日本の防衛コングロマリッドは白日夢。その2
日本の防衛コングロマリッドは白日夢。その2
日経で防衛専業メーカーの可能性についた記事が掲載されています。
前回も書きましたが、ぼくが2005年に東京財団の委託による政策提言を発表してから幾星霜です。やっと大手経済メディアがこういう記事を書くようになったかとある意味感慨深いです。
東京財団委託政策提言
「国営防衛装備調達株式会社を設立せよ」
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2005/01023/pdf/0001.pdf
日の丸「防衛専業」企業 実現へ統合という選択肢
編集委員 高坂哲郎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1042G0Q3A410C2000000/
>M&A(合併・買収)を手掛ける企業の人物が日本政府の防衛政策のキーパーソンに探りを入れる場面もあったと聞いた。今回は、前回触れなかった点を中心に再考する。
>「防衛企業再編をめぐっては、日本は米欧に比べ30年遅れだ」――。数十年にわたり日本の防衛企業に関わってきた元政府幹部はこう指摘する。冷戦終結後、米欧諸国では防衛企業のM&Aが続いた一方、日本では個々の兼業メーカーの内部に囲い込まれる形で防衛装備品の製造部門が控えめに存在し、防衛省・自衛隊向けのビジネスを地道に続けてきた。ただ、防衛予算が厳しく制約され、高額な外国製兵器の調達も続いた結果、国内防衛産業は全体として衰弱してしまった。
引用コメントは正しいものの、記者の記述は残念です。海外で軍事産業や軍隊の取材経験がほとんどない人の通弊だと思います。想像でしか軍事産業を知らない。AVやフランス書院の小説を「教科書」にして3Dのおねいさんを語るようなものです。
「地道」ってなんですか?
売上が右肩下がりがわかっているのに、とりあずいままで通りに、天下り受け入れて、クズ装備を高値で売りつけて、責任は次の世代の経営者に押し付けることのことでしょうか。
高額な外国製兵器?オスプレイやグローバルホークのことでしょうか。本来必要ないこれらの装備を導入したのはNSCや官邸に巣食う連中です。それに対して防衛省も業界も唯々諾々と受け入れてきた。
更に申せばリーズナブルな性能とコストの外国製品でも高値で買うのは防衛省と自衛隊の
調達システムに問題があるからです。そして国産兵器は低性能、低品質、高コストです。ぼくは長年これを指摘して来ましたが日経がこういう分析はしてきませんでした。その能力がないからです。そら外国の防衛市場をろくに取材もせず、井の中の蛙である防衛省や産業界の話を鵜呑みにすればそうなるでしょう。
>各社が個別に持つ防衛部門を切り出し、会社の壁を越えて集約して強い専業企業をつくるのには、各社の防衛部門を企業会計面で「見える化」することが必要になる。まずは部門としての価値を明示することで、売り手が売りやすく、買い手も買いやすくするわけだ。従来、国内の防衛関係企業でこれをできていたのは造船部門だけだったとされる。実際、1995年以降の断続的な企業統合を経てジャパンマリンユナイテッド(JMU)が誕生している。
>先述の元政府幹部は、企業価値の「見える化」という環境整備を進めた上で、3社程度の「日の丸防衛専業企業」に集約する形をイメージする。
これも現状は絵に描いた餅です。通常の会計手法では設備などの資産が計算上高すぎて、それが障害になっています。それを無理して安価で提供すれば株主から追求されます。これは大手の幹部が切実に語っていました。
それを防ぐには、撤退するから引き取ってくれと頼むか、防衛省がそのメーカーから買わないと宣言することです。唯一の買い手がいなくなれば処分せざるを得ない。
造船が統合できたのは、造船が「本業」だからです。対してコマツの装甲車や砲弾、住友重機の機銃などは本業とほとんど関連がなく、本業とのシナジー効果が期待できません。これが大きく暗明を分けています。
まず防衛省だけではなく、国に防衛産業を分かっている人間をスカウトして採用して、その上で基本法みたないものをつくるべきです。商社やお雇外人いれるしかないでしょう。
ビジネス、なにそれ美味しいの?みたいな人たちばかりでやっても失敗は目に見えています。
今後ディーゼルエンジンも軍民問わず、統合が必要でしょう。良くも悪くもEVやHDVが主流になればディーゼルエンジンの需要は減ります。これは自動車だけではなく船舶も同じです。ですが日本ではメーカーは乱立して脆弱です。
ですが政府は当事者能力がないからなにもできないでしょう。
>戦闘機、戦車、水上艦、潜水艦などを手掛ける三菱重工業や、宇宙部門を手掛ける三菱電機など「三菱系」をまとめることで、陸海空装備の製造を担う仮称「日本防衛製造A社」を設ける。さらに潜水艦、輸送機などをつくる川崎重工業や飛行艇の新明和工業など非三菱系で、陸海空宇宙分野を手掛ける同「日本防衛製造B社」をつくる。3つ目として、日立製作所やNEC、富士通といった自衛隊の通信・電子機器などの各部門を、同「日本防衛通信電気」としてまとめる。
>集約に際しては、それぞれの企業が大切に育み守ってきた企業秘密の数々を新会社に供出する形となる。周到な秘密保全策を国が整備することも不可欠となる。
>今回紹介した企業集約案はあくまで元政府幹部の私案だ。官主導での再編に違和感を覚える向きも企業側にはあるだろう。ならば企業・市場側からの提案があってもよい。確かなことは、日本の防衛産業の再興に向けては今が文字通り最後の機会ということだ。これを逃せば防衛事業からの撤退が加速し、国内の防衛産業基盤は枯死し、国防そのものが立ち行かなくなる。
この方式をそのままやるとYS-11で失敗した日本航空機製造と同じ轍を踏むでしょう。それに人事にしても元の各社からの人間がたすき掛けでトップになるでしょう。ですからビジネスは総論賛成、各論反対で滞るでしょう。
そもそもMRJでコケた会社にそんな大層な変革ができるわけがないでしょう。
そういう経営能力とセンスがあればMRJは成功していました。
そして官の側もC-2やUS-2が軍用あるいは民間転用で販売できるみたいな与太話を平気で垂れ流してきました。それを検証する能力もなく
垂れ流してきたのが日経はじめとする「ビジネス媒体」です。
そして官の側にはビジネスがわかって経営ができる人材がいない。そういう日本の防衛を取り巻く問題、端的言えば防衛省も業界も防衛産業を「産業」として見てこなかった通弊を無視しています。恐らく記者はこの「元政府幹部」一人に聞いて、それを記事にまとめただけでしょう。
いやしくも日本を代表する経済メディアの記事としてはお粗末です。
■本日の市ヶ谷の噂■
防衛医大の別宮慎也防衛医大副校長、四ノ宮成祥校長、小林靖副校長、桑田成雄空幕首席衛生官、佐藤俊一防衛医学研究センター長らは木村幹彦を防衛大教授に推挙しているが、彼は該当の論文がゼロ、該当の発表もゼロ、博士課程の病理学(航空医学とは全くの分野違い)の論文が2つのみ。博士課程卒業後約20年学術活動なし。何か良からぬ裏があると勘ぐられても仕方がない状態。因みに防衛医大教授の相場は、専門分野の筆頭論文40程度が最低ラインだが自衛隊医官は部隊勤務では論文執筆が難しいとされ、温情で20程度の場合もあるが、ゼロは、歴史始まって以来、との噂。