実務に活かすための、判決文の読み方【労働判例研究会2024 開講のご案内】
社会保険労務士の、荻生清高です。
自主研究会「労働判例研究会 Include九州2024」の、共同幹事を務めています。
熊本と鹿児島をはじめとする、九州の社労士が、労働判例の判決文の原文を読み、意見と知見を共有する研究会です。
本研究会では、今期・2024年度の参加募集を始めております。
鹿児島での6月例会・熊本での7月例会は、初回の方は無料で体験受講できます。
体験受講では、今年4月に相次いだ、2つの最高裁判例を取り上げます。
6月・鹿児島例会は、滋賀県社会福祉協議会事件を取り上げます。7月の熊本例会は、協同組合グローブ事件です。
前者は職種限定の労働契約と使用者の配置転換命令の可否、後者は事業場外みなし労働時間制、いずれも労務管理の実務に関わる、最新の重要判例です。
どのような知見の共有がなされるか、ぜひご体験ください。
労働判例の判決文の、原文を読む研究会。
本研究会は、労働判例の判決文の原文を読みます。
判決文の原文は、大学の法学部で学んだ人は、慣れているかと思います。ただ、そうでない方で読んだことがある方は、ほとんどいないかもしれません。
今回の2つの最高裁判決は、判決文はシンプルですが、高裁・地裁の判決文までさかのぼると、かなりの分量になります。慣れない人は圧倒されるかもしれません。
今回は、判決文が少しでも親しみやすくなるよう、また判決文から多くの情報を引き出せる読み方を、紹介します。自己流ですが、よろしければおつきあいください。
判決文の読み方
判決文は、構成が決まっている。
判決文は、決まった構成に基づいて書かれます。つまり、構成を知れば、どこに何が書かれているかがわかります。
そして、内容の優先度がわかります。
代表的な構成は、以下の通りです。
主文
請求
事案の概要
前提事実
争点及びこれに関する当事者の主張
裁判所の判断
結論
まずは、全体を流し読みして、構成をつかむ。
判決文を読むときに、まず私がやっているのは、全体の構成をつかむことです。
使うのは蛍光ペン。色違いで数本用意します。
まずは全体の見出しだけを流し読みして、この見出しにマーカーを引いていきます。
判決文は、最初に全部を読まない。当事者の主張は最後に
構成をつかんだら、判決文を冒頭から読んでいきます。
ここでの目的は、全体の大まかな流れを知ること。そこまで精読はしません。この段階では、多少わからないところがあっても、そのまま最後まで読み進めます。
勝訴したのは、会社か労働者か
認められた請求の内容
原告の請求の内容(控訴、上告はその理由も)
事案の概要(どのような事件だったか)
前提事実(双方の当事者に争いの無い事実は何か)
争点は何か
裁判所の判断:裁判所が認定した事実の内容
裁判所の判断:争点に対する判断
裁判所の結論
ここでお気づきの方も、いらっしゃるかもしれませんが、「争点に対する両当事者の主張」の部分は、飛ばしてます。この段階ではまだ読みません。
一般的に、判決文で最も分量を占めるのが、両当事者の主張部分です。ここを後回しにすると、楽になるかと思います。
流れをつかんだら、裁判所の判断を精読する。
全体の流れをつかんだところで、裁判所の判断を精読します。
まずは認定事実。原告・被告双方から提出された証拠、および主張のうち、裁判所が事実として認定した内容が、認定事実として示されます。前半の前提事実と併せて、読んでおきます。
次に、争点に対する裁判所の判断です。ここが最重要。
基本的には、適用される法律または過去の最高裁判例を示し、これに事実をあてはめて判断する、という流れで進みます。まずは引用された法律や過去の裁判例に、マーカーを引いておきます。これはあとで調べます。
接続詞には特に注目します。当事者の主張を引用した後に、「しかしながら」という前置きで、主張を退けた判断を下します。この部分は注視しておく。
この調子で、判決文の最後、裁判所の結論まで読み進めます。
裁判所の判断を読んだら、原告・被告の主張へ戻る。
裁判所の判断まで読んだあとに、原告・被告の主張を読みます。
この順番で読むと、原告・被告の主張のうち、裁判所がどれを認定してどれを却下したかが、一目瞭然に理解できるようになります。
つまり、会社がとった労務管理の措置で、どれが裁判所に評価されたか、また争いの結果に何が影響したかが、明確になります。
また、労働者側に視点を移せば、会社の労務管理上の問題点を、どのように証拠や記録を示せば、請求を認めさせられるのかがわかります。
これが、社労士として紛争を未然に予防するための、労務管理をするにあたり、大いに参考になります。
独特な表現には、数をこなせば慣れる。
判決文は、独特な言い回しを含みます。一文も長いです。慣れないうちは読むのがきついかもしれません。
こればかりは、読み進めて慣れるほかないです。
ただ、数をこなしていくと、ある日突然ブレイクスルーします。
その日を楽しみにしつつ、修練を重ねましょう。
参加者の数だけ、結論が見られる。そして、持論を深められる研究会
本研究会は、参加者の議論や意見交換が、活発に展開されます。
正解はありません。他の参加者の意見や論考を照らし合わせ、自らの持論の精度を上げることができます。
生成AIが目覚ましい進歩を遂げています。一般論であれば、専門家である社労士と遜色がない回答を出すものもあります。
一般論だけで太刀打ちできなくなる世の中が、予想を上回る速さでやって来ようとしています。「持論」を持つことの重要さは、より増していると言えましょう。
そして。
当研究会では、望む人には、持論を発表できる場も与えられます。
発信メディアを持つ研究会。
当研究会のファシリテーターである紺屋教授は、雇用構築学研究所・研究主幹として、「ニューズレター」を編集・刊行しています。約20年の歴史を重ねる媒体です。
希望者には、こちらで裁判例評釈を発表することもできます。
しかも、論文として登録されるほか、国会図書館に所蔵されます。
例えばCiniiでエゴサーチしてみると、こんな感じです。
https://cir.nii.ac.jp/all?q=%E8%8D%BB%E7%94%9F%E6%B8%85%E9%AB%98
サムネ出ません(ToT
最も効果的な勉強法は、学んだ成果を発信すること。
なぜ、細々と論考の投稿を続けているのか。
結論から申しますと、発信こそが、最強の学びと自覚しています。
学んだ内容を、人に伝える過程で、より深く調べたり、エビデンスを確認したりします。その過程で、より理解が深まります。
しかも、発表した内容を再構成すれば、SNSやブログ、セミナーへの展開も可能です。
もちろん、本研究会は参加するだけでも、十分に学びを得られます。
ただ、学びを最大化するには、発表に取り組んでみても、よろしいかと思います。
皆様のご参加、お待ち申し上げます。
参加ご希望、または詳しい話をお聞きになりたい方は、こちらまでご連絡ください。
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