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公務員をやめてローカルではたらくファシリテーターになった|2019年にした仕事のまとめ

反町です。生きてます。

私は2019年に、7年務めた群馬県庁を退職しまして、「ご近所系ファシリテーター」となりました。フリーランスをやって、その後、会社を立ち上げています。独立して1年。何をしてどう思ったかを書いておこうかと思います。自分の考え方の整理のために書くので、きっと長文ご容赦ください。

私のしごと

今私たちは、かつてないほど行き先の見えない複雑な社会を生きています。これまでどおりでは、幸せな暮らしが続きづらくなっています。気候変動、AI、人口減少、少子高齢化、貧富格差、都市一極集中。個人や組織、専門家が単独で解決できる問題はますます減っています。

そんな今こそ、これまではありえなかった社会の組み合わせにチャレンジをしていく個人や組織、地域こそが存在感を高め、力を発揮していく時代になっているのではないでしょうか。

しかし、他者との関わりは難しいものです。私たちは、立場・業種(ヨコ)や所得・世代(タテ)が異なる人と分断されています。もっとよく見ると、私たちはひとりひとり異なる考え方を持っていて、つまるところ、他者とはわかりあうことはできません。そういう孤独な世界に私たちは生きている。私はそう思っています。

さらに、その中でも、「中〜高程度の他者」とは、何をどう話していいのかわからない、そもそも出会う機会もない。しかも、表面的な話ではなく、本音で自分の大切なことを話すとなると、一層困難です。さらに残念なことに「わかりあえない他者の話をどう聞いて、どう話すか」という教育を、ほとんどの私たちが受けていません。

それでもなお、複雑な課題に取り組むためには、私たちは、コラボレーションをしなくてはなりません。そのために、連続のワークショップをやっています。

人のつながりを耕す対話 + 仕組みにはたらきかけるコラボレーションをうむ。

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SNSの友達登録数や顔見知りなど「どっちでもいいつながり」のは、今の社会で私たちを助けてくれません。

必要なのは、お互いのことを思いやったり、目的のために助け合える、あるいは、少なくとも孤立や排除がないように、つながりの質を耕していくことです。「友達100人できるかな」から「親友2人できるかな」と歌いたい。人間は、3人が本気でつながったら、驚くほど多くのことができるようになります。

ともあれ、よくある言葉で言うと、私は、地域の環境/福祉/SDGsをテーマに、共通の目的に向かって異業種・多世代が共にはたらく「対話と協働のチーム/コミュニティを育むことを仕事にしています。

そこには、言葉未満の想いをカタチにする言葉づくり(種のしごと)、関係づくり(土のしごと)があって、それについても今日書いてみます。

「なぜ地方なのか」は、話すと長いのでコチラ。

一年間どんな仕事をしたか

2019年は、大きなキャリーケースを引きずって、全国を周りました。福岡の海辺のビーチ、北海道の白銀の森林に、愛知の水辺の村、都内の大学の静かなキャンパスの中まで。

一見、孤独な旅路でしたが、たくさんの思いと一緒に、また友人や大切な人の表情を思い浮かべながら、とにかく現場を歩きました。

学びのハイライトは、複雑系のファシリテーションを学ぶArt of hosting長柄、札幌と2回のトレーニングです。このことについて感謝と、個人名を挙げ始めるとキリがありません。

ただその中でも、南山大学の中村和彦先生(かずさん)、カナダの実践者であるクリス・コリガン/ケイトリンフロスト夫妻、そして、そのホストチームの皆さんには深謝。2ヶ月に渡る「ジャパンツアー」は、控えめに言って、人生を変えるような経験でした。

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クリスとかずさん。ギタリストとして友だちになった

こちらは南山大学の活動紹介ブックレット。17ページにこの時の記事があります。

組織向けの仕事|ワークショップ・土のしごと

多くは、公務員時代に現場でつながったご縁でのお仕事でした。

一番長く関わったのは、札幌市の「みんなの気候変動ゼミ・ワークショップ」でした。ここではファシリテーターを務め、ブログ連載企画と、動画を作りました。札幌市から報告書も出ております。

