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マツモトキヨシ
2018年5月27日 14:39
月が失禁して8惑星年が経とうとしていた。 東南東の方角から、夜空を背に伸びあがるようにして姿を現すのが惑星イズモH3の月だ。表面にこごった薄い雲の層が、橙色と灰白色のちょうど中間を示していた。周囲に射す七色のかさが毒々しい。 数少ないイズモの入植者たちの目には、月は異様に大きく見えた。悠々と空を横切る姿はまるで膨れきった金魚だ。月が通った後の夜空には、なすりつけたような雲の跡が残った。