Open Innovation in Silicon Valley

「The SV Start Up 100」が発行している、標題の冊子を読んだので概要を記す。

本紙には、スタートアップと協業する心得や投資家たちからのアドバイス、日本の企業がシリコンバレーのエコシステムに入り込むための心得などが、インタビューなどを通して紹介されていた。

紹介されていた内容で重要度が高いと感じたのは以下の通り。

⑴目的を明確にする

⑵テイクだけでなくギブを

⑶駐在の3年では短すぎる

⑷経験値の高い者を送り込む

⑸バブルの時に来て、弾けたら帰るでは遅すぎる

⑹本社と独立した決裁権を与えること

一つ一つ見ていこう。

〜⑴目的を明確にする〜

なんとなく世界のテクノロジーの中心のシリコンバレーに社員を送りこみ、何か情報を得てこいというふわっとした指令を受けて乗り込んでくる日本人が非常に多く、それでは商談の機会を得たとしても、現地のスタートアップ企業は何が目的なのかよくわからず、投資の機会を得られるはずもなく、そのまま浅い情報だけを持って帰国する事になる。

〜⑵テイクだけでなくギブを〜

シリコンバレーのFinTechスタートアップで、昨年一年間で100社以上の日本の企業から訪問依頼があったそう。彼らは情報を得るだけ得て何もギブすることなくそのまま帰国するのでは、受けたスタートアップは少数精鋭の中わざわざ時間を割いてい流にもかかわらず、ビジネスに繋がらないことから彼らにとって良い時間ではなく、非常に日本のイメージにおいても具合が悪い状況となっている状況。

〜⑶駐在の3年では短すぎる〜

駐在開始の1年目は生活に慣れることで忙しく、2年目でようやく仕事に慣れてきたと思ったら、3年目で帰国。長期的な目線で腰を据えてシリコンバレーのエコシステムに入って行かなくてはならないのに、また後任の人から白紙に戻るようでは、シリコンバレーの地をうまく活用できない。

〜⑷経験値の高い者を送り込む〜

シリコンバレーはスタートアップが盛んで若者の場所であろうと、若く経験があまりない駐在員を送り込むが、正直良い成果を得られるほどシリコンバレーは甘くない。

〜⑸バブルの時に来て、弾けたら帰るでは遅すぎる〜

バブルが弾けてそれでも生き残っているのが本当に強い会社。シリコンバレーに残り続けて、行きのかった会社に投資すべき。

〜⑹本社と独立した決裁権を与えること〜

リソースも決裁権も無い駐在員だと、具体的な情報を得られないことが多い。仮に得られたとして本社に情報を提供したとしても、日本にとってはかなり未来を走っているシリコンバレーの話をしても、現実の物として受け止められず、おざなりになってしまうケースが多い。遅れて日本のテレビで報道されて初めて、流行っているようだから採用仕様では、シリコンバレーではとっくに時代遅れのものとなっている。

以上を踏まえ、実際にシリコンバレーで成功している日本企業が紹介された。

<コマツの例>

ドローンを使った測量や3Dマッピングの技術を持つSkycatchとの事業提携を成功させた。これはコマツのビジョン・目的が明確だったため、出会ってから4ヶ月で事業提携に至ったとのこと。

<Panasonic Ventures>

これまでスピード感欠如を感じていたことから、シリコンバレー現地に投資判断の権限を委任。100億円以内であれば、本社に判断を仰ぐことなく決定を下せるようになったことから、過去最速では2時間で投資したこともあるほど、スピード感を持ってスタートアップと良い信頼関係を築くことができた。

<Hitachi Solution America>

人間関係の構築、日本自身のペインポイントを理解、さらに、"ストーリー"と"数値"で語ることを重視している。また、活動の仕組み化や数値化を徹底することで、案件の紹介数や検討数をモニタリングすることで、進捗を細かく把握している。

<Yamaha Motor Ventures & Laboratory Silicon Valley>

楽器・バイクに次ぐ「第3のヤマハ」を創造するという明確な目的を持って望んでいることが、4年足らずでシリコンバレーで成功した理由である。また、狭いコミュニティであるシリコンバレー村に入り込むために、現地のVCや投資家や起業経験者達を現地雇用している。本社から社長自ら現地へ足を運び、実際にシリコンバレーで起きていることを感じてもらい、決裁は全て本社で行っている。


日本の大企業の1ヶ月がシリコンバレーのスタートアップにとっての1週間と言われるほど、凄まじい勢いで成長しないといけないスタートアップにとっては即時即決は死活問題。また、企業ブランドや株主・顧客を守りながら安全第一で運転していく大企業は9割の成功率でないと実行しないが、スタートアップはリスクを取りながらでも駆け上がるように成長しなくてはならないので、6割の成功率でもチャレンジし、そして失敗から学とのこと。

日本の大企業も、6割の成功率でもバットをフルスイングする勢いで、いろんなものにチャレンジするべきである。と最後を締めくくった。



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