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2022年を動詞でふりかえる

いくつかの友人がふりかえりをしているのに触発されて、自分もやってみようかなと書き始めた。結果的に、後半になるにつれ、まだ言語化していないことがわーっとでてきた。もし読み物として期待しているなら、非常に長く読みづらいかも🙏ただ、「書くことは贈与すること/Writing is giving」の気持ちは忘れずに書いている。

0 感謝

まず全体として、私は自分の仕事が好きだ。毎日はたらいていて、楽しい。それを続けて、こうして一年を元気に終えられるのは、協働してきたパートナーたち、友人たち、ご縁のあったみなさんのおかげ。心からありがとうございます。

そのうちの一人について特筆しておきたい。地元・群馬で共に対話の実践をしてきた友人の野澤くるみさんだ。彼女は2022年1月11日に亡くなった(と聞いた)。友人たちと「くるみさんをしのぶ会」を前橋で行なった。それが2022年の始まりだった。

彼女が若者向けシェルターにいたときに、そこへ遊びにきた近所の小学生が、無邪気に彼女に質問をした場面を覚えている。「くるみちゃんの夢はなに?」。それに彼女はこう答えた。「裸足で地球の上を歩くこと」。私たちは彼女からいまも学び続けている。

そして、以下が今年の振り返りだ。今年の自分(たち)の仕事について7つの視点から捉えてみた。また、仕事の目的をすべて動詞で語ることにして、その部分を太字にした。

1 実践者/活動家として

・みんなの声で、新しい未来をつくる。
・より公平で持続可能な未来に向けて参加型でサービスデザインをする。そのプロセスを通じて、意味ある話し合いを呼びかけるリーダーたちとそのコミュニティを育む。
・これが自分の仕事の本筋で、新しい社会システムを創り出すための活動として仲間を誘い、つながりながら進めている。

・2021年はテーマが福祉と環境が多かったが、2022年は教育と政治の話が増えた。ともあれば、私たちは「ヒーロー型からホスト型へ」というパターンとはたらいているので、今後も特定のドメインにこだわらずにやっていくと思う。
・今年は以下のような取り組みを進めた。

■Art of Hosting 

参加型リーダーシップの稽古をする。3年ぶりに、対面での3泊4日の合宿トレーニングができた。
日本の実践者コミュニティが組織基盤をもち、その入口/道具箱/秘密基地となるWebページもオープンした。
・パートナー:国内外で実践する仲間たち

■どっさりラボ

「市民参加型の政策形成」を実践する地方議員をつなぐ。こちらは、マニフェスト大賞でエリア選抜になった(大賞はまた今度!)
・地方の政治や議会の仕組みのことを勉強しながら、日本各地で「市民の声をきいて政策をつくる」のに本気で挑んでいる地方議員さんたちを取材。短期間で15本ほどインタビュービデオを編集し、眠らずに働いたのはいい思い出で、体力がついた。
・パートナー:広田まゆみさん、日本各地の社会企業家的地方議員さんたち、一般社団法人サステナビリティダイアログ

■宇宙船地球号ミッション!

「こども中心」の学びの場をつくる。「地球が再生されるまでの300年間を宇宙船で生活をしないといけない。そんな危機を乗り越えるため、自分たちの宇宙船を考えよう!」そんな世界設定のもと、科学コミュニケーション、対話、デザイン思考などを2日間で横断的に体験を通じて学ぶ小学生向けゲーム型ワークショップ。
・「小学生向け」というのは実は誤解があって、このプログラムでは、まず大人が「しつけ・過干渉」をやめて、「見守り」を学び、その実践の場としてワークショップの運営にあたる。
・パートナー:一般社団法人サステナビリティダイアログ、各地の市民・NPO有志

