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なぜ社労士が、判決文の原文を学ぶのか?【労働判例研究会2024 開講のご案内】

社会保険労務士の、荻生清高です。

自主研究会「労働判例研究会 Include九州2024」の、共同幹事を務めています。
熊本と鹿児島をはじめとする、九州の社労士が、労働判例の判決文の原文を読み、意見と知見を共有する研究会です。

熊本県社会保険労務士会の、特定社労士能力担保・ADR研修に端を発し、自主研究会として引き継いで2019年に発足し、今に至ります。労働法学者・熊本大学教授の紺屋博昭氏をファシリテーターに招き、弁護士やゲスト講師を迎えての対話形式の研究会を、毎月1回開講しています。

もうひとりの共同幹事・鹿児島の田中先生による、労働新聞での記事です。

本研究会では、今期・2024年度の参加募集を始めております。
鹿児島での6月例会・熊本での7月例会は、初回の方はそれぞれ無料で、体験受講できます。

第1回・6月例会は、滋賀県社会福祉協議会事件を取り上げます。



取り上げるのは、滋賀県社会福祉協議会事件。


今年度初回の6月例会では、滋賀県社会福祉協議会事件(最高裁第二小法廷 令和6年4月26日判決)を取り上げます。

4月に最高裁で下されたばかりの、最新の判例です。職種限定の労働契約、そして使用者の配置転換命令の可否について、注目したい重要判例です。

この裁判例を、最高裁はもちろん、地裁・高裁の判決文にさかのぼって読み、議論を深めます。

なお、熊本開催の7月例会(7月13日開催)は、これも4月に出た最新・重要の最高裁判決で、熊本の会社の案件でもある、協同組合グローブ事件(最高裁第三小法廷 令和6年4月16日判決)を扱います。

なぜ、判決文の要約ではなく、原文を読む研究会なのか?


社労士の仕事は、労働判例の原文を読まなくても、できるのは確かです。
そして、今回取り上げる、滋賀県社会協議会事件・最高裁判決も、判決が出てすぐ、多くの著名な労働弁護士が、各所で無料の解説記事・動画セミナーを公開しています。 

無料の解説情報で、事足りてしまう今、なぜあえて、判決文の原文を読むという、遠回りなことをするのか。
そしてなぜ、このような研究会が、7年余りも続いてきたのか。

判決文の原文には、事例のリアルが現れる。


SNSやブログ・無料動画での解説は、わかりやすいです。
一方で、短時間で読めること・わかりやすさと引き換えに、かなりの情報を取捨選択しています。

たとえばこちら。判決文に載った、タクシー会社の賃金規則の実物です。

(3) 上告人の就業規則の一部であるタクシー乗務員賃金規則(以下「本件賃金規則」という。)は、本採用されているタクシー乗務員の賃金につき、おおむね次のとおり定めていた。
ア 基本給として、1乗務(15時間30分)当たり1万2500円を支給する。
イ 服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)として、タクシーに乗務しないことにつき従業員に責任のない場合は1時間当たり1200円、責任のある場合は1時間当たり1000円を支給する。
ウ (ア) 割増金及び歩合給を求めるための対象額(以下「対象額A」という。)を、次のとおり算出する。
対象額A=(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53+(公出揚高-公出基礎控除額)×0.62
・・・

国際自動車事件(最高裁第三小法廷 平成29年2月28日判決)判決文より引用

タクシー会社で実際に使われた、就業規則・賃金規則の一部が、そのまま載っています。他社の就業規則の実物を見られる機会は、そう無いのではないでしょうか。

しかもこの部分は、裁判の争点となった部分。
ということは、この賃金規則の何が労使紛争につながったのか、それについて当事者・弁護士が主張して、その結果を裁判官が判定している。

 つまり判決文は、弁護士や裁判官、多くのプロが問題点を指摘し、添削した結果といえます。
また、当事者の主張や証拠のどれを、裁判官が評価し認めたのか。逆に、裁判所が却下した主張、証拠のどこに、問題があったのか。

これらの情報は、解説記事や動画の多くでは、カットされます。
特に、簡潔でわかりやすいまとめになるほど、カットされる部分は大きいです。

 この取捨選択される前の情報に、直接触れ、自らの手で取捨選択できること。紛争から判決に至るまでの、論理の過程を追えること。
しかも、他の社労士・弁護士の見解も参考にし、自らの「持論」を組み立てられること。 

判決文の原文を読む、当研究会の価値は、ここにあります。 


一次資料の重要さ:結論や要約だけを見ていては、わからないこともある。


どんな事実が起こり、それをどのように証拠として評価し、法律にあてはめ判決という結論を出したか。裁判官は事実や法律を、どのように解釈したか。

その論理立てを追って、はじめて見えてくるものがあります。

本研究会は、メンバーの数だけ、見解と結論があります。
自らの見解を、他者の見解と照らし合わせて、自らの「持論」に昇華させることができます。

今後、労働判例研究会の活かし方を、記事で明らかにしていきます。

  • 研修で「稼ぐ」方法

  • 情報を引き出し、業務に活かす「判決文の読み方」

 研究会への皆様のご参加、お待ち申し上げます。
ご連絡は、弊所へお知らせください。


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