群馬にいる無名な人を呼ぶのは、面倒極まりないことだったと思います。それにもかからず、私を呼んでくれた牧原ゆりえさん、佐竹輝洋さん。どのような言葉でもこの感謝を表現するのに足りない感じがします。

東京大学、文部科学省との仕事はシビれました。科学の知見を、生活の中に届けること。森川先生、そのご縁をいただいた伊勢崎市役所の岡田さんには頭が上がりません。

ただ、このプロジェクトのMVPは、森川さんの無茶ぶりに耐えた、森川ゼミ・ガールズかと。みんな元気かなあ。まあ超優秀だからね、1ミリも心配がない。


JICA、自然塾寺子屋さんと行った研修プログラムでは、日本よりも圧倒的に若い国に住む南米の友人が来日。彼らとの関わりは、ほんとうに刺激になりました。キラキラした目で、「自分が動くことで、社会は変わる」と素直に本気で信じる若者たちがいる。

そして、同じことを信じるモーレツな女将さんたちもいました。JRの仕事で、深谷の中心市街地は、北関東のラテンだとわかった。人の熱感は、なにかを根本的に変える力がある。

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いずれも、ファシリテーターとして、異なる事情を持った人・組織どうしの間に立ってきました。

その仕事の9割は、準備。普段なら言いづらいことまでとにかく聞く。個別相談、事前調整、打ち合わせ、チームを育てること。そして、人前で話す勇気を持てるように自分を奮い立たせること。

そして、残りの1割は、ワークショップとレクチャーです。ついワークショップが目立つのでしょうか、ある日飲み屋で、「反町くん、今日は模造紙とフセン持ってないの」とからかわれたのが嬉しかった。

ワークショップでは、予定された着地点へ誘導するのではなく、参加者ひとりひとりが声を上げ、互いに聞き合うことで、話す前にはなかった選択肢が現れるような「器」をつくるということに、こだわりを持ってきました。

また、「私がいなければ、きっとこぼれていたであろう小さな視点に光を当てること」や、「一度飲み込んでしまった言葉のとなりに、辛抱強くいつづけること」に、誇りを持って取り組みました。

それでも至らぬことばかりですが、「社会のさまざまな立場の事情が、実感レベルで分かる」「理論と実践を行き来できる」「やさしい磁場ができる」などが、私の強みだと教えてもらったことが嬉しかった。


公務員向けウェブメディアに寄稿。これは評判がよい記事でした。


2019年は、ねいくんとかなり仕事しました。各地を回ったな〜。まさに旅仲間。ありがとう。

個人向けの仕事|対話のパートナー・種のしごと

なにかの拍子で、個人の「したいこと」が、「ひとりでできること」を超えてしまう時があります。そして、その想いが大きいほど、なかなか自分だけで言葉に落とし込むことが難しい。夢を持つ人は孤独です。

したいことが「カレー食べたい」ならさっさと自分ですればいいのですが、人間関係、組織、社会など、複雑な関係の中で起きていることは、想いを言葉にして、助けを求めることが必要です。そんな友人たちが、周りを巻き込めるような想いの言語化をサポートをしてきました。その仕事のことを、対話のパートナー(コーチ)と呼んでいます。名前はなんであれ、友だちの役に立つのが嬉しかったのです。

たとえば、組織内の関係で悩む友人が、肩書きではなく、人として正々堂々と「わかりあえない人」と困難なコミュニケーションを立ち上げることに挑んだこと。その結果、「事態が少しづつ改善しつつある」と聞いたときは、「やったー!」でした。

また、そこで練り上げた言葉をもとに、クラウドファウンディングを組み、期間中にオンラインイベントを打つことでサポーター同士の横のつながりをつくったりもできますね。それは今後もっとしていきたいことです。