■北海道未来セミナー

政策づくりのプロセスを公開する。どっさりラボをきっかけに、その目的に賛同して運営のサポートにあたっている。
・見た目は、月一回のオンラインセミナー。べてるの家の向谷地先生、こどもを中心としたまちづくりの木下勇先生など、先輩活動家の皆さんとのご縁をいただける貴重な機会。
・弊社のインターンの学生や若手が、自分の関心でセミナーを企画して、公共政策づくりの議論に乗せるという体験をさせていただいている。
・パートナー:広田まゆみ政務事務所

■高崎PTAセミナー

次の時代のPTAのあり方を探る。保護者が企画・運営する家庭教育セミナー企画・運営のサポートを行なった。やり方次第でPTAはもっと楽しくなる。
・パートナー:高崎PTA連合会、高井俊一郎さん

■ゲストハウス「ゲニウス・ロキが旅をした」

仕事・挑戦・食卓の3つを共有する場を地域につくる。
・「日常を旅する。旅するように暮らす」ためのゲストハウス。コミュニティ育成の観点から経営に関わっている。コロナで難しいこともあったけれど、ご近所にお住まいクリエイティブ業やフリーランスの方、音楽や服などのカルチャー、それらに興味がある学生やママたちを中心に、老若男女がコワーキング/イベントスペースとして日々楽しそうにしている。利用者がコミュニティとなって、自主的にイベントが立ち上がるなどが最近やっと起きてきて嬉しい。「閉じられた安全な居場所」ではなく、「ひかられた危険な場所」があれば、人はつながるし学ぶのだろう。
・パートナー:合同会社ロキ

2 コンサルタント

組織開発のディレクションをする戦略的なミーティングを設計する。これらはクライアントがいる仕事だ。主にワークアーツ合同会社の名義で、チームを組んで行う。企業、自治体、教育機関、NPOでの研修。

・この領域の仕事は多くが非公開だが、公開できるものを優先してきた。閉じられたシステムの個人同士ではなく、コミュニティーどうし・地域どうしがつながり、学び合う機会をつくりたいからだ。たとえば、北海道と沖縄の一部地域、群馬の農村と南米の一部地域など、課題構造が似ている地域は、お互いの存在がギフトになりやすい。こうしたインターローカルの活動をさらに増やして行きたい。

・そのために、ずっと変わらない方針として、以下のような取り組みを優先してお受けするようにしている。(1)エンドユーザー/生活者がおり、地域を舞台にしている。(2)プロセスがオープンで透明性の高いもの。(3)連続ではたらきかけることでコミュニティを育むもの

たとえば、以下がそうだ。

■えべつ観光協会

民間主導、地域ぐるみでの観光資源づくりを支えるネットワークをつくる
・パートナー:江別市、えべつ観光協会

■観光地域づくりパートナーズカレッジin富岡

地域の人々がほしい未来を描き、その実現に向けて自ら企画・協働していくネットワークをつくる
・Art of Hosting(のケイオディック・ステッピングストーンズ)を学ぶ「プチ大学」が裏コンセプト。地域に大学がなければ、自分たちでつくればいい。それをつくれるのだという実例を出していきたい。
・このカレッジという枠組みの中では、普段は一緒に仕事をしたり、暮らしている人たちが、「ここでは、同級生、学び手としている」という新しいアイデンティティを得ているように見える。
・パートナー:富岡市、富岡市観光協会

教育機関のビジョンの更新、大学と高校の統合での職員間のネットワークづくりも行った。株式会社たがやすとのチームアップにて。

・それ以外にも、今年は、いくつかの教育機関やNPOのほか、工学技術研究者、大学教授などが集うクローズドのセッションのモデレーター/ファシリテーターをさせていただく機会があった。

・これらのコンサルティング業務にあたる自分のゴールは「クビになること」だ。それも、なるべく早く。「あの人たちがいればいいミーティングができる/なんとかしてくれる」と、相手に思い込ませて、お客さまを囲っていくのは経済的には利があるかもしれない。
・でも、これは最も避けたいことの一つ。そうやって「ファシリテーションされ待ち」の人たちを生み出すことは、私たちにとっては、むしろ問題を増やすことだと捉えている。私は仕事を通じて、自己組織を通じて新しい秩序が創発し続ける社会の一部になりたい。森や海の中で自然と生物がずっとそうしてきているように。

