3年前に公開されたMCVのクーラー追加情報をスクープであるかのように報じる沖縄タイムス

3年前に公開されたMCVのクーラー追加情報をスクープであるかのように報じる沖縄タイムス

「自衛官の健康面で問題」 暑い沖縄に展開想定される16式機動戦闘車 一部に空調装置
を搭載へ 沖縄タイムス
 https://news.yahoo.co.jp/articles/7e283e211e00302b893cab90ebb3bf3d786cebda

>浜田靖一防衛相は25日の参院外交防衛委員会で、2023年度から、陸上自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)の一部に空調装置を新たに搭載すると明らかにした。有事などにMCVの展開先として想定される沖縄など南西諸島は、時期によっては気温が高くなるため、隊員の健康影響を考慮した。高良鉄美氏(無所属)に答えた。

>浜田氏は、17年度から19年度に配備されたMCVに空調装置はなかったと説明。 MCVは航空機で運べる機動性に優れていて、空自のC2輸送機による空輸の観点から「重量増となる空調装置は搭載していなかった」と理由を述べた。
>一方、展開が予想される南西地域での隊員の健康問題に着目し、20年度からは「空輸に
問題ない形で装置を搭載したMCVを配備している」と答弁した。

>高良氏は「自衛官の健康面などで問題だ」とした上で「戦争があってはならないが、空
調がない車両は使えない兵器ということになる」と指摘した。

 16式に途中からエアコンが入ったのは、ぼくが3年前に報じてます。書いた記者もデスクも知らなかったのでしょう。記者会見でも何度も質問しているのですがね。

 自衛隊装甲車「エアコン装備が後れすぎ」の面妖
旧日本軍と同様「根性」依存のままでいいのか
https://toyokeizai.net/articles/-/370426

>2016年に採用された16式機動戦闘車にもエアコンは装備されていなかったが、財務省からの強い要望によって本年度から調達される車両はエアコンが装備されるようになった。あわせて大日本印刷が開発した断熱材が内張りに採用されてエアコンの効率を高めている。

>財務省というとコストカットばかり要求するイメージがあるが、ケチって使えない装備を調達するよりも、多少コストがかかってもまともな装備を調達してほしいと考えている。自衛隊よりもむしろ財務省のほうが軍事的な整合性に沿った決断をするように思えてならない。
>一方で、既存の16式にはエアコンが装備されるかどうかは現時点では決定されていない。普通の軍隊ならば新規調達にあわせて既存車両にもエアコンを取り付けるだろう。それとも夏場には既存の16式は使わないのだろうか。

3月のDSEIジャパンできいたところ、既存の16式にも順次クーラーが搭載されるようです。
 
問題は以下の記述です。

 MCVは航空機で運べる機動性に優れていて、空自のC2輸送機による空輸の観点から「重量増となる空調装置は搭載していなかった」と理由を述べた。
>一方、展開が予想される南西地域での隊員の健康問題に着目し、20年度からは「空輸に
問題ない形で装置を搭載したMCVを配備している」と答弁した。
 
 これ本当なのでしょうかね。多分嘘です。
16式MCVは開発当初から島嶼防衛で使用することを前提としていました。それで「空輸」も必要だといっていたのでしょう。それでクーラーが無いというのは大問題ですよ。大臣の答弁が事実であれば陸幕も装備庁も無能の集まりということです。
 以前から申し上げていたように、90ミリや76ミリ砲を搭載して、ファミリー化した車両であれば、戦闘重量を下げられました。そして防衛省の説明によれば、MCVは敵の装甲車、せいぜい軽戦車までを撃破する、あとは普通科の火力支援が任務であるといっています。105ミリ砲はオーバーキルです。105ミリ砲を載せたために、本来必要な装備を削ったことになります。