そんな仕事に気づかせてくれたのは、江別市のゲストハウス「ゲニウス・ロキが旅をした」。気づいたら運営メンバーにも加えていただきました。盟友・堀さんとの出会いにも感謝です。


これらの仕事は、私が勇気をもらうことが多いと感じています。希望を持ちづらい社会だけれども、希望について語ることを諦めなくていい。全ての願いが叶うわけではないけれども、願うことを諦めなくていい。

ぜひ引き続き、ご一緒させてください。あたらしい相談もお待ちしています。

私のお金の使い道|群馬でのラボプロジェクト

ありがたくお預かりしたお金をどう使ったかも書いておきます。

まず、私の生活は、固定費を下げまくって、とても質素にしました。一番好きなのは、自宅の庭で育てている大葉orバジルに、梅干しを混ぜた納豆。見た目は終末感がありますが、おいしいですよ。旅先では、いろいろ工夫します(話すと長い)。

そうして節約したお金は、ほとんど、地元・群馬県での自主プロジェクトに使いました。

■福業サミット

群馬県でサスティナビリティに貢献する仕事をする人をつなごうとした「福業サミット」。媚びない姿勢をとったのと、私のスキルのなさで、少なからぬ人の酷評や冷笑をいただき、反省することが多いです。ただ、そうしなければ出会えなかった仲間とのつながり、そして、痛みを伴った学びを誇りに思って、後悔はしていません。「あの時のあの感じを再現する/避ける」などと、一緒になって指をさせる共通体験ができたのが、かけがえないです。

なお、この取組について、二人のライターが書いてくれた次の2つの記事は傑作だと思います。西さん、ねいくんありがとう。


■ちか旅

ぐっと敷居を下げて、週末ローカル旅プロジェクト「ちか旅」

近くにいるけど関係が遠い人とランダムに出会い、その人生のストーリーを聞く。そういったリアル/オンラインでの「心の移動」を、旅だと言って、学びの遊び化を試みました。

ここでは、専門的な言葉を使うのをやめてみました。いつかどこか誰かのために勉強することでは、頭でっかちになるだけで、モチベーションは持続しづらい。「良薬口に苦し」と言えども、毎日飲むなら、美味しいものがいい。

だから、「行為そのものが楽しい」ようになるといいなと思って、デザインをしました。一種のゲーミフィケーション(ゲーム化)ですね。遊びを入口にして、「ストーリーを語る」「人の話を、沈黙まで含めてじっと聞く」ということを、地域の生活実践の中に組み込もうとしました。

その甲斐あって、社会・地域における多様な人々の信頼関係や結びつきの改善を実感できました。これは、いわば「ご近所という生態系の復元」だと思っています。異質性と同質性、遠く(ネット)と近く(近所)の四象限でいうと、「異質性×近く」の関係性が取り残されていると思ったから。

ありていにいうと、近所のともだちに、普段話さないような属性の、本音で話せるともだちが増えたのが嬉しかった。そこからは、思ってもみない展開が続いています。

最後に、いろいろな人と話していると、こう感じることがあります。

「この話はどこかで聞いたな…。」それが、北海道であれ、沖縄であれ、コスタリカであれ群馬であれ。思うに、「人の夢は、決して一人のものではなく、つながっている」。

あなたが持っている夢は、あなただけのものではない。しかし、それに見つかったのが、あなただった。その夢は、あなたを通じて実現したがっているのだと思うのです。もちろんそれに応えるかは、あなたの自由です。この夢は一人で叶えなくていいな、言葉にしてこの世界に現してみるか。そんな時にお声かけいただければ幸いです。

二年目の反町もよろしくお願いします。

夏が近づいていますね。いい一日をお過ごしください。

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なお、表紙の写真は、福岡市の柳橋連合市場

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カラフルで風通しの良い市場の中に、元気なおじいちゃんおばあちゃんの声が響いていました。手渡しでいただいた練り物が最高においしかったなあ。あの時の、やけに人懐っこい空気の手触り、次の曲がり角の先に何があるのかと思わせる胸の高鳴りが忘れがたいです。







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