3 コーチ

・自分のはたらきの専門は、ホールシステムアプローチだ。大規模の集団が持つ制約にはたらきかけることで、関係がより望ましいパターンへとシフトするように支援する
・それでも最近、個別相談をいただくことが増えた。どのようにリーダーとしての方針や政策をつくるか、あるいは、経営者としてどのように組織のメンバーとコミュニケーションをとっていくか。あるいは、リーダーが持っている「可能性を制限する思い込み」はなにか。こうした戦略立案や相談をいただく。これは最終的に、システムや環境へのはたらきかけが求められるため、以前より積極的にしている。

・以前より、というのは、実は以前も「個別相談」は多かった。しかし残念ながらお断りしたことがあった。すべて自分の力不足のために、自分をホストすることができていない方からの依頼が増えたからだ。たとえば、「自分に自信がなく、人からの何気ない言葉が自分への当てつけに聞こえてしまう」や「自分らしい働き方ってなにか」「とにかく聞いて欲しい(吐口を探している)」という種類の相談。こうした最終的に個人の価値観へと帰結していきたい方向の仕事にニーズがあることはわかったが、自分には向いていないようだ。

4 クリエーター/ハーベスター

・2022年は50本ほど、チームでワークショップ映像記録の撮影、編集を行なった。これは自主活動とクライアントワークが入り混じっている。

撮影の目的はこう。起きてほしいことではなく起きていることを残す正しいことではなく、ほんとうのことを克明に記録する。カメラを抱えて、普通では立ち入りづらい現場を駆けずり回る撮影は楽しい。私たちが狙って撮るのは、多くがワークショップやイベントで「人々が関わりあう」様子だ。いいことばかりを切り取ることはしない。子どもたちが泣いたり、人々が不機嫌に沈黙しているところも撮る。

全ての録画を見直し、タイミングと順番よく並べていく。全体として起こるべき意味の流れや、メッセージや智慧として、本人たちに返してみる。それによって、より意味のある話し合いが起こるように促進するのが、映像編集の目的だ。暗く残念なミーティングを、おしゃれな会議のように撮ったりはしない。

そして、私たちは、映像メディアの受け手の体験をデザインする。具体的には、私たちがつくった映像は、基本的に「みんなで見てから話す」ことにしている。撮影がワークショップの2回目だったなら、3回目の始まりに、その映像を皆で見て話す。問いはたとえば、「前回で、あなたの気持ちの中が動いたのはいつでしたか。どんな気持ちでしたか。何があったからそのように思ったのですか」。それをグループに分かれて、話してもらう。


・そもそも、その場で起きている現象に対して、カメラを向けること、そして、編集をして「アーカイブする」と言うのは、複雑な現実を、制作者の主観で切り取って返すことだ。それは、集団が状況に対して捉える意味と意思決定を変えてしまうかもしれない大きな責任のある行為だと思う。私たちは、その「記憶を残し、次につなぐ責任(そして自由)」をイベントの主催者、映像記録のつくり手が全て負わない道を探って行きたい。その責任を、みんなで共有できないかと思っている。そのために、できる限り「一緒に見た後に対話をすること」を前提に映像を作ろうとしている。
この仕事の目的を言い直せばこうなる。「撮られた人たちが、メタで自分たちを観察して、自分たちが置かれた状況に意味付けをし、集団としてより適切な意思決定がされることを助ける