 そして105ミリ砲は弾薬も重たくかさばります。当然輸送機で空輸するのは大変です。
平坦面での負担が大きい。105ミリ砲弾も徹甲弾だけではなく榴弾なども必要です。
南ア陸軍が偵察装甲車ロイカットを導入した際に、76ミリ砲を採用したのは何故か。それは105ミリ砲の反動をマネジメントするのが大変だったということもありますが、サブサハラの戦域環境では76ミリで十分であり、また実戦ではより多くの弾薬があった方が有利だし、アンゴラ侵攻など長駆しての戦争を維持すためには兵站を最低限に抑える必要があったからです。果たして陸幕や装備庁にそのようなことを想定した人間がいたでしょうか。単に装輪戦車作りたかっただけじゃないでしょうか。
更に申せば当初陸幕は道路法の政令内の規制内の横幅2・5メートル以下でMCVを作らせようとしました。まともな装備の知識があればこれは無理だと分かる話です。法令内で楽に仕事を終わらせたかったのでしょう。これが機甲科OBや三菱重工から猛反発があって3メートルに拡大されました。
これまた何度も申し上げておりますが、政令での例外規定がありこれを使えば2.5メートル以下にする必要はなかった。ところがそれが面倒くさいからと96式APCも2.5メートル以下にされて、能力は低くなって不整地で走行できないほどのクズになりました。MCVもその轍を踏むところでした。

陸幕に装備開発能力なんぞありません。

そもそも南西地域の有事でC-2でMCVの空輸なんてファンタジーです。C-2は22機しかない。そしてMCV1両を運ぶのであれば、支援車両など含み最低もう一機、都合2機のC-2が必要です。有事は兵員や食料、弾薬、水、衣料品、トラック、消耗品などを空輸する必要があり、空自の貧弱な空輸能力でMCVや19式自走砲などを空輸することはできません。にも関わらず、C-2での空輸を前提した空想的な開発を行ったので、19式もキャブを3人用にして、装填手2名は車体真ん中のホロの席にすわるという間抜けなデザインになり、NBCシステム、RWSはおろか12.7ミリ機銃も搭載されませんでした。

RWSに関してはMCVも同じです。常識的に考えれば兵器の性能向上や環境変化によって装備や装甲が追加されることは当然の話です。浜田大臣の説明が事実であれば、陸幕も装備庁もそんなことは全く考えていなかった、ということにります。

以前冗談半分でいったのですが、MCVよりも南ア陸軍の旧式の小型装甲車、エラントの方が島嶼防衛では余程有用だといいました。これは「意識が高い軍おた」さんたちから批判さましたが、事実です。

機動戦闘車よりも骨董品のエラント装甲車の方がマシなんじゃないの?
https://kiyotani.seesaa.net/article/201312article_4.html

エラントは仏パナールのAMLの改良型でより車体が大きくなり、最新型ではディーゼルエンジンが採用されています。

 エラントは4輪の軽装甲車で砲塔を有しており、90ミリ砲を搭載したエラント90と、60ミリ後装迫撃砲を装備したエラント60があります。20ミリ機関砲を搭載したエラント20も若干製造されました。
 
 重量は6トンですから、ヘリで余裕で空輸できます。ですから事実上LCACでしか運べない機動戦闘車よりも島嶼防衛では有利です。

 当然ながら弾薬も軽いので輸送、特に空輸が楽です。同じ重量ならば105ミリ砲弾より、より多くの弾薬が運べます。これは島嶼防衛では大変有利です。
 ぶっちゃけた話、現場に存在しない新型装甲車、運べても弾薬がないものよりも、現場に運べて弾薬もある装甲車の方がいいに決まっているでしょう。

 政治家はもっと装備調達に目を配るべきだと思います。自民党の国防族も防衛省や自衛隊のAVやフランス書院の小説並みのファンタジー聞いて、いい気持になっている人たちが大半でしょう。真面目に「専門家に騙されない」程度の勉強をして欲しいものです。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自隊員用に個人携行救急品は15万9千セット調達されたが、推定4万セットの近接戦闘部隊用以外は、包帯状止血剤は20cm四方の「ティッシュペーパー」と呼ばれる止血効果の乏しいもののまま。救命止血帯CAT2本も旧式で、しかも帯の端の標示を施していない改悪された「陸上自衛隊モデル」。その上 耐用年数が過ぎているためプラスチック部品が破損する恐れがあり、他国では使用が禁止されているものを装備、無敵皇軍同様の人名軽視、との噂。

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