベルギーのCMIインターナショナル社のCT-CVTM砲塔を搭載している。
これは陸自の機動戦闘車用にも検討された砲塔で、仰角が42度と大きく、市街戦にも向いている。交戦距離は最大5000メートルで、対戦車ミサイルを発射することも可能だ。副武装は7.62ミリ同軸機銃とルーフに12.7ミリ機銃が装備される。防御レベルは最大レベル5となっている。最大戦闘重量は26トンである。
また同社は同様にヒットファスト-30Pに対戦車ミサイル、PKK(イスラエルのラファール社のスパイクMRミサイル)を搭載したロスマックPKKを提案している。その他ロスマックのテクニカル偵察車輛、ロスマックTRVも展示されていた。これはロスマックを整備・修理するための車輛でそのための各種装備を搭載している。乗員は車長、操縦手と二名の技術兵となっている。武装は7.62ミリ機銃を装備するRWS(リモート・ウェポン・ステーション)、ZSMUを採用している。
ロスマック用の回収車も展示された。これはチェコのタトラ社の8輪装甲回収トラック、T815-7ZOR9Tである。これはHMHD(High Mobility Duty Recovery Vehicle )とも呼称される重装輪装甲車用の回収車輛である。大型クレーン、ドーザーなどを装備し、装甲化されたキャブはレベル2の防御力を有している。
ポーランドの大手装甲車輛メーカー、HSWは最新型の120ミリ自走迫撃砲システムを紹介していた。この120ミリ自走迫撃砲システムはSPM(Self –Propelled Mortar)ラック、と称されている。今回HSW社はこの自走迫撃砲システムをポーランド陸軍の主力装甲車であるロスマック8輪装甲車(後述)に搭載して展示した。これはロスマック・ラックと呼ばれる。
迫撃砲は後装填式で、メーカーは世界初の完全自動装填式の自走迫撃砲システムであると説明している。 発射速度は毎分8発、最大射程は12キロとなっている。携行弾数は砲塔内部の自動装填装置のマガジンに24発、車体後部に40発の、計64発の砲弾を収納している。最新型の火器管制装置がナビゲーションシステム、GPS、BMS(バトルマネジメントシステム)と統合されており、ネットワーク化されている。また砲塔には前後に角度を変えて三つの各一箇所づつ、左右に各ひとつづつの計8個のビデオカメラが装備されており、360度の状況把握を可能としている。
砲塔の防御レベルはNATO規格のレベル1である。また昼夜兼用の光学サイトを有しており、直接照準による射撃も可能となっている。ポーランド陸軍ではこのシステムをクラブの車体に搭載したものを採用した。同社は155ミリ自走榴弾砲、クラブも製造している。クラブはBAEシステムズのAS90の砲塔を自社製の車体に搭載したものだ。この車体はPT-91のものをベースに開発されたもので、UPG-NGと呼ばれており、重火器などのプラットフォームなどとして輸出用にも提案されている。
ポーランド陸軍では120ミリ自走迫撃砲は砲兵の所属となっており、歩兵は60ミリ迫撃砲などより小口径の迫撃砲を運用している。120ミリ自走迫撃砲は中隊で運用され、通常砲兵旅団あるいは機甲旅団に属する。一個中隊には3個小隊があり、各小隊にはクラブの車体をベースに開発された指揮通信車一輛と自走迫撃砲4輛で構成されている。その他中隊には本部用に2輛の指揮通信車、砲兵偵察小隊に3輛の4輪装甲車、弾薬車、修理・回収車が各一輛所属している。
同社は陸軍にこの装輪タイプも提案している。合わせてロスマックベースの指揮通信車も提案している。これにより中隊の多くの車輛が同一車種のファミリーとなるので兵站上負担が少ない。
当然ながら、輸出も視野に入れている。なお価格は明らかにされてはいないが、フィンランドのパトリア社のNEOやAMOSなどの自走迫撃砲システムより安価であるとのことだ。120ミリの自走迫撃砲は歩兵に属するべきか、砲兵に属するべきか議論のあるところだが、筆者はシステム複雑さ(つまり整備や訓練の負担)や、弾薬の補給などの面から砲兵に属するほうが有利ではないだろうか。牽引式の120ミリ迫撃砲も砲兵が運用している国も少なくない。都市部に人口が集中し、大規模な野戦よりもゲリラコマンドウ戦(特に都市部)が想定される我が国の場合、副次被害を考慮すれば普通科に120ミリ迫撃砲を配備していることを再考すべきだろう。
普通科は120ミリ迫撃砲を廃し、81ミリに加えて60ミリ迫撃砲など運用(合わせてその自走化)検討してはどうだろうか。昨今はこれらの小口径の迫撃砲も射程が伸びたり、より強力な弾薬も開発されている。また120ミリに比べて部隊の兵站の負担も小さいというメリットもある。
◯最後の120ミリ迫撃砲のくだりですが、皆さんご存知のように陸自はこの方式に移行しました。
●東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
防衛省の「次期装輪装甲車」決定に見た調達の欠陥
体系的に進められず問題意識なき前例踏襲が続く
https://toyokeizai.net/articles/-/640971
●Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
軍拡政策はアベノミクスが失敗だったから
https://japan-indepth.jp/?p=71966
●European Security & Defence 誌に以下の記事を寄稿しました。
The Sun Sets on Japan’s Defence Industry
https://euro-sd.com/2022/12/articles/28449/the-sun-sets-on-japans-defence-industry/
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■本日の市ケ谷の噂■
12月20日、防衛省隣のグランドヒル市ヶ谷で令和4年度 防衛医学研究センター発表会
防衛医学研究センター25周年記念シンポジウムが行われたが、■本日の市ケ谷の噂■に取り上げられるのを恐れて、
部内メンバーと招待者のみのクローズな会になって、何のための発表会かと失笑を買った、との噂。
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