・上記の制作活動に比べればふつう仕事として、「動画教材づくり」も、私たちの強みを発揮しやすいようだとわかった。これは、複雑な読み物を、要約してストーリーの動画にする。私たちのチームは、国語力(読解と要約)に長けている。たとえば、企業の決算内容、研究論文をブレイクダウンしてシリーズの要約動画にしたり、オンラインワークショップの案内を動画でつくるなども行っている。個人的には、コンテンツをわかりやすくするよりかは、受け手の理解力やリテラシーを上げていくことにより関心があるけれども、その両側から攻めていくんだろうな。

5 ジャーナリスト

・上記の考え方と関連して、来年は作家としての活動も少しずつ広げていきたい。ポジティブでスローなジャーナリズム活動。

・今目の前にある、残念なことに指をさすのに時間を使うのをやめて、その裏にある大切なことが十分に実現されたあとのこと、なんとかしたいことがなんとかなったあとのこと、そして、すばらしい可能性が開いたあとの話をするきっかけをつくりたい。あたらしい日常で、私たちはどんな風に働いたり、暮らしたりしているか。それを話したい。

・今あるものを批判するのは簡単だ。冷笑したり、諦めたり、「あれじゃあだめだ」とNOを言ったりするのもラクだ。では、なにがいいのか。YESと言えるものはなんなのか。全国を旅をしていると、自分の感覚では先駆的な現場と、そこで奮闘する人々に出会うことがある。だいたいその人たちのメッセージは複雑でわかりづらい。でも届けたい。
・こうした関心から、2020年から継続して取材をしている現場があり、来年2023年はいくつか自主制作のドキュメンタリー映画として公開することを目指している。

6 表現活動

・この活動には特定の目的はなく、好奇心だけがある。たとえば、身体と即興が好きでギターに触れていたけれど、友人の影響で、電子音楽にも関心を持ち始めた。頭で計算をしてプログラミングで音楽をつくったり、一切の自己主張なくただ目の前の人たちを気持ちよくするためにDJをするのは、全く違うスポーツをしているようで楽しい。来年はクラフトビールを飲みながら公園でDJとかやってみたい。

7 はたらき方

最後に、目的ではなく、自分に向けて掲げているプリンシパル(行動指針)もメモしておく。

ひとつは「友だちを楽しませること」だ。自分の専門はプロセスデザインなので、成果物がなかなか五感で知覚されづらいのは、ユニークではあるが、理解されづらいことから、悔しい思いをする事もあった。そこで自分を楽しませるために、最初はiPhoneで撮った映像を、手元で編集して友人に送りつけた。それで、びっくりさせたり、笑わせたりするのが嬉しかった。もっと面白くしたくて、工夫することを覚えていった。その根本は今も変わっていない。その延長で、この2年は映像の撮影と編集の仕事をすることになっていた。同じ動機で、最近は音楽や平面のデザインも面白いので、練習を続けようと思う。(2020年は「友達を勝たせること」だったので、少しは気持ちに余裕ができたのかもね)

もうひとつのプリンシパルのは「ニーズからはじめよ。流れに乗れ。お前を通じて、起こるべきことが起こるようにしろ/Start with your needs. Go with the flow. let it happen through you.」。これがあると、自分が誰かとか、自分は何をすべきかというつまらないエゴからくる問いから自由になれる。大河の目線からを必要な一滴を考え、行動することができる。そして結果的に、その一滴の価値を高めることができる。

来年の一つの目標は、はたらくチームやコミュニティとしての旗印や線を明らかにすることだと思う。全国津々浦々で、さまざまな思わぬ出会い・つながりの中で働くが、何度も現場をご一緒する仲間たちも増えてきた。彼らと共通の目的や行動原理を紡ぎ出していきたい。そんな輪の一つがWORKARTSというつながりだ。対話による組織づくりと、クリエイティブ制作を一貫してできることで、どんな可能性が開かれてきたか。個人ではふりかえりきれないので、それは来年の楽しみにしたい。

もちろん風に吹かれて、旅を続けていくので、きっとどこかであなたとも。お会いできるのを楽しみにしています。


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