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歌舞伎町での大どんでん返し

東京に来たばかりのころ、悪友X氏と歌舞伎町で飲んだ。
歌舞伎町で飲んだ理由は、そのあと、お姉さん系のお店に行きたかったからだ。2000年代初頭から始まった歌舞伎町浄化作戦のお陰で、すっかりそういうお店は減ったが、当時はそういうお店がたくさんあったのだ。
X氏も私同様、地方出身者であり、「歌舞伎町でお姉さん系のお店に行く」ことに強い憧れを持っていたのだ。
(大事な注:お姉さんが隣についてくれるだけで、それ以上のサービスがあるお店に行こうとしていた訳ではない。いったい何に憧れていたんだろう?)
(さらに大事な注:X氏の名誉のために、特定されないように書く。しかし、最後まで読んでいただければわかるが、決して彼にとって不名誉な話ではない)

一杯飲んだ後、我々の知っている店があるわけではないので、二人でぶらぶらして歌舞伎町を冷やかして回った。呼び込みのお兄さんがわんさか寄ってきて、「●分で●円ぽっきり!」とか「かわいい子いますよ」とか言われ、それだけで十分に楽しかった。
いっちょ前に条件交渉とかやっちゃったりして、大幅な譲歩を勝ち取って、意気揚々とそのお店に入店した。もうその過程が面白くて楽しくて、非常に盛り上がった。若いときは、そんなものである。
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入って、席についたところで、お姉さんが現れた。
「はい、サイフだして、有り金だして」「ないならカードだして」といきなり言い出した。
最初、何が何だかわからなかったが、即座にこれがいわゆるぼったくりであると気づいた。当時の私にはなかなかの痛い金額だったが、キャッシュを全額、カードで数万円を払って、私はさっさとお店を出た。

向かいのファミリーマートでX氏を待っていたところ、憤懣やるかたなしという表情で出てきた。今でもその表情を覚えている。
聞くと、なんと彼はあの状態で抵抗したという。
「これは不当だ、絶対払わない」と言い張ったという。当然、筋骨隆々の怖いお兄さんが出てきて、「歌舞伎町をなめんな!!!」と怒鳴られた。それでも彼は(私から見れば)相当な抵抗をしたが、結局数万円の金額をカードで払わされ、出てきた。

「マジか!ようやるなあ。もうこんなところイヤやから、さっさと帰ろうや」などと話したところ、ある二人組に「ちょっと、兄さんたち」と話しかけられた。
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「兄さんら、ぼったくられたのか?」と聞いて来た。
私は、完全に人間不信に陥っていたので、「いや、何でもないです」と言ってその場を去ろうとした。しかしX氏は、何かを感じたのか、事情を詳しく話した。
その二人組は、一人が偉そうで、もう一人は明らかに部下、おつきの人に見えた。その偉そうなほうが、「わかった。最近、行儀の悪い店があるから、見回っているんだ。ついてこい。返金させてやる」という。
私は、人間不信に陥っていたので、X氏の袖を引いて、「やめとけって。危ないって。またやられるで」と言っていたが、X氏は意を決したように、「俺行きます」といった。
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再び、ファミリーマートで彼を待っていたところ、須臾ののち、彼と二人組が出てきた。なんと、カードの記録を取り消してくれたとのこと。

聞くと、その偉そうな人が店に入ると、店員が総立ちになって、彼に敬礼をした。「この兄ちゃん、ウチのオヤジの知り合いの息子なんだ。今回は勘弁してやってくれ」と言ったところ、取り消してくれた。彼は心の中で快哉を叫んだようである。そりゃそうだ。
X氏は、彼の伝票のとなりにあった私の伝票を指して、「これも取り消してやってくれ」と言ったが、その偉い方の人に、さすがにそれはダメと言われた。という話だった。
結果、X氏のみ返金され、私はぼったくられたままになった。

いったい何だったんだ。
狐につままれたような、大どんでん返し話である。
「こんなことってあんねんなー、東京は底が深いなー」と言い言いしながら、帰った。
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以上で、私のぼったくられ話は終わりである。ディテールにもっと面白い話があるのだが、この程度にしておく。
このエピソードから分かる通り、X氏はなかなかの胆力、決断力の持ち主である。人物を見極める力もある。今はどうやら大手企業の幹部社員になっているようである。

私のエッセイの熱心な読者は、どうせこれは島田紳助のエピソードを自分なりにアレンジしたものである、とか言い出すと考える向きもあろうかと思うが、マジの体験談である。






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大野潔
『人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。』(竜馬がゆく) 私の人生の主題は、自分の能力を世に問い、評価してもらって社会に貢献することです。 本noteは自分の考えをより多くの人に知ってもらうために書いています。 少しでも皆様のご参考になれば幸いです。